コト消費・モノ消費・トキ消費とは?企業事例を紹介(1/3)

「コト消費」へと主戦場が移った日本市場。さらに最近は、「コト消費」になびかない女性消費者は「トキ消費」へと移り始めている。「所有に興味を示さない」「SNS上では積極的に情報シェアを行うが、購入はしない」「欲しいものがない・わからない」「(新しい商品・サービスを探すのが面倒だから)現状の商品・サービスに不満があるけど買い替えはしない」、そんな今どきの女性消費者に振り向いてもらうために、コト消費、モノ消費、そして新たな消費活動であるトキ消費を理解したい。

「コト消費の基礎知識」

経済産業省のレポートは、コト消費の必要性を以下のように説いている。

わが国では、人口動態の変化による総需要の減少や、社会の情報化・高度化により消費の成熟化が進み、モノやサービスの国内市場はより厳しいものとなってきている。このような市場環境においては、消費者(買手)が支払う対価として、機能的な価値を提供するだけでは十分ではなく、より直接的に顧客が満足感や高揚感を得られる、情緒的な価値を提供することが求められる。(引用:経済産業省「平成27年度 地域経済産業活性化対策調査」)

コト消費とは

コト消費とは、「商品やサービスの購入により得られる“経験”を重視した消費傾向」のことを指し、特別な時間や体験、思い出などに価値があるとする。具体例としては以下の項目。

  • 旅行
  • 習い事や資格取得
  • 趣味
  • 飲食
  • パーティー
  • 快適な空間で過ごす時間
  • エコな活動やボランティア活動
    など

コト消費以前の傾向は「モノ消費」

コト消費に対し、モノ消費とは「モノ(商品)を所有することに価値を見いだす消費傾向」のことを指し、商品・サービスそのものの機能に価値を見い出す。2000年前半ごろから「コト消費」が広まり始め、消費傾向は「モノ消費<コト消費」へと変遷している。

コト消費が広まった背景

なぜ、モノ消費からコト消費へと消費傾向が変化したのか。コト消費が広まった背景は主に以下4つの要素が挙げられる。

  1. 国内市場における消費の成熟化が進んだこと
  2. 消費者が生活に必要なモノをすでに所有している状態になり、モノの価値だけでは選ばれにくい時代になったこと
  3. 幸せや生活の充実を「精神的充足感」に求めるようになったこと
  4. インターネットの普及により価値基準が多様化。特にSNSの普及で体験をシェアすることに価値を見出すようになったこと

モノがまだ少なかった時代は、生活者の暮らしを豊かにするテレビやクーラー、自動車、冷蔵庫、洗濯機、テレビなどは市場に投入すればすぐに売れ、「商品・サービスそのものの機能が価値」と捉えられていた。高度経済成長期~バブル期は「モノ消費」全盛期で、多くのモノを所有することこそ、幸せの象徴・成功の証・頑張ったご褒美と捉えられていた。ブランド品や高級車、宝飾品など高額な物への消費が活発だったバブル期はまさにそれらを象徴している消費傾向が見られ、企業は「機能的価値」さえ提供していれば売れる時代だった。

ところが、モノやサービス、情報などあらゆるものが過剰供給状態にあり、すでに多くのものを持っている今の生活者は、極端な表現をすると「欲しいものが特にない」「欲しいものが分からない」状態。富裕層に関して言えば「お金の使い道がない」という声も聞く。さらには若い層を中心に「断捨離やシンプルライフなど、いかにモノを増やさないか?」に考え方がシフトし始めている。 50~60代以上の中年層は早々と「終活」を開始し、手元にあるモノを次々に処分し、生前整理を行うのが最近のトレンドだ。

モノからコトへのシフトは顕著

ジェイアール東日本企画が実施した以下の調査結果からは、モノからコトへのシフトが顕著に進んでいることが分かる。モノの所有には消極的である一方で、コト消費には高いニーズがある様子がうかがえる。

年齢層別の平均消費性向の推移データ 20~30代は低下幅大

所得に占める消費支出の割合を示す「平均消費性向」の推移データ(消費者庁「若者の消費」)を確認すると、全体が低下傾向にはあるが、特に「25歳未満」「25~29歳」「30~34歳」の低下幅が大きい。

消費意欲の低下が確実に進む中、女性消費者たちに単純な方法でモノを売ることは容易ではない。前述の通り、市場の成熟化や消費行動・価値観の変化が「モノが売れない時代」の要因と言えるが、長引く節約志向も当然大きく影響しており、2019年10月の消費税10%引き上げはさらなる国内消費の冷え込みを招くだろう。そこで有効なのが、コト戦略を基点にしたマーケティング戦略。まだ「コト消費」マーケティングに着手していない企業は、消費税増税も見据えた対策急がれる。

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