女性のヘルスリテラシー向上、解決策は「カードゲーム」 開発企業続々  

カードゲームというアナログな手法で、ヘルスケアを啓発したりヘルスリテラシー向上を図る事例が増えている。「お客さんの健康知識が低くて、商品を訴求しても響かない」「自社商品に興味を持ってもらうにはどうしたらいいのか?」「生活習慣改善を指導しても、行動変容が全く起きない…」「健康経営が社内で浸透しない…」と悩んでいるなら、カードゲームを活用するのも手。最大の利点はやはり、楽しく遊びながら学ぶので自然と健康知識が深まり、健康意識が高まること。健康消費の意欲だって高まる。セミナー、イベント、SNS、テレビCMなどの真っ向勝負で成果が出ないなら、次の一手はカードゲームだ!

自分の症状に気づいてもらう、「人にやさしくなるゲーム」(クラシエ)

漢方薬のクラシエは昨年11月、体調の悩みについてカードゲームを通じて身近な人と話し合うカードゲーム「人にやさしくなるゲーム」を開発、家電量販店や通販サイトのアマゾンなどで販売を開始した。発売から2ヶ月で1,500個の販売を達成し、今年2月には追加生産が決定するなど反響は高い。

【出典】クラシエ

 

【出典】クラシエ

 

これまであまりコミュニケーションの対象とされてこなかった身体の症状や悩みについて考えるきっかけをつくることを目指した。ゲームの流れはこうだ。

  1. プレイヤーは「体調不良の人」の役と「まわりの人」の役とに分かれる
  2. 「体調不良の人」は、「冷え性」「生理痛」「眠れない」など様々な症状が書かれた45種類の「症状カード」の中から1枚を引き、自分以外のプレイヤー全員に見えるように額に当てる(自分自身は症状カードに記載されている言葉は見ないようにする)
  3. 「まわりの人」は、「体調不良の人」が額にあてた「症状カード」を見て、「ゆっくり休んで」「半身浴をすると良いよ」など、気遣いやアドバイスを自分なりに考えて声をかける
  4. 「体調不良の人」は、「まわりの人」からかけられた声をヒントに、額にあてたカードに書かれた症状を当てる

詳細は以下の動画から確認を。ある程度のヘルスリテラシーやコミュニケーションスキルも必要とされるので、小さい子どもには難易度が高いかもしれないが、夫婦、カップル、友人、職場など、大人が真面目に遊ぶ場面で用いるにはもってこい。ちなみにカードゲームの購入者は意外にも男性に多く、特に若い世代に受けているとのこと。これは同社も想定外だったようで、担当者に理由を聞いたところ、「単純に、男性の方がゲームが好きな人が多いことが関係しているのでは」とのこと。クラシエの漢方薬ブランド「漢方セラピー」の購入者は女性に多いが、カードゲームという切り口に訴求をスライドしたことで、それまでとは異なる層とのタッチポイントを創出できた好事例だ。

「夫・父・息子に、もっと自分や家族の健康について考えてほしい」「夫や彼に、女性の健康悩みを知ってほしい・気遣ってほしい」と考えている女性や、「コミュニケーション不足な職場で、もっとお互いに相手の体調を思いやる空気を作りたい」「普段は言いづらい健康悩みを周囲に知ってもらうきっかけになれば」と考える健康経営推進の担当者が手を伸ばしたくなるゲームだ。自分自身や一緒にゲームをする人のヘルスリテラシーを上げるのにぴったり。

 

医師開発の人生の最後を考える「もしバナゲーム」(iACP)

「人生最後はどうありたいか?」普段の生活ではなかなか話すことのない、ちょっと重いトピックを題材にしたカードゲームもある。「もしバナゲーム(一社iACP)」は、自分が余命わずかであることを想定したゲームで、人生最後のあり方や自分の価値観を家族や友人と話し合うことを目的に、在宅・緩和ケアの医師が米国発のカードゲームGOWISH GAMEを元に日本独自のルールで開発した。いわゆる「人生会議」に使えるツールだ。

カードは36枚。重病の時や死の間際に人々が口にする言葉や考えることが書かれている。例えば「家族と一緒に過ごす」「家で最後を迎える」「いい人生だったと思える」「お金の問題を整理しておく」「自分の身体がどうなっていくかを知る」「あらかじめ葬儀の準備をしておく」「家族の負担にならない」「自分が何を望むのか家族と確認をすることで口論を避ける」など。このカードを用いてプレイヤー同士で話を深めることで、自分の死が近づいたときに「どのようにケアをしてほしいのか?」「誰にそばにいてほしいのか?」「自分にとって何が大事か?」を、周囲に知ってもらう。

昨今は医療事件・尊厳死・安楽死といった”死に方”にまつわる報道が増え、また、終活ブーム、高齢多死社会、人生100年時代を背景に、死のあり方や死を迎えるまでの過程、死の迎え方といった、「QOD(Quality of Death)」の概念が広がっている。だが、自分あるいは家族など身近な人が希望する人生の終え方は、縁起が悪いテーマであことから避けられがち。そもそも自分の”死に方”について深く考える人自体、そういない。厚労省がまとめた調査によれば、人生の最後の迎え方について家族と話したことがある人は4割程度平成29年度 人生の最終段階における医療に関する意識調査 結果。QODについて話し合うのは、やはりまだまだ一般的ではない。そんな課題に着目したのがこちらのカードゲーム。

 

健康経営の研修ツールに、「健康経営カード」(SUDACHI)

健康経営のツールとして使えるカードゲームもある。健康経営の研修事業を行う株式会社SUDACHI(富山市)が開発した「健康経営ゲーム」は、会社運営を擬似的に体験しながら、個人の健康状態が会社の業績に与える影響を実感できる体験型のシミュレーションゲーム。

「健康経営ゲーム」のゴールは会社の業績を上げることと、役職ごとに設定された個別のゴールを達成すること。2つのゴールを達成するにはゲームの最初に与えられた「資金」「体力」「精神」を元手にプロジェクトを成功させる必要がある。だが、個人が持つ資源は有限。一人で実現できるプロジェクトは自ずと限られる。それに気づいた時、自然と健康の重要性とコミュニケーションが生まれ、チームとしてのまとまりを獲得していく、というもの。ゲームを通じて学べるのは、「健康経営の知識・意識向上」「健康への投資と仕組み化の必要性」「チームビルディング」。実際に参加したビジネスパーソンからは、こんな声が。

 

・健康経営の取り組みを進めていく中で、「健康」にフォーカスしがちでしたが、従業員が健康な状態でないと、会社の発展につながらないということがよく分かった

・健康に対しての考え方、特に社会的な健康について新しい視点だと思いました。ゲームは健康経営の本質をつかんでいると感じました

・まるで会社の縮図だった。健康について考える、経営とつなげて考える良いチャンスとなった

 

社内で健康経営を掲げてはいるものの、なかなか社内に浸透しない…と課題を感じているなら、カードゲームで遊びながら皆で考えるのが手っ取り早いかもしれない。カードゲームを用いた研修を社内で実践する場合は、カードゲームを開発した同社から講師が派遣される。研修時間は2〜4時間ほど。

 

 

防災や災害時のヘルスケアも(幻冬社)

続いて、防災知識をテーマにしたカードゲーム。防災知識や防災グッズを揃えるといった災害への備えは、必要性を感じていても平時ではなかなか実践できない人も多い。子どもに防災知識を持たせたい(防災教育)と思っていても、子どもが真剣に向き合ってくれずに悩んでいる親もいるだろう。そんな悩みもカードゲームが解決。遊びながら防災に必要な知識を楽しく覚えることができる。

防災カードゲーム シャッフル プラス」で学べるのは、「防災知識」「衛生(感染症対策)」「食事」「インフラ」の4ジャンル。遊び方は次の動画でチェック。

 

SNSでも話題に

本稿で取り上げた事例以外にも、認知症や知的障害のある人がコミュニケーションや社会生活について学べるカードゲーム、子どもが性について学べるカードゲーム、SDGsについて学べるカードゲームなどがあり、実に多分野でカードゲームの活用が進んでいる。いわゆる「ゲーミフィケーション」をカードゲームで実現している事例で、健康行動促進や意識変容といった行動変容の効果は実際に高いようだ。TwitterやYouTubeでユーザーの声をリサーチしたところ、カードゲームを使ったポジティブな感想は多く見られ、健康観や死生観について真面目に考えるきっかけになっている様子。編集部が当初想定していた以上に健康関連のカードゲームは種類豊富で、そしてユーザーの心を掴んでいるようだ。

 

 

 

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