オーガニックの市場規模・意識調査・企業例・マーケティング

「安全」と「自分らしさ」を武器に、新たなライフスタイルのトレンドとして登場したのが「オーガニックライフスタイル」。有機肥料や自然由来の成分で、人体に優しいオーガニック商品が、無理をしない上質で丁寧な暮らし方を提案。ファッション、コスメ、食品と盛り上がるオーガニックライフスタイルの市場・女性たちの消費意識をのぞいてみよう。

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“オーガニックライフスタイル” 拡大

自然を身近に感じることができる、安心で安全な“オーガニック”。それを食品や製品を通して生活のなかに取り入れる“オーガニックライフスタイル”が、健康志向が高まる近年、注目を浴びている。

「オーガニックライフスタイル」とは?

オーガニックとは

オーガニックは「有機の」という意味。農薬や化学肥料を使わず、動物の糞や草木の灰といった有機肥料で生産された農産物を指す。またこのように生産された畜産物や、農産物を用いて無添加で生産された加工食品を「オーガニック食品」と呼ぶ。作る過程において自然由来のものを使用するため、安全性が高く化学的な危害要因が小さいことが特徴。またオーガニックは食品以外でも適用され、最近では肌に優しいオーガニックコットンやオーガニックコスメが注目を集めている。

オーガニックは、より農薬や化成肥料、遺伝子組み換え技術を使用せず、自然に近い状態で生産された有機食品や有機製品を指す。オーガニックだから美味しくて安全だとは言い切れないが、一般的な商品に比べて格段にリスクが低く、食品ならばより自然に近く安心なのも事実といえる。引用:財界新聞「オーガニック市場が拡大 消費者がオーガニック製品を求める理由とは?」

 

オーガニックコットン、オーガニックコスメの詳細な定義は以下。

  • オーガニックコットン
    農薬や化学肥料を用いない有機農業で栽培された木綿を使用。漂白剤やワックスを使わずに織られた布はオーガニックコットンと呼ばれ、アレルギーやアトピーに悩む人々に効果を発揮する
  • オーガニックコスメ(オーガニック化粧品)
    アルコールやシリコンといった化学的な成分はほとんど使用せず、自然由来の成分を中心に配合。肌に対して低刺激なため、皮膚疾患を抱える人や敏感肌の人に支持される。「人間の肌が本来持つ自然治癒力を助長、回復させることに着目したスキンケア用品」をうたっている

オーガニックライフスタイルとは

オーガニック食品や製品に囲まれた生活のことを、“オーガニックライフスタイル”と呼ぶ。いまやオーガニック製品は、食べるものから着るもの、使うものまで衣食住あらゆる要素で登場している。幅広く展開するオーガニック商品によって、毎日に寄り添うものを丁寧に選ぶことができ、自分らしいライフスタイルの確立を手助けしてくれる。ちなみにオーガニック商品=「自然に近い」という理由から、オーガニックなライフスタイルと似た概念で「ナチュラルなライフスタイル」という言葉も使われている。

 

生活者の関心高まる「オーガニック」、理由は?

ネット上の検索ボリュームを見ると、「オーガニック」の関心が年々高まっていることがわかる。オーガニックがこれほど支持される理由は何なのか?

オーガニックライフスタイル

Googleトレンド「オーガニックライフ」

 

マイボイスコム(東京・千代田)が実施した「オーガニック商品に関するアンケート調査」によると、オーガニック商品(例:食品/飲料/化粧品・メイクアップ用品・スキンケア用品/肌着・下着類/タオル類)を利用したことがある人は約4割。特に男性よりも女性に多く、さらに60~70代女性の利用率が高い。その使用理由には「健康によい」がトップにあがり、次いで「環境によい」「品質がよい」「安全」が並ぶ。

  • 【オーガニック商品を利用する理由】
    1位:健康によい(60.2%)
    2位:環境によい(38.0%)
    3位:品質がよい(33.8%)
    4位:安全(28.6%)
    5位:体にやさしいものを利用したい(24.0%)
    6位:化学原料や添加物をできるだけ避けたい(22.6%)
    7位:アレルギーの予防・対策(22.0%)
    出典:マイボイスコム「オーガニック商品に関するアンケート調査」

オーガニックライフスタイルへの関心が高まっている他の理由として、健康志向の高まりや、ナチュラルな生き方を好む人が増えていることが考えられる。例として、2014年には高学歴・高職歴をあえて手放し、ナチュラルで自分らしい生き方を選択する女性のライフスタイルを描いた書籍「ハウスワイフ2.0」が話題になった。SNSの普及やインターネットの発達により情報が氾濫する現代において、そしてライフスタイルが多様化する中、「周囲に流されない、自分らしさ」を実現することが理想的なライフスタイルの一つとなっている。またストレス社会から解放されたいという思いによる「癒されたいニーズ」も存在。自然にも自分の体にも優しいオーガニック商品を取り入れることで、生活に心地よさをもたらしたいという意識がうかがえる。

 

オーガニック食品・化粧品の市場規模

女性からの支持を中心にオーガニック商品の市場規模は拡大している。一般社団法人オーガニックヴィレッジジャパン(OVJ)によると、現在のオーガニック市場の推定規模(2018年発表)は4,117億円。拡大の背景にはオーガニック商品が身近な存在になってきている市場の変化が挙げられる。

オーガニックの一般化

オーガニック商品の市場規模の拡大に貢献しているのが、オーガニック商品の“一般化”。これまで「高品質・高価格」がオーガニックのキーワードだったが、ここ数年の間にオーガニックはスーパーマーケット、ショッピングセンター、ドラッグストアなどへと広がった。オーガニック関連商品は、より人々の生活に密着した場で見かけるようになり、もともと関心のあった潜在的な顧客層へアプローチすることが可能になった。

オーガニック食品の市場拡大

矢野経済研究所が発表した2017年のオーガニック食品の市場規模は、1,785億円。消費税率が引き上げられた2014年をのぞいて、オーガニック食品市場は年率1~2%増と、着実に拡大を続けている。

自然派・オーガニック化粧品の急成長

矢野経済研究所が発表した2017年の自然派・オーガニック化粧品の市場規模は、1,297億円。2018年度予測では1,350億円に達するとみられている。理由として考えられるのが“女性の購入意識の変化”。発色や使いやすさといったその場限りの事情だけでなく、「肌に優しいか?」「環境に優しいか?」といった持続的なメリットや環境保全への意識が、購入基準に取り入れられるようになっている。

 

オーガニックライフスタイルを提案 企業事例

タオルや寝具といった生活の特定のシーンに合わせたオーガニック商品の専門店、オーガニック食品をメインとする飲食店など、生活の質の向上を助けてくれるオーガニック商品専門店も増えている。

IKEUCHI ORGANIC

タオル工場から発展した「IKEUCHI ORGANIC」は、あらゆる布製品の材料をオーガニックで提供するトータルオーガニックライフスタイルカンパニー。安全かつエコロジーなオーガニック製品を展開。材料の調達から最終製品に至るまで全てのデータを公開している。東京・京都・福岡に実店舗をかまえ、愛媛(今治市)の工場内にもストアを併設。またオンラインストアも展開。

  • 《企業コンセプト》
    IKEUCHI ORGANICが掲げる行動指針は3つ。作る人と使う人にボーダーを引かず、提供までの過程を大切にすることで、安全性(身体への影響)と環境性(エコロジーであること)をより高めていく
    ①最大限の安心と最小限の環境負荷
    ②すべての人を感じ、考えながら作る
    ③エコロジーを考えた精密さ
  • 《販売商品の特徴》
    バスタオルからフェイスタオル、ウォッシュタオルとシーンによって使い分けるタオルを幅広く用意。何度洗濯してもくたびれない耐久性と、ソフトで上質なさわり心地が特徴で「吸水性or速乾性」「やわらかいorしっかり」の4つの好みから選ぶことができる。ベビー用品も幅広く展開し、“赤ちゃんが口に含んでも安全”とうたったベビーミトンやベビーソックス、ベビービブなどを提供している

ORGANIC HEART

通販でオーガニック素材の寝具や衣類を提供する「ハート」は、初の実店舗を渋谷の東急ハンズにオープン。 “エコサート”の認証を取得する無添加のオーガニック寝具を購入前に確認したいという要望に応えて、出店に踏み切った。 “エコサート”は、ヨーロッパで規定されているオーガニックの基準を満たしているか検査し認定を行なう国際有機認定機関。ORGANIC HEARTではエコサート認証を得た高品質な寝具を直接確かめることができる。

  • 《企業コンセプト》
    “なによりも「安全・安心」なものをお届けしたい”
  • 《販売商品の特徴》
    日本でも数少ないオーガニックの繊維認定工場であるハートは、第三者オーガニック認証機関によって、化学薬品の付着を毎年検査。“本物のオーガニック製品”を目指し、厳しい基準のもと安全を確保している。「安心で快適な眠り」の提供のため、ふとんや枕、クッションといった寝具を中心に販売

ピッツェリア・トラットリア ナプレ南青山本店

南青山に本店を構える人気ピッツェリア “ナプレ”は、東京ミッドタウンや横浜、池袋にも出店するイタリア料理の人気店で、オーガニックレストラン認証店。オーガニックレストラン第三者認定機関であるリーファースによって「オーガニックレストラン」として認定されている。イタリアから自社輸入する有機小麦粉をはじめ、ワイン、オリーブオイル、モッツァレラチーズ、コーヒーなど選りすぐりのオーガニック食材を取り扱う。

「オーガニック&ナチュラル特集」 〜楽天〜

楽天は高まるオーガニック需要の波をうけ、ナチュラルライフに向けたオーガニック商品をピックアップ。楽天市場で販売中のオーガニック商品を、おすすめや種類別、初心者向けに分けて紹介している。種類別で展開しているジャンルは以下の通り。

  • 【オーガニック商品のジャンル別一覧】
    ・野菜/きのこ
    ・フルーツ/果物
    ・醤油/味噌など調味料
    ・オリーブ/亜麻仁など油
    ・シナモンなどスパイス
    ・米/雑穀
    ・パン/ジャム/シリアル
    ・製菓/製パン材料
    ・スイーツ/お菓子
    ・チョコレート
    ・ドライフルーツ
    ・アーモンドなどナッツ類
    ・お茶/紅茶/ハーブティー
    ・コーヒー
    ・ジュースや野菜/果実飲料
    ・ビオワイン
    ・惣菜/レトルト
    ・タオル
    ・キッズ/ベビー/マタニティ
    ・寝具
    (出典:楽天「オーガニック&ナチュラルライフ特集」)

ヘルスケアレポート(PC用)

 

オーガニックライフスタイルを提案するイベント

【業界向け】オーガニックライフスタイルEXPO

2019年8月にはオーガニックなライフスタイルを応援する「第4回オーガニックライフスタイルEXPO」が開催された。ファッションからコスメ、家具や寝具にいたるまで、生活のあらゆる場面で活用できるオーガニック商品が展開された。

  • 目的
    国内のオーガニックを基本としたライフスタイルビジネスの健全な発展と更なる啓蒙普及
  • 開催概要
    ・一般社団法人オーガニックフォーラムジャパン主催。事前登録は無料
    ・「オーガニック3.0を推進する~持続可能な開発目標SDGsの実現に向けて」をテーマに8/2~8/3の2日間、一般出展ブース、生産者ブース、企画テーマコーナーに分けて展示
  • 出展企業のジャンル
    ジャンルは「味わう・育む・纏う・磨く・癒す・暮らす・守る・生かす・学ぶ・見つける」の10分野。生活のさまざまなシーンに合わせたジャンル展開が行われた

その他のヘルスケア展示会一覧

 

【女性生活者向け】オーガニックライフTOKYO

「見たり聞いたり体験したり知ったりできる新しいライフイベント」をコンセプトに、心と体を豊かにするオーガニックライフスタイルのヒントが詰まった提案型ライフイベント「オーガニックライフTOKYO」。有名講師によるヨガ体験(ヨガライフ)や、購入が寄付につながるエシカルファッションブランドの出店(エシカルライフ)、ワインやクラフトビールの飲料メーカーや(ワインライフ・クラフトビアライフ)インテリアデザインの出展ブース(リビングライフ)が並び、入場者の新しい“○○ライフ”を始めるきっかけを提供している。

 

オーガニックのマーケティング

商品選択の基準は「やさしさ」

“今どき女性”が好むヘルスケア商品の傾向は、ここ1年ほどで急速に進化。商品選択の基準として「地球環境・動物に“やさしい”こと」が、女性たちにとって以前にも増して重点項目になり始めている。「オーガニック」のみを単体で捉えてマーケティングを発想するより、以下に紹介する「ヴィーガン」「エコ」「シンプル」といったキーワードも含めて、総合的にマーケティングを発想するのがポイント。

身近になったオーガニック

もともと一部女性の間では以前から「オーガニック」が支持されていたが、以前の「オーガニック」と言えば、どこか尖った印象。特別感があり、ストイックで、高価格。だが、今はより多くの女性にとって身近な存在となり、ここ数年でオーガニックはスーパーマーケット、ショッピングセンター、ドラッグストアなどへと裾野を広げている。この需要の広がりを受け、オーガニックコスメを選びやすくなるような売り場の新基準も登場している。

ヴィーガンも拡大中

「ヴィーガン」にも同じことが言える。ヴィーガンも同様に一部のみの女性が実践する特別感がある食事スタイルだったが、最近は食のカテゴリーからさらに市場を広げ、ヘアケアやコスメカテゴリーでも「ヴィーガンスタイル」が支持されるようになってきた。女性たちがヴィーガンを取り入れている理由は、SDGsの視点、動物愛護の視点、環境保護の視点、自身の健康のためなど、人によって様々。このようにヴィーガンを取り入れる理由が多様化してきたことも、ヴィーガン市場の拡大につながっていると考えられる。

女性たちのヴィーガンスタイル

エシカル消費意識

エシカル消費意識が他年代よりも高いのは、若年層。例えば彼女たちに支持されているミニコスメが人気なのは、「エコだから」。この世代ならではの選択基準だ。

若年層の「エシカル消費意識」

シンプルライフ

「過剰なもの・華美なものよりも、シンプルなもの。自身の健康のみならず、地球環境にとっても”やさしい”ものをー」こんな女性らしい意識が、ヘルスケア市場で広がり始めている。「捨てる美容」が女性たちに支持されている背景にも、そんな意識変化の影響があるだろう。

以前までは「オーガニック」は独立したポジションをとっていたが、前述の通り、「オーガニック」「ヴィーガン」「SDGs」「エコ」などの概念に垣根がなくなり始めている。これを踏まえてマーケティングを発想すれば、オーガニック市場で、ターゲット女性へのリーチ率を格段に高められる。

 

 

オーガニックは現代の最先端トレンド

「高くて専門的」、そんなイメージがあったオーガニックは今日私たちの身近なところに登場し、いつでも誰もが気軽にトライできるようになった。心にも体にも優しく環境保全の一環ともなるオーガニックライフスタイルは、エシカル消費やSDGsが注目される近年、女性たちのニーズにマッチしたライフスタイル。オーガニック中心のライフスタイルは、今後ますます人気を集めそうだ。

 

 

ユーザー評価の分析でわかった「人気商品の高評価要素」

\20〜90代女性に人気のヘルスケア商品を徹底分析/
レポートのご案内です。女性たちに人気のヘルスケア商品は、なぜ人気なのか?人気商品には、どんな共通項があるのか?2023〜2024年のヒット商品を中心に、今人気を集める話題のヘルスケア商品のユーザー評価を徹底調査・分析し、各商品の人気を支える高評価要素と、その共通項を探りました。

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