病気・健康のセルフチェック ヘルスケア企業による無料の提供事例 

病気や健康に関する「セルフチェックサービス」を提供するヘルスケア企業の事例を集めた。サイト上での項目チェックの他、センシング技術を活用した判定サービスを提供する企業も。セルフチェック機能の提供を通じ、販促、医療機関紹介につなげるマーケティングが拡大している。

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セルフチェックのニーズ高まる背景

自分の健康状態を簡便、迅速に知ることができる「セルフチェック」の利用が広がっている。利便性はもちろん、誰にも相談できないことでも、匿名性を保ちながら病気の可能性や危険度を確認できる点が評価されている。

生活者:セルフメディケーション意識の高まり

なぜ今、生活者のセルフチェックニーズが高まっているのか?一番の理由は「セルフメディケーション意識」の高まり。少しでも不調を感じたらすぐに病院に行くのではなく、まずは自分自身で傷病・症候を判断し医療製品を使用する「セルフメディケーション」では、正しくセルフチェックを行う必要がある。そこで生活者がまず利用するのが、医薬品メーカーを中心とした企業各社が提供するセルフチェックサービスだ。他にも、セルフチェックサービスを利用する生活者が増えている理由は以下が考えられる。

  • 人生100年時代。自分の健康を自ら管理して少しでも長く健康に過ごしたいと考える人が増えていること
  • 健康寿命延伸を掲げる国の取り組みにより、個々が健康管理につとめることに対してインセンティブを付与する動きが国内で活発化。これにより生活者のセルフケア意識が向上していること
  • 「不安に思った時、知りたいと思った時にすぐさま情報を得たい」という”すぐに知りたいニーズ”が高まっていること。スマホの普及で情報にすぐアクセスできる環境が当たり前になっている今、全てにおいて「待つ」ことを苦手とする人は増えている。少しでも不調を感じたら、すぐにその場でセルフチェックできるのは嬉しい
  • 製薬企業を中心に、信頼のおける医師による監修を受けた情報を掲載する企業が増えており、生活者が正しい情報を選別しやすくなってきたこと

企業:セルフチェックをマーケティングに活用

一方で企業は、マーケティングやブランディングの一環でセルフチェックを提供する。医薬品メーカーはセルフチェックの判定後に、その疾患に適した医薬品を紹介、さらには購入サイトも紹介しており、セルフチェックが販売促進の役割を担う。店頭で無料で健康測定できることをPRするドラッグストア、わきがのセルフチェックを提供するクリニックなど、こうした店舗への誘導や医療機関受診の誘導ツールとしてセルフチェックサービスが活用されている。

企業が有益な情報を継続的に発信し続けることでサイト訪問者やファンを増やし、最終的に商品・サービス購入へつなげる「コンテンツマーケティング」が定番のマーケティング手法となる中、セルフチェックサービスはコンテンツマーケティングの中でも、特に有用なコンテンツの一つと言えそうだ。

 

WEB上でセルフチェック

全身の気になる不調・体質・危険度をチェック(大正製薬)

大正製薬が運営する健康情報サイト「大正健康ナビ」は、気になる症状のセルフチェックテストを部位別に提供。「花粉症対策度チェック」「女性の髪の健康度チェック」「膀胱炎危険度チェック」「血液ドロドロ度チェック」「女性ホルモン健康度チェック」「血圧知識度チェック」など、日々の不調や体質、病気の危険度、健康知識を確認できるセルフチェックを揃えている。緊急性が高く深刻な病気や重症度の高い病気というよりは、比較的症状が軽いものや日々の不調を確認できる。多くの人にとって関心がある項目が並ぶので、「やってみようかな」とチェックしてみたくなる。自分や家族の健康レベルを把握しておくのに便利。セルフチェック後は、結果と合わせてドクターのアドバイスも表示される。

全身の気になる不調・体質・危険度をチェック(IMS)

介護の医療法人IMSグループは、がんや脳卒中など深刻な病気や緊急性の高い病気を中心にセルフチェックを提供。自身や家族の異変や不調に「まさか…」と不安を感じた時や、「病院に行く前に、今すぐ危険度を知りたい」という時に頼りになる。ネット上の健康情報に疑いの目が向けられている昨今、医療法人が掲載するチェックテストは安心。ユーザーはセルフチェックをすることで病気の可能性を判定してもらえる。判定内容により受診・検診を勧められ、同グループで受け入れ可能な病院が表示される。

症状から疾患や対処法を提供(武田コンシューマーヘルスケア)

医薬品を中心にヘルスケア製品を製造する武田コンシューマーヘルスケアは、自社サイト内で「症状・疾患ナビ」を提供。「頭痛」「肩こり」など気になる症状を入力すると、原因や対処法の情報が得られる。気になる部位からの選択も可能。症状からセルフチェックもできる。例えば「頭痛」の項では、当てはまる項目にチェックしていくと、症状の重さが表示され受診勧奨のメッセージも表示される。セルフチェックで自分の体調を確認したり、生活習慣を振り返ることができる。

全身持久力や筋力から健康チェック(KAWAI)

音楽教室のほか、体育教室も運営するカワイは「ケンコーチェック」を提供。血圧、血糖値、身長・体重などの数値を入力すると、診断結果が表示される。他、全身持久力や筋力チェックもできる。全身持久力チェックでは、「少しきつい」と感じるスピードで歩き、3分間で歩けた距離と性別、年代を入力することで、生活習慣病予防の目標とする数値に達しているかどうかを確認できる。ユーザーに体力レベルを自覚させることで、未就園児から高齢者まで幅広い層に提供する「ヘルスプロモーション サポートシステム」につなげる。

乳がんのセルフチェック(Canon)

電気機器メーカーのキヤノンのグループ会社、キヤノンメディカルシステムズは「乳がんセルフチェック」の情報を提供。乳房を自分で触ってチェックする具体的な方法をイラスト入りで解説している。乳がんの早期発見の重要性を啓発するピンクリボン活動の一環としてセルフチェックに関する情報とともに、乳がんに関する基礎知識も提供。自社でマンモグラフィの機器を製造しており、マンモグラフィ検査の普及にもつなげている。

統合失調症のセルフチェック(ヤンセンファーマ)

医薬品メーカーのヤンセンファーマは「統合失調症セルフチェック」を提供。当てはまる症状があるかどうかをチェックすることで、統合失調症の可能性が表示され、可能性がある場合は医療機関の受診が勧めるられる。「極度の不安や緊張を感じるようになった」など15項目が並ぶ。居住地域をもとに、相談できる病院の検索も可。

熱中症のセルフチェック(日本気象協会)

気象情報の提供をする日本気象協会は「熱中症セルフチェック」を提供。「現在地」「屋外か屋内か」「気温・湿度」「年代」「活動レベル」を入力すると、発汗量や体温上昇量に基づいた熱中症の危険度が表示される。結果は「A 油断禁物」「B 十分注意」「C 危険」「D かなり危険」のいずれか。場面に応じて水分摂取や休憩などの対策が提案される。合わせて同社では、「熱中症ゼロへ」プロジェクトを展開中。

糖尿病のセルフチェック(サノフィ)

医薬品メーカーのサノフィは「糖尿病見逃しチェック」を提供。糖尿病に関連することで見逃している点がある場合は、糖尿病に関する情報サイトの閲覧が勧められる。情報サイトは、糖尿病の理解に役立つ内容。糖尿病は自覚症状がほとんどないため、運動実態や食習慣などがチェック項目に並ぶ。

子宮内膜症のセルフチェック(持田製薬)

医薬品メーカーの持田製薬は、子宮内膜症のセルフチェックを提供。「月経痛が年々ひどくなってきた」など、1つでも当てはまる項目がある場合は子宮内膜症の可能性があるとして、婦人科の受診が勧められる。子宮内膜症は月経を重ねるごとに進行するため早期受診が重要とされる。他に、痛みの度合いを数値化して記録する「痛みノート」を作成できる機能もある。

デリケートゾーンのセルフチェック(小林製薬)

医薬品メーカーの小林製薬は、デリケートゾーンのかゆみに関連するセルフチェックを提供。膣カンジダの主な症状に当てはまるかどうかを確認できる。膣カンジダの可能性がある場合は医療機関の受診が勧められ、再発治療については市販の医薬品でも治療できることを伝えてくれる。同社は膣カンジダ再発治療薬の「フェミニーナ」を販売。サイト上では、同商品を購入できる通販サイトも紹介している。

かゆみのセルフチェック(KYOUWA KIRIN)

医薬品メーカーの協和発酵キリンは、「かゆみセルフチェック」を提供。かゆみの部位やかゆみの程度の項目に答えていくことで、医師に伝えるべき情報を整理できる仕組みになっている。サイトではより良い治療のためには患者が自ら参画する「患者力」も必要であることを啓発。症状をしっかり伝えたり、薬の種類を知っておいたり、不明点は質問をすることなどの重要性を指摘。セルフチェックは「自らの症状をしっかり医師に伝えるためのツール」として位置付けられている。

ワキガのセルフチェック(城本クリニック)

わきがや多汗症の治療を行ってる城本クリニックでは「わきがのセルフチェック」を提供。「耳垢が湿っている」「家族にわきがの人がいる」「洋服の脇の下の部分が黄ばむ」「自分で臭いと感じる」などのチェック項目がある。当てはまる項目が多い場合は同院へ相談することを勧められる。わきがの基礎知識や手術方法などについても紹介。

 

店舗・施設でセルフチェック

サイト上だけでなく、店舗や施設でもセルフチェックは可能。

店舗で利用できる無料測定器(スギ薬局)

ドラッグストアを展開するスギ薬局は、無料で利用できる測定器を店舗に設置。体組成測定、骨強度測定、脳年齢測定、血管年齢測定、血圧測定などを揃えている。サイトでは測定機能のほか、スギ薬局には薬剤師や登録販売者、ビューティーアドバイザー、管理栄養士などのスペシャリストが健康と美容のサポートをするという特徴を伝え、信頼度を高めている。

健康イベントを機器レンタルで支援(ウエルアップ)

ウエルアップは、施設・店舗・企業向けに健康機器の販売・レンタルや、生活習慣病予防や介護予防などの各種健康イベントの支援を行っている。例えば管理栄養士によるカウンセリング付き健康測定会や体力測定イベントなどをサポートする。過去には都内のスーパーマーケットで血圧・骨健康度、肌年齢測定などを実施。買い物ついでの健康測定会は気軽に参加できる点が評価されている。

 

アプリでセルフチェック

気になる症状をアプリで検索「アイメッド」

気になる症状を入力していくと、AIが可能性のある疾患を診断。ユーザーは適した医療機関の検索もできる。医療機関の掲載数は約16万件。医療機関の予約もアプリ内でできるほか、ユーザーと医療従事者の口コミも掲載している。

医師と患者をつなぐ「Medical Note(メディカルノート)」

アプリで医師に相談ができる。協力医師は1,600人以上。受診すべきかどうか迷った場合の助言も得られる。医師が監修した1,800の疾患情報が掲載されており、病院検索も可能。

スマホのカメラでストレスチェック「COCOLOLO」

カメラに指を当てることでストレスチェックができる。ストレス度合いは8段階で表示。毎日測定していくことで「ストレス予報」も可能になる。ストレスが高かった場合は、音楽を聴くなど適したアドバイスをもらえる。

 

 

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