更年期障害つらいのに、なぜ受診しない?

ホットフラッシュ、めまい、不眠、疲労、肩こり、抑うつー。更年期の女性は実に様々な不調に襲われることから、ここには大きな市場チャンスが眠っているように感じる。だが蓋を開けてみると「悩んではいるものの積極的には対処していない」のが現実であったりもする。更年期の不調を理由にした医療機関での受診率を見てもそれは明白で、症状に悩む女性は多いものの、企業サイドが思っているほどには健康行動が見られない。なぜ?理由を探ってみた。

婦人科系疾患の中で受診率は最低

ヘルスケアカンパニーのロシュ・ダイアグノスティックス(東京・港)が、9つの婦人科系疾患における医療機関の受診有無について調査を行なった。(対象:15〜69歳の女性5,000名)。「不安・疑いをもったことがある疾患」を聞いたところ次の結果となり、「更年期障害」に不安や疑いをもったことがある女性が、全疾患の中で最多となった。

  • 1位:更年期障害(754人)
  • 2位:乳がん(522人)
  • 3位:月経困難症(459人)
  • 4位:子宮頸がん(378人)
  • 5位:骨粗しょう症(335人)
  • 6位:不妊症(300人)
  • 7位:子宮体がん(195人)
  • 8位:卵巣がん(124人)
  • 9位:性感染症(88人)

次に疾患別に医療機関受診の有無を聞き、受診率を割り出した。すると「不安・疑いをもったことがある」が最多であったにも関わらず、「更年期障害」の受診率は最も低かった。

  • 1位:子宮頸がん(73%)
  • 2位:不妊症(72%)
  • 3位:乳がん(70%)
  • 4位:子宮体がん(69%)
  • 5位:性感染症(63%)
  • 6位:月経困難症(61%)
  • 7位:卵巣がん(52%)
  • 8位:骨粗しょう症(45%)
  • 9位:更年期障害(34%)
更年期障害

出典:ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社

「がん」「不妊症」は特に不安が大きいからだろう、受診率は7割を超え、健康行動が起こりやすいことがわかる。一方で受診率が低く半数を切っているのは「骨粗しょう症」と「更年期障害」。前者については、不安はあっても骨密度の低下を自覚しづらいため受診に至りづらいことが理由として考えられる。では「更年期障害」はなぜ?不調を自覚しやすいはずなのに、受診率は3割ほど。こんなにも低い理由はなんなのか?

不調を感じるも、医療機関を受診しない理由

少し前のデータになるが、不調があるのに医療機関を受診しない更年期女性にその理由を聞いた調査結果があるので見てみよう。対象は40〜59歳の3,888名のうち、直近の3年の間に更年期関連の不調を感じたことがある女性(54.7%)。以下は、その女性たちが感じたことがある不調の内容と割合。

更年期女性の悩み

出典:キューライフ

こちらの女性たちに、上記の不調の治療のために医療機関を受診したか聞いたところ、「はい」と回答したのはわずか24.6%で、残りの75.4%は受診していないことがわかった。

なぜ受診しなかったのか?その理由が、以下。「我慢できるから」「そのうち治るから」が飛び抜けて多い結果に。症状があっても「病院に行くほどではない」と考えているのかもしれない。

病院を受診しなかった理由

出典:キューライフ

 

受診しなくても、セルフケアはしている?

医療機関を受診しないなら、せめてセルフケアはしているのだろうか?続いて、非受診者に「受診以外の対処法」を聞いたところ、最多は「特に何も対処はしなかった」で57.5%だった。更年期症状を感じつつも、やり過ごしている女性の方が多いようだ。ちなみにセルフケアで最も人気なのは「サプリの服用」。

更年期対処法

出典:キューライフ

市場形成には、啓発も必要

本稿で紹介した以外の調査結果を見ても、更年期女性の医療機関受診率は低い。さらにセルフケア率についても、思うほどは高くない。更年期に不調を感じる女性が多い事はどの調査を見ても明らかなので、ヘルスケアのニーズは一見すると高いように思えるのだが、不調者が多い割には健康行動が伴っておらず、ここに更年期市場参入の難しさがある。

背景にあるのは、仕事・子育て・家事・親の介護など人生の中でも最も多忙な時期であるためにヘルスケアに時間をかけられないこと、不調が多岐にわたるため対処しきれないこと、更年期障害=重大な病気でないと楽観していること、更年期を過ぎれば楽になると思っていること、これらが大きいと考えられる。あるいは更年期によるメンタル不調により、ヘルスケアへのモチベーションが低下している可能性もある。

だが更年期における健康管理はその後の健康力にも影響する上に、重大な病気が隠れている可能性もあるため、本来は楽観視すべきではない。最近は更年期をオープンに話せる空気が醸成されてきたものの、かと言って、女性たちの更年期に関するリテラシーは高いとは決して言えない。企業や医療者からの適切な情報発信や啓発を通じて、ニーズの掘り起こしをする必要がある。

 


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