ミレニアル世代女子のマーケティング・特徴・消費行動
デジタルネイティブで個人主義。コスパ重視でコト消費を好む。そんなキーワードで表現されるミレニアル世代は、従来の世代とは異なった価値観を有する。他の世代と比べて消費に消極的で結婚も仕事も自分らしさを第一に考える彼女たちは、各所で○○離れを牽引。パラキャリ、非婚化、晩婚化と新しい時代の波を次々と作りだした。今後社会の中枢を担っていくミレニアル世代について、その特徴を紹介。ミレニアル世代のマーケティングヒントを探っていこう。
目次
ミレニアル世代とは?
ミレニアル世代の定義
「ミレニアル世代」はアメリカで生まれた言葉。1,000年を単位とした時代区分を意味する「millennium」からきている。正確には1981年〜1996年に生まれた人(現在の23歳〜38歳)を指し、2000年代に成人や社会人に突入した世代。日本の世代論では「ポスト団塊ジュニア世代」と「さとり世代」があてはまる。なお、ミレニアル世代の定義については1989〜1995年生まれ(現在の24歳〜30歳)という見方もあるが、アメリカのシンクタンクであるピュー研究所は2014年の発表でミレニアル世代を1981年〜1996年に生まれた人と定義している。
日本のミレニアル世代の人口
約1億2,670万人となった日本の総人口に対し、ミレニアル世代の人口は約1,987万人。全人口の15%以上を占めている。
「ジェネレーションY」「ジェネレーションZ」との違い
アメリカの世代論のなかでは、ミレニアル世代のほかにも「ジェネレーションY」「ジェネレーションZ」と呼ばれる世代もいる(Y世代・Z世代とも)。ミレニアル世代と似通った価値観をもちながら、それぞれに特徴的な傾向をもつ。
ジェネレーションY
- 1980年代初頭から1995年前後にかけて生まれた世代
- インターネットの普及やモバイルデバイスの登場などIT革命をリアルタイムで経験している
- バブル崩壊後の経済低迷期「失われた20年」に青年期を過ごし、就職難の「氷河期世代」となった
- ミレニアル世代と同様だが、不安定な社会に生まれ育った経験から個人主義の傾向が強い。しかし親のリストラや自身の就職難と世の理不尽を目の当たりにしてきたため保守的な価値観ももつ
ジェネレーションZ
- 1990年代後半から2000年代にかけて生まれた世代
- IT革命後に生まれたデジタルネイティブ
- デジタルによる悪影響を理解しており、危機管理意識も高い
- 生まれたときからデジタル社会の管理下におかれてきたため、ミレニアル世代(あるいはY世代)よりもデジタルメディアに対する造詣が深い。しかし一方でデジタルメディアが与える悪影響にも敏感で、プライバシーを重視する傾向にある
ミレニアル世代の特徴
デジタルネイティブ世代
ミレニアル世代は小さい頃、あるいは学生時代から携帯やインターネットに慣れ親しんできたデジタルネイティブ世代。SNSでコミュニケーションや情報収集を行い、スマホであらゆるタスクをこなす(情報収集、口コミのチェック、買い物、アプリで勉強、体調管理など)。情報に対して完全に受動的な姿勢をとるだけではなく、能動的に自ら情報を発信する側にもなることが特徴。実際にインターネットの情報を最も重視する傾向があるのはミレニアル世代以降、という調査結果もある。
総務省が発表する「2018年版情報通信白書」からは、ミレニアル世代のデジタル利用に関する特徴が見えてくる。情報リテラシーに優れSNSでの繋がりを好む彼らにとってインターネットが最大の情報源。日常生活に密着したデジタルネイティブらしい利用方法が特徴的だ。
- インターネット利用者は20代が98.7%、30代が97.8%を記録。「ミレニアル世代=インターネット利用者」とも捉えることができる
- ミレニアル世代のインターネット利用端末は「スマートフォン」が圧倒的。20代は94.8%、30代は92.5%と全世代のなかでも9割を越えるのは20代・30代のみ。「パソコン」は7割
- ミレニアル世代がインターネットで利用する機能やサービスは、他の世代に比べて「ソーシャルネットワーキングサービス」の利用率が高い。また20代では「無料通話アプリやボイスチャットの利用」も多く、通信手段としての要素が強いことがわかる
ミレニアル世代の親世代の特徴
ミレニアル世代の親は、幼少期〜大人になる中で高度経済成長とバブル経済を通過している世代で、物質的に豊かになった人たち。主に団塊世代から新人類世代が当てはまる。
団塊世代:1947年〜1951年生まれ
戦争と無縁で生まれた最初の世代。同世代の数が多く、生まれてから競争のなかで生きてきたため競争意識が強い。急速に普及したテレビによって欧米文化に触れ、音楽やファッションといった各方面で若者文化が誕生する。女性のほとんどは専業主婦となり、いまでは当たり前となった「(洗剤などの)詰め替え」の製造を提唱したり、シンプルな暮らしを提案する「無印商品」を支持するなど、家庭内から消費の革新を行っていった。
ポパイ・JJ世代:1952年から1960年生まれ
この世代が若い時に創刊された人気雑誌「ポパイ」「JJ」から命名されたのがポパイ・JJ世代。1950年代までは1割だった大学進学率が4割に上昇し、女性の社会進出が始まる。日清カップヌードルの発売やセブンイレブン1号店の登場など手軽で便利な消費文化も登場。競争社会を生きた団塊世代への反動から「人生はエンジョイするもの」という考え方が強い。
新人類世代:1961年から1970年生まれ
「男女雇用機会均等法」が施行され「女性の社会進出」が本格的に進む。中高生の頃にはすでにウォークマンを手にしており、流行に敏感で消費を楽しむ傾向が強い。バブル期には「ヤングサラリーマン」として消費をリードしていった。
ミレニアル世代の価値観
従来の「男性像」「女性像」から解き放たれたミレニアル世代は、結婚や出産のライフイベントに対する考え方にも多様性が見られる。あえて結婚をしない女性や、結婚しても子供を持たない夫婦、晩産は珍しくなくなった。また人生100年時代が到来し、生き方・働き方も変化。不安定な社会保障だけを拠り所とせず、自力で不安を解消しようとする姿勢が見受けられる。
結婚・出産・育児観
恋愛・結婚を人生のゴールにしておらず、執着していない。恋愛離れの理由は長引く不景気による経済不安や、情報社会によってもたらされた“常につながっている人間関係”への疲弊などさまざま。結婚、出産を経てからも自身のライフスタイルを尊重した生き方を重視する。
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結婚観
かつて独身女性を揶揄する言葉として言われた「独身女性=負け組」という考えはなく、未婚・晩婚も一つの生き方として捉えている。実際に20〜30代の未婚率は男女ともに上昇している。
平均初婚年齢は年々上昇し、晩婚化が進む。ミレニアル世代にとって結婚は「年齢は関係ない」「それぞれのタイミングでするもの」という意識が強い。
出産観
30代後半〜40代で妊娠・出産する高齢出産を視野に入れている女性や、子をあえて持たない選択をする夫婦も増加。平均出産年齢は徐々に上がっており、晩産化は加速している。
30代、40代の夫婦のみ世帯も増え、DEWKS(共働きで子どもを持たない夫婦)の存在は珍しくなくなってきている。
育児観
「家事・育児は夫婦二人で」という考えを持つ。現状は今なお女性側の負担が大きいが、働き方改革やイクメンの浸透で「家事・育児は女性」という性別役割分業の考え方は古いと思っている。(特に女性や20代男女はその傾向が強い)。育児ではスマホやアプリを積極的に活用。おもちゃとして、子守りとして、教育ツールとしてなど、子どもにスマホを触らせている(スマホ育児)ことも少なくない。
生き方・働き方
インターネットやSNSを通じて国内外の大量の情報に触れてきたことも影響し、価値観が多様化。生き方も働き方も変化。ミレニアル世代以下では、ダイバーシティとインクルージョンの浸透が進んでいる。
生き方
結婚・年齢・場所・仕事などにとらわれない自分らしい生き方を目指す。がむしゃらに「がんばる」ことは古い。エフォートレス&シンプルな生き方が好き。
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働き方
生き方の多様化と同時に多様な働き方を理解・受容している(正社員、契約社員、派遣社員、フリーター、フリーランス、ギグワーク、転職、副業、在宅勤務、短時間勤務、育児休暇など)。ワークライフバランスを重視。仕事を人生のすべてにはしたくないと考える。不安視される年金受給や退職金をあてにしていないので、個人年金や資産運用、資格取得、副業をはじめとした、自力で人生100年を生き抜くためのライフプランを描いている。
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ミレニアル世代の消費行動
コスパを重視するミレニアル世代は消費行動も特徴的。日々の生活から冠婚葬祭まで派手な散財は行わず、コストを抑えた消費意識が強い。しかし単純に低価格・低予算を希望しているわけではなく、本質的なこだわりも重視している。「ブランドよりもコスパ」や「ミニマリスト」の流行がその代表的な例といえる。
ネット消費、SNS消費、アプリ消費
リアルではなくネット上での消費に積極的。ネット上での決済に抵抗はなく、キャッシュレス化に対してもミレニアル世代は意欲的。企業が打ち出すテレビCMよりも、リアルで信頼のおけるインフルエンサーの評価や検索情報、口コミ情報を重視する傾向にある。
ブランドよりもコスパ思考
ブランドにはこだわらず、コスパを重視。ブランド服よりもファストファッションで満足、いかに手軽にコスパよくオシャレを楽しむかが大切。
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モノ消費よりもコト消費
モノが充足し、常に欲しいものは簡単に手に入れられる世代。モノ消費よりも体験に価値を感じる。「共有」できて「共感」できるものに消費価値を見出す。
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シェアエリングエコノミーに抵抗なし
上の世代ほどは「モノ」の所有欲はない。自宅も自動車も時計もバッグも洋服も、所有するよりもシェアで十分満足できるのは、コスパ思考による影響と考えられる。「エシカル消費」「SDGs」「エコ」に対する意識が高いことから、「シェアする方が環境にやさしい」と考えるのもこの世代の特徴。
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シンプル&ミニマムに
モノや所有に執着がなく、ミニマム思考のため、冠婚葬祭や贈り物もいたってシンプル。決まりやしきたりに囚われない結婚式や葬儀が増えている。ソーシャルギフトに代表されるように、プレゼントにおいてもお歳暮やお中元よりライトなギフトが人気。シンプルライフを好む傾向が高いのもこの世代の特徴。
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ミレニアル世代に向けたマーケティングの考え方
ミレニアル世代に向けたマーケティング手法は多様にあるが、特に代表的な考え方を3つ紹介。
高額商品<ファストファッション的商品
コスパ重視のミレニアル世代は「安くて、そこそこ良いもの」といった商品やサービスを好んで利用する。消費行動が進んでも、その先にあるのは高額消費への転換ではなく、低価格商品の購入頻度の上昇。あくまでファストファッション的な商品であることがミレニアル世代の購入基準。
「共有」のしやすさ
「共有」には主に「ソーシャルメディア上での共有」と「モノの共有」の2種が挙げられる。ミレニアル世代向けマーケティングでは大切なポイント。前者は例えば「インスタ映え」「シェアに値する面白プロモーション動画」など。後者は前述の通り、自宅や自動車、服などの共有。かつて「別荘」は富裕層の証で一部の人しか持つことができなかったが、今は「別荘シェア」「多拠点住み放題」などにより、若い中間層世代の間で「自宅以外の場所にも家を持つ」スタイルが急速に広まっている。
性差を超えたマーケティング市場の開拓
男らしさ・女らしさを重視しなくなり、性別にかかわらず好きなことに取り組むのがミレニアル世代。日傘男子や釣りガール、ひとり女子キャンプに代表される、性差を超えた市場は数多く開拓されている。かつては女性の占有行動であったスキンケアやネイルケア、メイクは、今や若い世代を中心に男性にも広がり、反対にかつては男性が主体であったスポーツ観戦や公営競技(競馬・競艇・競輪・オートレース)の場に女性ファンが集まり盛り上がっている。従来男のものや女のものとしてマーケティングされてきた市場を見直してみると意外なニーズが見えてくるはず。
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今後の消費を担うミレニアル世代
このように見てくると、消費にも恋愛にも消極的に見えるミレニアル世代に何となくおとなしい印象を持ってしまうが、裏を返せば、どの世代よりも現実的で安定を望む“しっかり世代”。従来のしきたりや考え方に囚われない柔軟性や「自分らしさ」へのこだわりからは、周囲に惑わされないように生きる芯の強さも感じる。デジタルを駆使し新しい消費文化を牽引するミレニアル世代の価値観は、今後も時代の変化に合わせて柔軟に変わっていくはず。
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