介護予防体操の目的・効果・事例(1/2)
長寿社会を迎え、いかに元気な状態で長生きするかが重視される中、健康体操の一つとして「介護予防体操」の取り組みが全国各地で増えている。各教室では介護予防体操のプログラムが組まれ、多くの高齢者が参加する。実際、介護予防体操により認知機能のうち注意力が改善したり、歩行速度改善が見られるなど、取り組み効果が出てきている。
目次
介護予防体操とは?目的・効果・実施場所
介護予防体操の目的
介護予防体操とは高齢者の介護予防を目的に行う体操のことで、要介護状態にならないよう、加齢とともに衰えていく身体機能の維持・向上を図る。介護予防体操は主に以下を目的としている。
- 要介護状態になることをできる限り防ぐ(遅らせる)
- 要介護状態にあってもその悪化をできる限り防ぐ
- 要介護状態の軽減を目指す
- 生活機能(活動レベル)の向上により高齢期のQOLの向上を目指す
介護予防体操の重要性が高まっている背景
介護予防体操が近年多くの場所で行われるようになっている背景には、介護予防の重要性の高まりがある。
背景1.平均寿命と健康寿命の差
日本は平均寿命と健康寿命(※)の差が大きい。平均寿命と健康寿命の差は男性で8.84年、女性で12.35年。介護に頼って生活しなければならない期間が男女ともに10年前後あることになる。長生きしても自立した生活を送れなければ、医療費や介護費の負担増に加え著しいQOL低下を招く。平均寿命と健康寿命の差を縮める必要がある。(※)健康寿命=日常生活に制限を受けず自立して生きられる期間のこと
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背景2.増大する社会保障給付費
65歳以上の要支援者・要介護者は年々増え続けており、特に75歳以上の要支援・要介護認定者の割合が高い。
今後も高齢化が進むと予測される中、介護給付費は2025年には20兆円に達すると試算されており、要支援者・要介護者の増加を食い止め社会保障給付費を抑える施策は急務である。
主に上記2つの背景から、介護予防体操の重要性が近年急速に高まっている。
体操以外にもある介護予防の方法
介護予防の方法は、介護予防体操(運動器の機能向上)を含め以下がある。自立した生活を送るためには、心身両面からのアプローチが必要で、適切な運動や栄養で身体機能を維持するのはもちろんのこと、一人暮らしの高齢者が増える中、心の健康維持も介護予防では重要項目になる。
- 運動器の機能向上
- 栄養改善
- 口腔機能向上
- 閉じこもり予防
- 認知機能低下予防
- うつ予防
※各予防法のマニュアルは、厚生労働省が「介護予防マニュアル(改訂版:平成24年3月)」で公開
介護予防体操の効果
介護予防体操が全国各地で広がる中、介護予防体操により認知機能のうち注意力が改善したり、歩行速度改善が見られるなど、取り組み効果が出てきている。
大阪河﨑リハビリテーション大学
3ヵ月間の認知症予防教室で、ご当地ソングに振り付けをした運動を実施。1回1時間の教室を週1回(全10回)実施したところ、認知機能のうち注意力が改善し、筋量・筋力が向上して歩行速度の改善もみられた。
福島県喜多方市
市が虚弱高齢者に対して行っている体操教室「太極拳ゆったり体操」で、準備運動、座位バージョン、立位バージョン、整理運動(60分コース)を実施したところ、新規要介護認定者が減少し、生活体力、長座位からの立ち上がり時間、10m最大歩行時間などにも改善が見られた。
介護予防体操の実施場所
介護予防体操は、自治体や民間企業が主体となって全国各地の会場で実施されている。具体的には各地域の以下のような場所で開催されている。
- 介護サービス事業所
- 市町村保健センター
- 健康増進センター
- 老人福祉センター
- 介護保険施設
- 公民館
- スポーツジム
- フィットネスジム
など
会場ではボランティアスタッフらが指導にあたるが、本やDVD、動画を見て各自が自宅で実施することも可能。会場と自宅と両方で行うことで、運動効果向上も期待できる。
全国規模のイベントも開催
介護予防体操は全国規模のイベントでも行われている。(公社)日本理学療法士協会による「理学療法の日(7月17日)」は「介護予防・健康増進」がテーマ。7月17日含む前後は「理学療法週間」としてイベントやセミナーが全国で行われ、参加者は、介護予防や健康増進につながる体操を教わったり、体力測定や理学療法体験ができる。2019年は7月14日(日)~7月20日(土)開催。同協会は「介護予防ガイドブック」も発行しており、同ガイドブックでは介護予防の意義や運動方法などを紹介している。以下のInstagram投稿は昨年の理学療法週間に開催されたイベントの様子。
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