2020上半期ベスコス受賞商品の分析でわかった、最新美容トレンド5つの波(3/3)

4.新発想 〜常識を覆し話題創出〜

女性たちを「あっ」と言わせる新発想や、それまでの常識を覆す商品、これまでに市場にはなかった商品は、話題性が高くベストコスメも受賞しやすい。

ブームを起こした過去の代表例といえば、みずみずしさを象徴するツヤ肌を叶えるクッションファンデ、落ちない口紅ティントリップ、多くの女性たちが待ち望んでいたいたシワ改善化粧品など。

大ブームとまではいかないまでも、新発想で女性たちの注目を集めた最近の例なら、パーソナライズ提案してくれるAIメイクもそうだ。これまでにはない新発想・新ジャンルでブームを起こすのはそう簡単なことではないが、あたれば大きい。今期、新発想で「UVケア」の部門で多くのベストコスメ受賞を果たしたのはポーラ。

<スキンケアの常識を覆した受賞商品の事例>

  • B.A ライト セレクター(ポーラ)
    これまでの日焼け止めの常識「太陽光を徹底的に遮断する」を覆し、太陽光の良い光・悪い光を選別できる日焼け止めを開発したのはポーラ。肌に悪い紫外線と近赤外線は遮断しつつ、肌に良い影響をもたらす赤色光は透過させる。太陽光=悪者と思っていた女性たちに与えたインパクトは大。

 

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5.マイクロ・ベストコスメ 〜リアル目線の選定が人気〜

ここまでは、マス系メディアによるベストコスメ受賞商品の特徴を見てきたが、美容トレンドをもう少し細かく掴みたいならマイクロ・ベストコスメもチェックしたい。

ここで言うマイクロ・ベストコスメとは、主要女性誌や@コスメのようなポータルサイトではないが、フォロワー数の多い人気美容系メディア・動画メディアや、インフルエンサーや個人などが発表するベストコスメのこと(以降、マス系メディアによるベストコスメを「マス・ベスコス」、マイクロ系メディアや個人によるベストコスメを「マイクロ・ベスコス」と表記)。

マイクロ・ベスコスはSNS上での発表が多く、インスタグラムやツイッターに画像付きで投稿されている。化粧品は写真映えさせやすいという相性の良さもあり、インスタグラムでの投稿は特に多い。

マス・ベスコスは、ベストコスメの部門を「化粧水」「乳液」「UVケア」など、商品群で創設するのに対し、マイクロ・ベスコスは部門が細かい。例えばニキビケア部門なら、「洗顔」「クレンジング」「パック」と、悩み×シーン別に分類。

「荒れないティント」ランキングというのもある。ティントは落ちないリップとして大ブームとなったが、一方で「塗ると唇が荒れやすい」という課題があり、実際に「ティントを使いたいのに私には合わない」といったネガティブなレビューも多い。「荒れないティント」のベストコスメランキングはそこに着目して創設した部門で、消費者である女性からすると現実味のある商品が並び参考にしやすい。

マイクロ・ベスコスにランクインするのはプチプラ商品が多いのも特徴。マス・ベスコスの選出商品はハイブランドが中心ということもあり、化粧水や美容液1本で10,000〜30,000円代という高価格帯クラスがざらにあるが、マイクロ・ベスコスは数百円〜3,000円程度の程価格帯がメイン。

化粧品に多くのお金をかけられないクラスターの女性(10代・20代の学生、収入・可処分所得が少ない女性、貧困女性、シングルマザーなど)にとっては、生活レベルに適したベストコスメをチェックできる。

「#ベストコスメ」でハッシュタグ検索すると様々なベストコスメを見つけることができる。ベストコスメと一口に言っても、実に切り口はさまざま。自社商品を”見せる”時に、どんな視点にすべきかなど参考になることが多いので、ぜひチェックを。

<マイクロ・ベスコスの発表事例>

  • C CHANNEL
    若い女性を中心に人気を集める動画メディア「シーチャンネル」は、ユーザー、インフルエンサー、編集部が一緒にベストコスメを選定。「整形級二重コスメ部門」「アイドル級小顔見せ部門」「お泊まりメイク部門」など、女性ユーザーの目線に立った独自視点の部門創設はさすが。若年女性のニーズをつかんでおり、参考にしやすい。
  • shabon
    元美容部員が編集長を務める美容メディア。インスタグラム解説1年で40万フォロワーを超え、毎週金曜夜に開催するインスタライブは1回に12万人が視聴する人気ぶり(HPより)。イスタグラムに並ぶ投稿画像を見るとわかる通り、全投稿が「ベストコスメ発表」のような構成。「2020上半期Bestプチプラスキンケア」といった通常のベストコスメ発表の投稿もあるが、ひじの黒ずみケア商品だけを集めた投稿、イエベ向けに絞ったブラウンシャドウを集めた投稿、背中ニキビのケア商品を集めた投稿など、毎回様々な視点で商品をキュレート。画像の作り込みも完成度が高く、商品写真とテキストと背景色の組み合わせで鮮やかな世界観を統一。どれもつい開きたくなる言葉遣いは、美容マーケティングの参考になる。
  • その他
    各美容メディアやインフルエンサーが発信するベストコスメは、ハッシュタグ検索で見つけられる。インスタグラムの「#ベストコスメ」の投稿数は4.6万件。(#ベストコスメ/ツイッター #ベストコスメ/インスタグラム)

以下は女性消費者たちによるベスコス投稿。

影響力低下、マス・ベストコスメ

情報源が限られていたマスメディア全盛期は美容雑誌によるベストコスメ発表の影響が大きかったが、オウンドメディアを持った企業や、インフルエンサーや各個人がSNS で手軽にでベストコスメを発表するようになった今、マス・ベスコスの価値は以前よりもだいぶ落ちている。

雑誌で新製品絶賛「興味がない」49%

マス広告よりもSNSやネット上の口コミを信用するミレニアル世代・Z世代の間では特にその傾向が顕著で、「雑誌などで新製品が絶賛されていても興味がない」女性は49%、という調査結果もあるほどだ。また、マス系メディアがベストコスメ審査員として揃える「美容ジャーナリスト・ライター」の言うことを「あまり信用していない・読み流す程度であまり参考にはしない」女性は53%という調査結果も(粧業新聞)。

20~30代女性のマス・ベスコス離れ

「主要雑誌で受賞しているのはハイブランドが多く、最先端の研究やトレンドを知るには役立っても、実際に使うには現実味がなく参考にならない」という女性の声も多く、特に20〜30代の「マス・ベスコス離れ」は否めない。

今後狙うべきベストコスメ、チャンスの領域は?

マス・ベスコス離れが進んでいるが、ベストコスメそのものへの関心はむしろ年々高まっている。マイクロ・ベスコスの台頭も一因だが、より自分にマッチしたコスメを選びたいニーズが高まっていることも影響していると考えられる。

このような市況変化に、美容系企業はベストコスメをどのように活用していけば良いのか?そのヒントとなる考え方が、本稿で紹介してきた5つの各ポイント。いずれも美容業界の今のトレンドを象徴しており、この流れはこの先1年も続くと予想される。これらを参考に、自社ブランド・自社商品が狙っていきたい領域のベストコスメを事前に考えておくと、受賞を狙える可能性は格段に上がるはずだ。

抜群の信頼力 マス・ベスコス

まずは、マス・ベスコスとマイクロ・ベスコス、どちらを狙うのか?前者の影響力は以前よりも落ちているとは言いつつも、やはり新興メディアと比べるとその信頼力は抜群。

受賞商品を掲載する自社HP内に、ベストコスメ受賞を果たしたマーク(受賞ロゴ)を並べられれば、商品価値・企業価値はぐんと上がる。ハイブランドや新発想を盛り込んだ話題性の高い商品なら、マス・ベスコスを狙いたい。

狙い目、クリーンビューティ

次に考えるべきは、どの領域を狙うのか?既述の「コロナ対応型商品」「クリーンビューティコスメ」「感性価値型商品」、いずれもおすすめだが、信頼力の高いマス・ベスコスでの受賞や、美容感度の高い女性インフルエンサーからの評価を期待するなら、クリーンビューティコスメが一番狙い目。

クリーンビューティの概念は、まもなく女性たちの化粧品選定の基準として標準化していく。今から注力しておいて損はない。すでに自社商品の何かがSDGsの目標達成に貢献できているかもしれないし、ボトル素材など何かを少し見直すだけでもクリーンビューティを実現できるかもしれない。改めてSDGsの理解を深め、クリーンビューティコスメ領域にチャレンジしてはどうだろう。

新興メディアや通販サイトによるマイクロ・ベスコス

マイクロ・ベスコスを狙うなら、インフルエンサー(特に、インスタグラムとYouTubeのインフルエンサー)、フォロワー数の多い美容系メディア・美容系通販サイトが発表するベストコスメでの掲載を目指したい。

ブルーオーシャン領域

最後に、ブルーオーシャンのベストコスメ領域について。今のところ、ベストコスメに選出される商品は若年層を狙ったものが多い。というより、それしかない。ダイバーシティが世界中で浸透する今、ベストコスメの領域にも多様性が取り入れられても良いのでは?

例えば、「60代女性が本当に絶賛したベストコスメ」、「介護美容の現場でリピート利用されているベストコスメ」、「腎機能が低下している女性が重宝するベストコスメ」など。市場は小さいかもしれないが、化粧品市場とベストコスメのコモディティ化を考えれば、これまでは見過ごされてきた様々な市場でベストコスメ受賞を狙うのも一案。もちろんその実現には、各領域でベストコスメを開催してくれるメディアや団体の協力が必要だが。

新しい形のベストコスメは、遅かれ早かれやってくる。今からあらゆる可能性を考えてみると、プロモーションの新しいヒントが見えてくるかもしれない。

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