50代女性のメイク 充実化する情報・サービス

50代女性を対象にした美容商品・美容情報は、以前と比べて格段に豊富になった。その盛り上がりが目立ってきたのはここ最近のこと。若い頃にブランドブームを起こし、消費を積極的に楽しんできた新人類世代・バブル世代が50代に突入したことが大きい。”50代女性の美容”、というジャンルは歴史がまだ浅いため、企業も女性自身も、”50代のメイク”は謎だらけ。一体、50代女性はどんなメイク悩みがあって、そんな女性たちに企業はどう応えらえる?

50代女性の“あるある”メイク悩み

50代女性がメイクで悩むこと

50代女性のメイク悩みには、そもそもどんなものがあるのか?各種調査結果、口コミサイト、質問サイト、SNSなど、ネット上に投稿されている50代女性の美容悩み・メイク悩みをリサーチすると、エイジングサインが顕著になっていることと、加齢によって出現する健康変化がメイクを難しくさせていることがわかった。

<顔全体>

  • 顔全体のたるみが気になる
  • 輪郭がもたつき、顔が大きく見える
  • 不健康な顔色に見える
  • 肌にハリがない
  • 肌が黄色くなってきて、顔全体が暗い印象

<額>

  • 額のシワが深くなった

<目周辺>

  • 目の周辺全体が窪んでいる
  • 目元が全体的にたるんでいる(上瞼と下瞼)
  • 目尻のシワが深くなった
  • 目尻が下がってきた

<眉毛>

  • 眉毛が薄くなった
  • 眉毛が伸びすぎる

<唇・口周辺>

  • 唇が痩せてきた
  • 口角が下がってきた
  • 口周り全体のたるみが気になる
  • ほうれい線が深くなってきた

<メイクに関すること>

  • 以前よりも顕著になっているシミ・シワ・たるみを隠そうとすると厚塗りになる
  • 皮膚のたるみ・シワのせいで、アイライナーを引けない
  • シミ・シワ・たるみが強調されないメイク方法がわからない
  • 老眼で自分の顔がぼやけ、うまくメイクができない
  • 何十年も、メイクも化粧品も変わらない
  • 年齢に合ったメイクがわからない(老けた印象にならないメイクをしたいが、濃いメイクはしたくない)
  • トレンドの変化や加齢を考慮した上で自分に合うコスメの色(ファンデ、リップ、アイシャドウ、リップなど)を知りたいが、わからない
  • 加齢とともにメイクで隠したいエイジングサインが増えるが、全てを綺麗に隠したくても、そんなにメイクに時間をかけられない

50代のメイク方法、各社が情報発信で伝授

女性誌、ウェブメディア、美容系企業、写真館など、50代女性をターゲットにしたメイクのハウツーコンテンツは、多く見つけることができる。いずれも前述の50代女性の美容・メイク悩みを前提に、ちょっとした工夫をメイクテクニックとして取り入れる方法を紹介している。キーワードは「リフトアップして見える」「老け見えしない」「補正」「メイク更新」。

【美ST】40代・50代の美容情報に徹底特化

40代・50代の美容感度が高い女性をターゲットに、美容に特化した情報を発信しているのが、「美魔女コンテスト」の開催でその名が一気に知られることとなった美ST(光文社)。アラフォー、40代、アラフィーの美しい女性を「美魔女」と表現することに違和感を感じる女性は少なくなく、また美容に励む姿に「イタい…」という声も多く上がったが、美STはそれまでの40代・50代女性のイメージを覆した立役者であり、そしてこの世代の美容へのモチベーションを牽引してきた、今や中年齢女性の美容バイブル本。美STは、40代・50代女性の美容情報が最も充実している。

【エクラ】女性誌ならではの充実コンテンツ、アラフィーの老け見え解消

40代後半以上の女性をターゲットにしたファッション誌「エクラ(集英社)」は、50代のメイクテクニックに関するコンテンツを紙媒体やウェブを通して発信している。常に50代女性のニーズを掴み続ける女性誌ならではの充実感。例えば、たるみを消してリフトアップして見えるチークの入れ方や、目周りのエイジングサインをカバーすることで老け見えを解消するテクニックを紹介。実際にどう変わるのか?ウェブエクラに3名の50代女性のビフォー・アフターが掲載されているのでチェックしてみよう。加齢により「小さくなった目」「くぼんだ目」「目尻が下がった」、それぞれの悩みを“補正”することで印象を変えている。

【えがお写真館】話題沸騰、シニア専門写真館の”若見えプロ”が伝授

シニア・シルバー世代に特化した写真館の「えがお写真館」は、自社事業の専門領域を強みに、50代女性に特化したメイクハウツー本(悩みがぶっ飛ぶ 50代からのヘア&メイク術)を発行。

若いころからのままのメイクでは〝老け見え〟するため、50代はメイクの「更新タイミング」と提言。年齢に合った色やテクニックを取り入れることで若い印象をつくるという考えで情報を発信。えがお写真館は、撮影・ヘアメイク・スタイリングのセットで撮影サービスを提供しており、客の好評を得ている。シニア世代専門のヘアメイクアップアーティストの第一人者として、同社所属のヘアメイクアップアーティストの赤坂歩さん(現在は退社)が2018年にテレビや雑誌で紹介されるようになり話題を集めた。

 

【All About】ヘアメイクアーティストの日比朱美氏が伝授

各界の専門家が生活情報を提供するAll About。「若返りメイク術」として、ヘアメイクアーティストの日比朱美さんがたるみを解消するメイクのコツを伝授。たるみを解消するコツは、眉やアイライン、リップラインなどを高めに書くこと。例えばアイブロウは、眉尻が眉頭よりも下にならないように水平を意識する。アイメイクでは、ビューラーで目尻のまつ毛をしっかり上げる。アイシャドウは目尻の下に入れない。アイライナーは〝上昇〟をイメージして引く、など。各箇所に各テクニックを入れ込むことで、全体的な印象を変える。

美容系企業のオウンドメディアで発信

女性誌に比べると情報量は見劣りするが、美容系企業も50代女性に向けたメイク情報を発信している。以下は、コーセーと資生堂のオウンドメディア。

 

50代女性対象のメイクレッスン 〜人気のメイク教室とアラフィーYouTuber〜

【スタジオgoメイクアートスクール】イキイキ過ごせるメイクレッスン(札幌)

メイクスクールの「スタジオgoメイクアートスクール」では、50代以上の女性を対象にしたメイクアップレッスンを開講(マンツーマンレッスンで、1回90分で3万5000円)。骨格分析、パーツバランス分析、印象分析など、理論に基づいた“自分に似合うメイク”をレクチャーする。

【メイクアンリミテッド】50代限定のメイクレッスン(東京/横浜/名古屋/他)

メイクアンリミテッドは、50代限定のメイクレッスンを開講。年齢・肌質に合った化粧品の選び方、シミ・シワ・たるみを補正するメイク方法をレクチャーする。

【You Tuber】アラフィー「YORIKO」さん

美容歴30年のYORIKOさんは、〝アラフィー〟のメイク術をYouTubeで紹介。チャンネル登録者数は2万8900人(2020年5月11日時点)で、再生回数が数十万のコンテンツも多数。

「マイナス10歳を作る朝の簡単メイク」は45万回、「目の下のクマ・たるみ・しわ隠せる?上手なメイク方法」は29万回の再生。低価格帯の〝プチプラ〟ブランドを特定してメイクする動画も人気。中には51歳の親友を実際にメイクアップするコンテンツも。

動画コンテンツなので、ウェブメディアや雑誌の記事で見るよりも、やはり格段に理解しやすく実践しやすい。

50代女性に愛されるメイクブランドに育てるには

50代女性の獲得は難しい

50代女性に自社のメイク化粧品を愛用してもらうには、この年齢特有の悩みを理解し、それをカバーできる商品づくりと訴求がもちろん必要だが、10代20代のように “トレンド!” と言うだけで飛びつく世代では無いので、50代の多くの女性に愛用されるブランドに成長させていくのはそう簡単ではない。例えば次のような理由が、50代女性の獲得を難しくしている要因。

  • 長年愛用しているメイク化粧品があり、ブランドスイッチが起きづらい(メイクを変えたくても、何が合うのか?何の商品が良いかを考えるのが面倒)
  • メイクに対するモチベーションが若い時よりも低下している(仕事、子育て、老後に向けた準備、親の介護、更年期障害などの健康問題など、メイクよりも考えるべきことが多いため、メイクを研究する優先度は低い)
  • 30〜40年のメイク人生で蓄積された感覚と経験からくる、「自分に合う・合わないメイクを一番知っているのは自分」という思考から、新しいメイクやメイク化粧品への関心が薄い
  • 若い時に習得したメイクから抜け出せず、古いメイクがルーティン化している
  • エイジングに悩んでいる箇所もエイジングのスピードも個人差があるので、同世代の女性が「良い」と言っても、また「流行っている」と聞いても、自分ゴト化しづらい
  • 新しいトレンドは若い女性から派生していくので、「トレンドを取り入れる=若作り、私には難しい」という印象があり、なかなか取り入れづらい

こういった理由から、50代女性の間でメイク化粧品のトレンドを起こすのはそう容易ではない。では、前述の背景を踏まえ、50代女性の好むメイクブランドはどういったものがあるのか。

 

50代女性の口コミから、人気コスメブランドをチェック

まず参考になるのが、化粧品の口コミ総合サイト「アットコスメ」の、年代別(1歳区切り)で口コミランキング商品をチェックできる機能。サイトのメインユーザーは20〜30代だが、40代以上の利用者も多く3割を超えている(@コスメサイトデータ資料,2019年6月より)。各メイク化粧品の口コミからは、「50代女性たちがチェックするポイント」が見えてくる。

 

情報収集行動に着目する

50代女性に愛されるメイクブランドに育てるには、商品そのものの開発に注力するだけでなく「情報収集行動」にも目を向けたい。

ポーラ文化研究所が行った「女性の化粧行動・意識に関する実態調査2017」では、15歳〜74歳の女性を対象に「メイク化粧品を買うときに参考にする情報」について聞いている。それによると、15〜49歳では「口コミサイト」と回答する割合が3〜4割だったのに対し、50代以上では全クラスターで2割を切る結果に。一方で、若い世代では割合が低く40代以上で高かったのが、「テレビ番組やテレビCM」「商品の新聞・雑誌広告」「メーカーサイト」。

3年前の調査のため、今実施したら多少違う結果になると思われるが、SNSや口コミサイトを参考にする若い世代とは異なり、マスメディアの影響が大きいことがわかる。ネット広告やSNS広告の台頭で、マス広告がもたらす消費行動への影響力やリーチ率は縮小しているものの、それでもやはり中高年齢の女性に向けて認知を図るならマス広告は今なお有力と考察できる。

以下図は令和元年版「情報通信白書(総務省)」による、年代別のテレビ視聴時間推移。50代、60代は他年代と比較してテレビ視聴時間が長いことが分かる。

 

 

ただ、マス広告施策を行えるのは資金力のある一部の大手企業や一部のブランドに限定されてしまう。マス広告が難しい企業の場合は前述の、ポーラ文化研究所の「女性の化粧行動・意識に関する実態調査2017」を参考にしてみては。50代女性への認知向上のヒントとなるデータが多数掲載されている。ポイントは、50代女性をターゲットにするなら、機能性を打ち出すだけではなく、”50代女性特有の情報収集行動”にも着目すること。情報収集の行動については「【令和元年版】ICTサービスの利用動向(総務省)」が参考になる。

 

自分磨きに〝戻ってきた〟50代

今の50代は、若い頃に自分への投資を楽しんできた世代。その世代の子供が成人する時期を迎え再び自分磨きに時間とお金を割けるようになってきたことも、メイクへの情報ニーズが高まっている理由。

時間的制約や、メイクへのモチベーション低下などがマーケティングの障害になる年代ではあるが、「人生100年時代」ということは、50代女性の残りの人生は50年。今のところは、中高年のニーズは圧倒的に健康寿命延伸のニーズが高いが、残り約半世紀の人生を豊かな気持ちで楽しむために、中年期にいる女性の美容ニーズもこれから徐々に高まっていくはず。

 

 

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