女性の未来を変える! 今注目のヘルスケアベンチャー
ヘルスケアベンチャーの目覚ましい躍進が続く中、女性のヘルスケア領域では、月経・妊娠関連の商品・サービスをローンチするフェムテックベチャーが大きく注目を集め、女性特有の健康問題に商機を見出すプレイヤーが続々と登場。女性のヘルスケアの未来を変えるのはどんな商品・サービス?今注目のヘルスケアベンチャーを、分野別にピックアップ。
目次
女性の健康
世界初、子宮内フローラ検査で不妊治療(Varinos)
Varinos株式会社は「子宮内フローラ検査」を世界で初めて実用化。子宮内の細菌バランスを調べる検査で、不妊治療を目的としている。これまで子宮は無菌だと考えられていたが近年は菌の存在が明らかになり、”子宮内の環境菌”と、妊娠など”女性の健康”の関連が示唆されている。そこに着目したのが同サービスで、不妊治療の他、子宮内膜炎、子宮内膜症、子宮頸がん、子宮体癌、早産の原因になる絨毛羊膜炎などへの応用も期待されている。以下は子宮内フローラと不妊の関係の解説動画。(「ジャパンベンチャーアワード2020」経済産業大臣賞受賞)
痛みなし&触られない、乳がん検診(Lily MedTech)
株式会社Lily MedTechは、乳がん検診率の向上と早期発見を目指し、痛みのない乳房用画像診断装置を開発。乳がんは全がんの中で最も罹患率が高いものの、日本の検診受診率は世界的に見て低い。検診を受けない女性たちの理由の一つが、「痛そうだから」「恥ずかしいから」。
この課題への解決が期待されているのが同装置。ベッドにうつ伏せになり、お湯が入った水槽に片胸を入れるだけなので、圧迫による痛みがない。非接触で直接胸に触れられることもないため、女性の検診に対する心理的ハードルはぐっと下がる。以下は、ジャパンベンチャーアワード受賞者インタビューの動画。(「ジャパンベンチャーアワード2020」中小企業庁長官賞受賞)
育児
低出生体重児への虐待・母親の産後うつ解決に、ベビー服(一社くるむ)
「くるむ」は2,500g未満で生まれた赤ちゃんの体のサイズに合わせたベビー服ブランド(一社くるむ)。立ち上げの背景にあるのは、親による低出生体重児への虐待。低出生体重児で生まれると、赤ちゃんが虐待を受けるリスクは通常時の4〜6倍になるという研究結果に、代表の佐藤里麻さんは「母親と入院中の赤ちゃんとの愛情を育む機会が極端に少ないからでは?」と考えた。低出生体重児は生まれるとすぐに新生児集中治療室に入院するため、母親とのスキンシップは極端に少ないのだ。、
その解決策のカギとしたのが、入院中の赤ちゃんに着せる肌着。入院中でスキンシップができなくても、肌着を着せたり肌着を洗濯するなど、肌着を通じて赤ちゃんを”世話する”ことで、愛情が芽生えやすくなる。”世話の機会創出”という視点から、母親の産後うつや虐待といった社会課題の解決を目指す。(第8回DBJ女性新ビジネスプランコンペティションのファイナリスト)
病児保育に特化したベビーテック(Connected Industries)
「あずかるこちゃん(コネクテッド・インダストリーズ株式会社)」は、保護者と病児保育施設をつなぐサービス。働く女性(母親)と子どもを取り巻く社会課題に着目し、「病児保育のICT化・ネットワーク化」を事業化した。病児保育室に預けたい親は、アプリ内で、子どもに最適な施設を検索・予約できる。アプリは、施設内の様子やスタッフなどを写真で確認したり、預け先の施設とコミュニケーションできる機能も備えている。
怪我や病気で通園・通学できない子どもの預け先を見つけるのは、共働き世帯にとって大きな問題。ユーザー数は今後も着実に伸びそうだ。ヘルスケアビジネスコンテンスト2020(経産省)、ベビーテックアワードジャパン(202DNP大日本印刷)などで、多数受賞。
発達障害をVRで療育(Jolly Good)
「emou(株式会社ジョリーグッド)」は、発達障害支援機関向けのVRを活用したSSTデバイス。SST(ソーシャルスキルトレーニング)とは、発達障害のある人が、日常生活における対人関係やコミュニケーションなどの社会スキルを習得するトレーニングのこと。SSTは人によるトレーニングが一般的だが、支援者側のスキルによってクオリティにばらつきがあり、また支援を受ける側にとっては、支援者との間に”馴れ合い”が生じやすいことから、効果が出づらいという課題があった。
この課題を解決するのがemou(エモウ)。基本的にはデバイスにトレーニングをお任せできるので、属人的にならず、クオリティの均質化のみならず人材不足にも対応できる。VRに組み込まれたプログラムは100以上あり、様々な場面を想定したトレーニングができるのもVRならでは。「これまでの(人による)SSTにはない場面のリアリティさ」を評価する声は98%にも上るという。
親にとっては子どもにクオリティの高いSSTを受けさせることができるのが魅力だが、子ども自身にとっても、ゲーミフィケーション要素満載のVRは大きな魅力。VRへの単純な興味から自発的にトレーニングに参加するため、継続の面でも有用だ。(「ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテスト2020」ビジネスコンテスト部門優秀賞)
介護予防
家族の誤嚥予防に、飲み込む力をトレーニング(リハートテック)
高齢者の誤嚥予防を目的にしたリハビリグッズ「タン練くん(株式会社リハートテック)」は、お茶などの飲料をボトルに入れてコップがわりに使うドリンクボトル。嚥下機能が低下すると誤嚥性肺炎を招く可能性があることから、嚥下トレーニングは高齢者や被介護者に必須だ。タン練くんを使えば、日常生活の”飲む”という行動の中で自然とトレーニングできるので、面倒臭がり屋でも続けられる。
だが購入者レビューには「哺乳瓶の形に抵抗を感じる」というネガティブな声も。「ドリンクを飲みながら嚥下トレーニング」という発想に興味を持つ人は多いだろうが、一方で、ボトルの形状を見て「使いたくない」と拒絶する高齢者・被介護者もいれば、「使わせるのに抵抗がある」という家族・介護者もいるだろう。
高齢者の中には、若年世代から赤ちゃんや子どものような扱いをされることを嫌がる人も多くいる。例えば、いろんな人と時間を共にする施設や家族がそばにいる自宅で、はたして、この哺乳瓶のようなボトルをくわえる高齢者はどれだけいるのか?ーいささか疑問であるが、商品を通じて自然な健康行動に繋げている点は画期的。ネーミングも覚えやすく印象に残る。ボトルの形状さえ改良されれば、人気が出そう。(「ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテスト2020」ビジネスコンテスト部門優秀賞)
衛生・感染対策
水道いらず、どこにでも設置可の手洗いスタンド(WOTA)
「WOSH」はどこにでも設置できる手洗いスタンド(WOTA株式会社)。水道への接続を必要としないので場所を選ばず、ただ”置くだけ”で水を使えるようになる。
例えば、カフェ、レストラン、アパレル店舗、ネイルサロン、オフィスなど、人が出入りする場所に置くことで、来店者に手洗いを促すことができる。サービス提供側の「お客様に安心して入店してほしい」、消費者側の「いろんな人が触っている商品を自分も触るのは抵抗がある…」の両方のニーズを解決する。
調査によると店頭でのコロナ感染対策において、「アルコール消毒よりも手洗いが良い」と回答した人は男性よりも女性に多く、7割以上に上る。アルコール消毒で手荒れに悩む女性は多く、また、アルコールの匂いや、子どもの手に頻繁に消毒液を吹きかけることに抵抗を感じる母親もいる。そんな手洗い派のニーズも取り込む。
新型コロナの影響で、人々の衛生意識は一気に高まった。手洗いニーズの向上で、WOTAが活躍する場所も増えそうだ。どんなシーンで活用されるのか、以下動画で確認できる。(「異能ジェネレーションアワード分野賞」新時代(ニューノーマル)につながる分野受賞)。
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