フェムテックブームも後押しに 「月経カップ」は国内で市民権得る?(3/3)

女性ユーザーの評価、月経カップのメリット&不満

メリット

月経カップを実際に利用している女性は、どんな点をメリットと感じ評価しているのか?ベビーカレンダー が調査している。エコである点や快適性を評価する声が多い。

  1. 洗って何度も使える(61%)
  2. 蒸れやかぶれがない(52%)
  3. 長時間使用できる(47%)
  4. 臭いが気にならない(29%)
  5. 荷物が減る(29%)
  6. 経血の状態が分かる(20%)
  7. その他(14%)

不満

続いて月経カップの不満ポイント。使用後の不便を感じる声が多い。

  1. 手が汚れる(57%)
  2. 漏れが心配(52%)
  3. 挿入が難しい(49%)
  4. お手入れが面倒(39%)
  5. 替える場所が限られる(31%)
  6. 価格が高い(17%)
  7. その他(10%)

月経カップの国内市場は伸長する?3つの懸念点

国内でも月経カップへの関心がいよいよ高まり、主要女性誌などのメディアも特にこの1年で積極的に取り上げているが、この先はどうなっていくのか?調査結果を見ていると、認知率の上昇に比例して使用率が高まるとは言い切れない気配がある。市場拡大にあたり障壁となりそうな懸念点を、女性消費者の目線から考えてみよう。

懸念点1:挿入型の生理用品、そもそも日本女性は使う?

1つ目の懸念点は、「そもそも、国内の月経カップ受容度は高いのか?」問題。日本女性は圧倒的にナプキン派が多い。既述の市場規模からも見てわかる通り、ナプキン市場は601億円に対しタンポンは58億円で、その差は歴然。マイナビウーマンの調査からも、圧倒的にナプキン派が多いことがわかる。

  1. ナプキン派(90.9%)
  2. ナプキンとタンポンの併用派(5.6%)
  3. タンポン派(3.5%)

タンポンを使わない理由は「挿入に抵抗がある」「(交換時に)自分の手が汚れる」「漏れが心配」など。こういった理由を背景に、日本では挿入型の生理用品の方が受容度は低い。

一方で欧米ではタンポン派が主流。月経カップが女性たちの間で浸透しているのは、もとから挿入型であるタンポンが主流であることが関係しているのかもしれない。挿入に対する抵抗がなく、手が汚れることや漏れの心配にも慣れているため、月経カップもすんなり受け入れられたのだろう。

と考えると、タンポン同様に挿入型である月経カップも日本では受容度がそこまで高くない可能性がある。また、月経カップ使用経験者からは「挿入が難しい」「外せない」「痛い」「取り外しには慣れが必要」などのネガティブな声も上がっているので、未経験者はさらに尻込みしてしまう。月経カップの受容度を上げるには、挿入型生理用品に対する抵抗を払拭する必要がある。

懸念点2:月経カップを外せる場所がない

ふたつ目の懸念点は「挿入した月経カップを取り外せる場所が限られる」問題。月経カップを取り外して再度挿入するだけの環境が、自宅以外ではそうない。

取り外す時に手が血まみれになる上に、再挿入する時は、カップに溜まった経血を流してからカップを洗わなくてはいけない。自宅なら洗面所で洗えるが、外出先では手洗キャビネットを備えるトイレが少ないので、カップの洗浄ができない。実際に「自宅にいる時だけ使っている」という声は多い。

月経カップ販売店は「外出先で水場がない場合は、経血を便器に流した後ティッシュでカップを拭いて」「あるいは、ペットボトルに水を入れて持ち歩いて」とアドバイスしているが、どうだろう。現実的ではない。ティッシュで拭いてもティッシュのカスがカップに残る心配があるし、手の汚れも気になる。ユーザーからは「手もカップも水でちゃんと洗い流してからまた挿入したい」という声が。

ユーザーが「外出先でも安心して使える」という確信ができる方法を提示できれば、外出先での使用ニーズはかなり高まりそうだ。

懸念点3:安全性

月経カップの挿入を不安に感じる女性は多い。例えば「月経カップは安全なのか?」「痛くないのか?」「奥まで入ってしまい、取れなくならないのか?」などだ。トキシックショック症候群(TSS)を心配する声も聞かれる。

TSSはタンポンの使用をきっかけに発症することがあり、それにより脚を切断した、あるいは死亡したという衝撃的なニュースは記憶に新しい。月経カップはタンポンと同じ挿入型であるため、「挿入型生理用品=TSS発症」という連想をしてしまうのは無理もない。月経カップメーカーのスクーンカップによると、月経カップの使用によるTSS発症の報告はこれまでにはないとのことだが、それだけでは不安を払拭できないユーザーもいるだろう。メーカーも販売店も、安全性に関する適切な対応が求められる。

その他、女性たちは月経カップに対しどのような疑問や不安を抱いているのか?「よくある質問(スクーンカップ)」で閲覧できる。

月経カップ、吸収ショーツ、どちらが優勢?

月経周りを事業ドメインにするベンチャーの起業が増えていることや、SDGsや女性のエンパワーメント推進で「生理をタブー視しない」動きが世界的に起きていることは、間違いなく国内の月経カップ市場拡大に大きく寄与するはず。

リピートユーザーは「快適!」「もうナプキン・タンポンには戻れない」と快適性を高く評価し、経済的でエコなプロダクトである点も、女性の消費行動と親和性が高い。これからを期待できる新市場だ。

だが本項で見たきたように、クリアすべき課題はまだ多い。これらの払拭が進まない場合は、第4の生理用品である吸収ショーツの方が先行して浸透するかもしれない。すでに現時点で、経験有無について吸収ショーツが月経カップを上回っているという調査結果もある。

カラフルなバリエーションに、見たことのない新しいデザイン。視覚的に女性の目を引く月経カップのインパクトは大きいが、さて、どちらが優勢か?今後の動向を引き続き観察していきたい。

 

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