死亡や脚切断のリスクあるタンポン 女性が知らない「トキシックショック症候群」
命を落としたり脚切断といった事例が世界各国で報告されているにも関わらず、いまだ女性たちにほとんど知られていないトキシックショック症候群。
トキシックショック症候群とは
トキシックショック症候群(TSS)とは、非常に短い時間で重篤な病態を引き起こす敗血症の一種のこと。(社)日本衛星材料工業連合会はTSS について次のように解説する。
TSSは大変まれですが、誰でも羅患する可能性があり、重篤な病態を引き起こしかねない病気です。(中略)
男性、女性や子どもを問わず誰でも短い時間で重篤な病態となる可能性がある病気です。(中略)
TSSは、ほとんどの医師が治療をする機会がないくらい非常にまれな病気です。イギリスでは、毎年約40人の症例が発生しています。極めてまれですが、TSSは命にかかわる場合があり、患者数が少ないながら、不幸にも年間2、3人がTSSにより死亡しています(略)(引用:(社)日本衛星材料工業連合会「TSS(トキシックショック症候群)について」)
TSSの症状は重症のインフルエンザに酷似しており、以下が現れるという。
- 急な発熱
- 吐き気
- 日焼けのような発疹
- 失神または失神に近い症状
- 筋肉痛
- めまい
- 意識の混濁
- 下痢
(出典:(社)日本衛星材料工業連合会)
TSSを発症する人の半数はタンポンを使用している女性で、実際に、タンポンの使用により死亡したり脚を切断するというショッキングなニュースが国内でも報じられている。
タンポン使用で死亡・脚切断
修学旅行中に死亡
BuzzFeedNewsによると、10代の女性が修学旅行中にタンポンの長時間使用によって死亡したという(2018年7月14日掲載記事)。死亡した女性の姉は、次のようにFacebookに投稿している。
妹は就寝前に下腹部の痛みを訴えていました。そして目覚めませんでした。あんなに健康だった妹が、あんなにかわいい妹が、このために死んでしまったのです。なので、この投稿をシェアしてください。知ってもらって、タンポンを使うときは気をつけてください。このことについてはあまり教育もされていなく、もっと光を当てられる必要があります。(引用:BuzzFeedNews「10代女性、修学旅行中にタンポンの長時間使用が原因で死亡」)
モデル女性、右脚切断 数年後に左脚も
モデルのローレン・ワッサーさんは、2012年にTSSによって右脚を切断。ローレンさんもタンポンを使用したことが原因だった。そして2018年には左脚も切断した様子がInstagramに投稿された。
いまだ知られていないトキシックショック症候群
症例数が少ないこともあってか、TSSが大々的に報じられることはなく、日本でもまだ広く知られていない。多くの女性が利用するアメーバブログ内で「トキシックショック症候群」で検索してみたが、ヒットする記事はわずか13件(2020年6月1日現在。会員数6500万人のうち女性ユーザーは61%,2020年1~3月媒体資料より)。
Twitterを見てみると、次のような投稿があった。
トキシック症候群ってなんだろうって調べちゃった。
こわー。
月経カップは使ってるけど1日一回は消毒してるけどどうなんだろう。
でも鼻の手術でも起きるとかだいぶ稀な病気らしいけど。こわーhttps://t.co/W3hqUFkpuF— まんだ🍎林檎 (@mandaring) January 23, 2020
タンポンの長時間使用でそんなことになるなんて知るわけないじゃんって感じだよね。そもそもタンポンがあまり主流でないというのもあるけど、保健体育の教科書にも書かれてないしトキシック症候群なんて名前自体ツイッターで初めて知ったわ。
— 微笑みよる子 (@Yoru_stern) July 7, 2018
タンポンを含め生理用品を販売するユニ・チャームは、現在サイト上でTSSについて解説をしているが、同社商品の知名度の高さから考えると、TSSは随分と知名度が低い。症例数は少ないが、生理用品を扱う企業はタンポンのリスクや安全な使い方についてしっかり周知する必要がある。
近年日本でも知られるようになった月経カップについても、TSSのリスクが指摘されており、ある女性は次のようにTwitterに投稿している。
国内で販売されているメジャーな月経カップメーカーのサイトを見る限り、それぞれ最長何時間まで装着できるか明記されていた。なぜ装着時間が定めれているかの理由とトキシック症候群の説明もあった方がいいかもね…
— ねこぱん (@catandloaf) January 22, 2020
脚を失ったローレンさんは、次のように述べている。
タンポンを製造する会社は、自らが女性であることさえもイヤだ、と思わせる立場にありましたし、それについての議論も不快で恥ずかしい、と女性がかんじてしまうマーケティングをしてきました。開け放つ必要があるのは、この扉です。私たちがそれをできたことは誇りだし、嬉しいことです。
(略)
問題意識を高めるための努力を続けていきたいです。近々、キャロリン・マロニー議員とともにワシントンへ行く予定です。彼女の、生理衛生用品の健康効果を研究するための法案は、議会で9回否決されてきたけど、今回の盛り上が功を奏せば、変化を起こすことは可能ですし、世の中も見て見ぬ振りはできないでしょう。この問題がいつまでも未解決でいいワケがないし、私たち女性には、女性として権利がありますから。(引用:VICE「タンポンで膝下を失ったモデル ローレン・ワッサー インタビュー」)
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