女性の環境配慮(SDGs)意識と消費の関係 〜最新データからわかった、マーケに使えるファインディングス〜
【6月は環境月間!】
SDGsの目標達成年(2030年)まで10年を切り、官民ともに環境配慮への取り組みが活発化している。環境配慮型商品への切り替えや新規開発、SDGsをテーマにしたイベント、クリーンビューティをコンセプトに掲げた店舗設計、環境配慮に関するテレビ番組や雑誌の特集など、消費者との様々なタッチポイントで、環境配慮関連のモノ・コトが数多く登場するようになった。とは言え、環境配慮意識はまだまだ企業側の想いの方が強く、片想い状態。企業が思うほどまでは、消費者にとって大きな”魅力”になっていない。環境配慮やSDGsがこれだけ話題になってきたが、実際のところ、消費者の意識はどの程度?最新データを参考に、女性マーケティングに活用できるファインディングスをまとめた。
目次
環境意識・行動者率は高いも、男性より厳しい消費目線
プラスチックごみ問題、生物多様性、動物愛護をテーマに内閣府が実施した世論調査「環境問題に関する世論調査(2019.10,18歳以上の男女1,667人)」で、環境問題に対する関心は女性の方が高く、環境配慮のための具体的な取り組み(※1)を実施しているのも、男性より女性に多いことがわかった。(※1)例:マイバッグ・マイボトルを持ち歩く、など
環境配慮意識と消費の連動についても興味深いファインディングスが。「生産や流通で使用するエネルギーを抑えるため、地元で採れた旬の食材を味わう」「エコラベルなどが付いた環境に優しい商品を選んで買う」など、環境を配慮した消費行動は女性に多く見られることが明らかに。だが、環境配慮を目的とした代替製品を購入する際の条件を聞いたところ、「価格・品質ともに、“こだわらず”に代替製品を購入する」と回答したのは男性に多い一方で、「従来品と比べて、品質も価格も“同等であれば”購入する」と回答したのは女性に多かった。
環境配慮の意識・行動者率は女性の方が高いものの、「環境に良ければ何でもOK!」と寛大なわけではないようだ。環境配慮型商品であっても、通常の買い物同様に品質・価格には厳しい目を向けていることがわかった。
同調査結果では、質問項目別に男女それぞれのデータを掲載している。ぜひ、男女差の視点で見てみては?女性特有の環境配慮意識や消費意識・消費基準が見えてくる。
環境配慮関連の専門用語は「知らない」
地球温暖化、気候変動影響、気候変動適応をテーマに内閣府が実施した「気候変動に関する世論調査(2021.3,18歳以上の男女1,767人)」においても、環境配慮のための取り組み(※2)は女性に多く見られることがわかった。だがおもしろいのは、環境配慮に関連した言葉の認知度は女性の方が低いこと。「パリ協定」「脱炭素社会」「気候変動適応」それぞれの言葉について知っているか聞いたところ、「知らない」と回答する人の割合は男性より女性の方が高かった。(※2)例:「軽装や重ね着などにより、冷暖房の設定温度を適切に管理」「こまめな消灯などによる電気消費量の削減」など
女性は環境配慮の行動者率は高いものの、行動と専門用語が明確に結びついていない、あるいは知識・理解が十分ではない様子がうかがえる。
同様の傾向は他調査でも明らかになっており、電通が10〜70代の男女を対象に行った「SDGsに関する生活者調査(2021.4)」によると、SDGsの認知率は男性全体で60.9%に対し、女性全体は47.6%で女性の方が低いことがわかった。男女ともに昨年よりも認知率は上がっているものの(2020年実施:男性36.6%、女性21,7%)、昨年に続き女性の方が言葉の理解・浸透は遅れている。
ビジネスパーソンの間では当たり前に使われている専門用語も、一般にはまだ広く浸透していない。環境配慮型商品・サービスを女性たちに向けて販売するなら、今はまだ専門用語は多用せず、噛み砕いた表現を用いたり、環境配慮に関する”学び”もセットにして提供するのが良いだろう。
SDGs商品・サービスの利用意向ランキング
電通が実施した「SDGsに関する生活者調査(2021.4)」では、SDGsに関する商品・サービスの今後の利用意向についても聞いている。それによると、半数以上の人が「意向あり」と回答した項目は「レジ袋を使わずに済むよう持参する買い物袋等(64.5%,男女計)」のみで、それ以外は4割を切っていることが明らかに。SDGsの言葉そのものの認知率は年々高まっているものの、現時点ではまだ、商品・サービス利用の決め手にはなっていないようだ。
このランキングを見ると、「SDGsに取り組んでも売り上げに貢献しないのでは?」と懐疑的になってしまうが、企業イメージの側面ではプラスの効果はかなりあるようだ。「SDGs 活動を知るとその企業のイメージが良くなる」と回答した人の割合は全年代で半数を超え、5〜9割。ちなみに全年代において男性より女性の方が高い結果に。SDGsの取り組みは女性の方がより受けが良いことが判明した。女性向けの商品・サービスならなおさら、SDGsの取り組みは強化・PRしていくのが良さそうだ。
環境配慮・SDGs意識でセグメント
環境配慮の潮流で今後クラスターサイズが大きくなると予想されているのが、環境配慮やSDGsの意識が高い層。どのようなクラスターがあり、また、どのような特徴があるのか?2社が参考になるクラスター開発をしているので見てみよう。
サステナブルな美容5クラスター(博報堂)
一つは博報堂によるセグメント。定量調査をベースに、化粧品などの美容購買時の環境意識・社会意識を分析し、女性生活者を以下5つのクラスターに分類。クラスターごとに購買行動・価値観・社会意識の特徴などを明らかにした。
アース&カルチャー派
環境・社会に優しいことは当たり前。ハイリテラシー、ハイセンスで、サステナブルが生活の一部である情報高感度層。
安心ネイチャー派
自らを大切にすることが社会を守ることにもつながる。心地よさや成分の安全性を重視する品質重視層。
シンプル&ミニマム派 ~追っかけサステナショッパー~
シンプルに必要最低限に社会に貢献。周りで流行っているものに関心を持つフォロワー層。
エコ&スマート派 ~合理的サステナショッパー~
自らの生活にも社会にも無駄なく。節約や低価格に関心があり、詰め替えも使いこなす価格重視層。
メリハリ自己表現派 ~自分をアゲるサステナショッパー~
社会に貢献することはおしゃれである。エコは当たり前、自らの価値向上にサステナブルを取り入れる自己表現層。
地球温暖化関心層8クラスター(メンバーズ)
デジタルマーケティング支援の株式会社メンバーズ(東京・中央)が開発したのは、地球温暖化に関心のあるクラスターで以下8つ。ターゲット層の価値観や消費行動を従来の一般的な属性のみから捉えるのではなく、SDGsや環境配慮に関するニーズや意識・行動などに基づくセグメンテーションが必要だと提唱している。
「環境配慮が消費基準」はまだ先、今必要なこと
環境配慮やSDGsに関する認知・意識・行動については、本稿で紹介した以外にも各社が調査を実施しているが、いずれも、認知・意識は高まっているものの明確な消費基準にはなっておらず、「企業イメージが良い」など企業に対する評価基準程度にとどまっている。売り上げへの貢献に繋がるまでは、市場全体の商品・サービスの充実化、様々な価格帯での提供、品質・利便性の向上などに加え、環境配慮に関する消費者のリテラシー向上やそれに向けた啓発が必要だろう。
その重要性を理解できる調査結果があるので、最後に紹介したい。以下の調査結果は「脱炭素社会」に限定した質問で、回答を見ると、環境配慮の行動に消極的な女性たちの「環境配慮に無関心な理由」がわかる。
「脱炭素社会の実現に向け、二酸化炭素などの排出を減らす取り組みについて、『あまり取り組みたくない』『全く取り組みたくない』」と回答した人を対象に、取り組みたくない理由を聞いたところ、女性の回答でトップ5は以下だった(気候変動に関する世論調査,2021.1)。
- 1位:地球温暖化への対策としてどれだけ効果があるのかわからないから(44.8%)
- 2位:どのような基準で選択し、どのように取り組めばよいか情報が不足しているから(43.1%)
- 3位:日常生活の中で常に意識して行動するのが難しいから(36.2%)
- 4位:経済的なコストが掛かるから(22.4%)
- 5位:手間が掛かるから(15.5%)
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