熱中症の予防対策が引き起こす、高齢者の健康不安 60〜90代が気掛かりなこと

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熱中症の予防対策が、実は健康不安を引き起こしているーー。日本気象協会が実施した調査でわかった。年々厳しくなる猛暑の対策ニーズに加え、政府が「2030年までに熱中症による死亡者数半減」を目標に掲げたことで、熱中症対策市場では各社の新規参入や製品開発の活発化が予想される。同時に需要が高まりそうなのは、熱中症対策により生じる困りごとや健康悩みを解決する製品・サービス。特に高齢者のニーズが強そうだ。

調査概要

日本気象協会(東京・豊島)が、60代以上の106人を対象に熱中症に関する意識調査を実施した(2023年5月)。熱中症のハイリスク群である高齢者の、熱中症対策の実態と課題を明らかにすることが目的。

 

10年前よりも熱中症に気をつけている、9割

「10年前よりも熱中症に気をつけるようになっているか?」と聞いたところ、全体で89.6%が「気をつけるようになった」と回答した。特に意識が高まったのは60代で94.4%。いずれの年代も「以前よりも全く気を付けなくなった」の回答は0%だった。熱中症対策の意識の高まりや対策ニーズが強くなっている様子がうかがえる。

【出典】日本気象協会

 

熱中症に気をつけるのはどんな時?

続いて「どのようなときに熱中症に気をつけているか?」と聞いたところ、全年代で1位は「天気予報で『真夏日』『猛暑日』と知らせているとき」、2位は「晴天の中で外出するとき」。年代別で見ると、60代は「スポーツなど運動をするとき」「アウトドアやレジャーに出かけるとき」「野外イベントやスポーツを観戦するとき」が上位で、屋外での活動時に気をつける人が多い。80代・90代は「寝るとき」に気をつける人が多く57.7%だった。

全年代の課題として浮かび上がったのは、屋内にいる時の低い予防対策意識。「屋外で作業をするとき」に熱中症に気をつけている人は全体で49.1%で5割近くに上るものの、「屋内で作業をするとき」は16%にとどまり、屋外と屋内では意識差が見られることがわかった。別調査では、年齢とともに自宅内で熱中症になる人が多いことがわかっており、特に女性のリスクが高い性・年齢で変わるリスク、熱中症で倒れる場所。屋内での予防対策意識も高める必要がある。

【出典】日本気象協会

 

熱中症の予防対策、何をしている?

続いて「熱中症の予防や対策として実践していること」を聞いたところ、全年代で「こまめに水分を補給する」が8割以上で1位に。年代別に見ると、60代と70代は「エアコンを利用する」が7割前後で2位だが、80代・90代では「エアコンを利用する(53.8%)」よりも「窓を開けて室内の風通しをよくする(73.1%)」が高く、睡眠や食事に関する項目も上位に。年代によって予防対策行動に違いがあることがわかった。

また、「本格的に暑くなる前から暑さに慣れるための発汗運動等を行う」は全体で18.9%で、体を暑さに慣れさせる「暑熱順化」が重視されていないこともわかった。

【出典】日本気象協会

 

熱中症の予防対策、気掛かりなこと

最後に「熱中症の予防や対策として気がかりなこと」を聞いたところ、全年代で1位は「エアコンを使用すると体が冷えること」。他、「水分をとりすぎるとトイレが近くなること」「塩分をとりすぎている気がすること」「水分をとりすぎている気がすること」「通気性の良い服装だと体が冷えること」など、熱中症対策を講じることで生じるさまざまな健康悩みが明らかになった。

高齢者は「冷え」を感じやすく、有訴者率は年齢とともに高くなる。「熱中症対策による冷えを何とかしたい」というニーズは特に強そうだ。塩分の摂りすぎを心配している人に向けては、懸念を払拭する広告訴求や、年齢や体内の状態に合わせた塩分摂取ができる商品や選択肢があると良いかもしれない。

 

全体で2位だったのは「エアコンや扇風機を使うことで電気代がかかること」。電気代の節約のためにエアコンを使わない高齢者は以前より問題視されてきたが、電気代高騰によりこの状況はさらに悪化しそうだ。

【出典】日本気象協会

 

エアコンを使用しないために熱中症で亡くなるケースは、後を絶たない。各自治体がエアコンの使用を呼びかけているものの、経済的に困窮している高齢者世帯をはじめ、体の冷えが気になっていたり体が暑さを感知できなくなっている高齢者は、この先もエアコンを積極的に使用しない可能性は高い。熱中症対策による各健康悩みの解決と合わせ、エアコンを使わない高齢者の熱中症問題にどう対応するのか、対策は急務だ。

 

 

 

 

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