【男女の違いVol.43】男女で異なるオンライン診療の利用実態

COVID-19による時限的な特例措置で初診からの適用が認められたことで、オンライン診療の認知はこの2年で随分と広がった。利用実態に関する各所の調査を見ても明らかで、オンライン診療が一般的な健康行動の選択肢となる日は着実に近づいている。博報堂生活総合研究所が先日発表した2022年のトレンド予測でも、「オンライン診療」が上位にランクイン。認知度・期待度ともに上々だ。とは言え、現時点ではオンライン診療ユーザーは限られており、性・年齢によって利用有無・利用意向は異なる。最新のデータを参考に、利用実態の特徴を掴んでいこう。

【ユーザー数】男性<女性

オンライン診療における利用実態の特徴として第一に挙げられるのが、年齢差・性差。ユーザーは若年世代に多く、かつ、男性より女性に多い。以下はオンライン診療アプリ「クリニクス」を提供するメドレー(東京・港)が、自社サービスのユーザーをデータ化したもの。ユーザーは圧倒的に女性に多く、中でも30〜40代に多いことがわかる。(特定の一サービスのユーザーデータになるので、これを日本全体の傾向と捉えて論じるのは少々雑に感じるかもしれないが、同社はオンライン診療サービスの代表的企業なので、参考資料として見るには十分有益だろう)

【出典】株式会社メドレー

若年世代のユーザーが多い理由として同社は、「仕事が忙しく通院時間を確保しにくいこと、子育てや介護により通院の負担が大きくなっていることなどが考えられる」とコメント。ちなみに男女間で圧倒的な差が見られるのは、女性は産婦人科や皮膚科の受診機会が多いことや、家族の健康管理を主導していることが関係しているだろう。同社のユーザーデータやコメントからは、女性の方がオンライン診療の利用メリットを感じやすく、かつニーズが強いことを読み取れる。

 

【関心・期待度】男性<女性

オンライン診療に対する関心・期待度が高いのも、男性より女性だ。博報堂生活総合研究所が先日発表した「生活者が選ぶ“2022年 ヒット予想”」からそれを読み取れる。「2022年以降、話題になりそう/人々の生活に普及・浸透していそうと思うもの」を10〜60代の男女に答えてもらったところ、「オンライン診療」を挙げた人は女性に多く、男女間で10.5ポイントの開きがあった。

オンライン診療の浸透を予想するのは女性に多い=女性の方がオンライン診療に対する関心・期待度が高い理由として、同所は「COVID-19の感染不安が一因と考えられる」とのこと。同所の他調査では男性よりも女性の方が感染対策を徹底したり不安に感じる人が多いことがわかっており、それが、密を避けられるオンライン診療への関心につながっているのだという。同所が発表したトレンド予測の詳細は以下の記事に掲載。

 

【高齢者の利用意向】男性>女性

オンライン診療のユーザー数は女性に多く、関心・期待度が高いのも女性だが、この傾向は高齢層についてはあてはまらない。男性の方が関心が高いことが、オンライン医療事業のマイシン(東京・千代田)が実施した調査で明らかになった高齢者のオンライン診療に関するニーズ調査結果,2021.10

内科系疾患に罹患し現在医療機関に通院中の65〜84歳の男女300人のうち、「オンライン診療を知らない」または「オンライン診療を知っているが利用したことがない」人を対象に利用意向を聞いたところ、「利用したい」と回答したのは女性3.1%、男性9.6%で、男性の方が関心が高いことがわかった。以下は年齢階級別の利用意向。全年齢階級において利用意向は男性の方が高いことがわかる。

【オンライン診療の利用意向】
女性(%) 男性(%)
全体 3.1 9.6
65〜69歳 4.9 12.5
70〜74歳 2.0 13.6
75〜79歳 2.6 3.3
80〜84歳 3.1 4.5

 

高齢層においては男性の方が関心が高いのはなぜか?主な要因は診療ニーズの男女差と、オンライン診療で用いるデジタルデバイスに対する苦手意識の男女差のようだ。

「オンライン診療を利用したくない」と回答した人を対象にその理由を聞いたところ、「直接対面で医師に診察してほしいから(以下表A)」「サポートがあったとしても、オンライン診療に使う道具(スマホやパソコン)が苦手だから(以下表B)」と回答した人の割合は女性の方が高いことがわかった。

【オンライン診療を利用したくない理由】
A(%) B(%)
女性 男性 女性 男性
全体 84.1 78.3 34.1 18.8
65〜69歳 88.2 88.9 17.6 16.7
70〜74歳 65.4 77.3 42.3 22.7
75〜79歳 95.8 66.7 25.0 22.2
80〜84歳 90.5 81.8 47.6 9.1

 

オンライン診療ニーズ、どうなる?

オンライン診療ユーザーは、今のところ若年世代の女性に多い。家事・育児・仕事・健康管理といった自分のタスクに加え、子ども・親/義親・夫など家族のケアワークを主導する立場にいることから、”通院の時短化”の面で利用メリットを感じており、今後もユーザーは着実に増えていくと考えられる。多様なフェムテックが登場し、オンライン上での健康管理や健康相談が身近になってきたことも、このトレンドを自然に押し上げていくだろう。

一方で高齢女性については、ユーザーの拡大にはかなりの時間を要する気配。まず、ネット・スマホ・パソコンの利用率が若年層ほどまでには追いついていない中で、煩雑な印象のあるオンライン診療の利便性を理解してもらえるかどうかが第一ハードル。ただでさえデジタルデバイスを使いこなせず苦手意識があるというのに、オンライン診療を受けるとなると、アプリの設定や操作・診察料の支払いなど、何かとややこしいイメージが先行する。「難しそうで面倒だから、医療機関まで出向いた方が早い」と考える人は多いだろう。

もう一つのハードルは、直接対面での診療ニーズが強いこと。「直接話しながら体の状態を診てほしい。触診で確認してほしい」というニーズは年齢に関係なくあるが、若年世代と比べて持病や不調が多い高齢者はその分健康不安が大きいので、直接対面のニーズがより強い。

この2つのハードルをクリアできれば高齢女性のユーザーは格段に増え、高齢期の健康問題や医療費問題の解決にも貢献していくだろう。だがそうなるには、サービス提供者側にかなりの努力と配慮が必要だ。

 

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