スマホ・タブレットを利用しない高齢女性、なぜ?

高齢層のスマホ・タブレット利用率は年々高まり、特にCOVOD-19による買い物不便やコミュニケーション不便が影響し、デジタル利用率やデジタルリテラシーは急速に高まった。とは言え利用しない高齢層は未だ一定数存在し、特に70代以上で顕著だ。情報格差による不利益、買い物不便、災害時の孤立などといったデジタルデバイド問題の解消に向け、高齢層のスマホ・タブレット利用促進が急がれている。企業にとっても高齢層のスマホ・タブレットの利用実態は、マーケティング設計を考える際に気になるところ。今回は高齢層のスマホ・タブレットの利用状況のうち、「利用しない派」の人にフォーカスをして意識を探っていこう。

スマホ・タブレットの利用率(年代別)

以下グラフは男女のスマホ・タブレットの利用状況を年代別に示したもの令和3年版 情報通信白書,総務省。60代の利用率は7割を超え(「よく利用している」と「時々利用している」の計)、この年代には広く浸透している様子がうかがえるが、70代以上になると利用率はぐっと下がり4割程度。「よく利用している」のはわずか2割にとどまる。

 

スマホ・タブレットを利用しない理由

10〜50代の利用率は9割〜ほぼ10割という状況と比べると高齢層の利用率は低く、とりわけ70歳以上で顕著だ。では、利用しない高齢層はなぜ利用しないのだろうか?

それについて総務省が調査を実施しているので見てみよう。以下は同省が公表した調査結果のうち、60代と70歳以上の女性の結果をグラフ化したもの情報通信機器の利活用に関する世論調査 ,令和2年度,内閣府。60代・70歳以上ともに最多は「自分の生活に必要ないと思っているから」で、単純にスマホ・タブレットの必要性を感じておらず無関心であることがわかる。

一方で、必要性や関心の有無とは関係ない理由を挙げた女性も多く、70歳以上については「どのように使えばよいかわからないから」「必要があれば家族に任せればよいと思っているから」が半数近くに。60代においては情報漏洩を気にする声が多く、60代と70歳以上では利用しない理由が微妙に異なることが明らかになった。

 

スマホ・タブレット、どうなれば使いたい?

スマホ・タブレットを利用していない人は利用意向が全くないわけではないようだ。同調査ではさらに踏み込んだ質問をしており、「どんなことがあれば利用するか?」と聞いたところ以下の結果となった。操作・設定の難しさがスマホ・タブレット利用の一番の壁になっている様子がうかがえる。(注:以下については、スマホ・タブレットを利用していない全年代の男女436人の集計結果)

  • 1位:操作や設定が簡単になる(47.9%)
  • 2位:機器の値段や通信料金が下がる(40.1%)
  • 3位:気軽に相談できるサポート窓口がある(24.5%)
  • 4位:楽しさや便利さを知る機会がある(21.1%)
  • 5位:身近で操作や設定を教えてくれる教室などがある(19.5%)
  • 6位:家族や友人とのコミュニケーションが増える(16.1%)
  • 7位:無回答(13.8%)
  • 8位:その他(7.8%)

 

スマホ・タブレットでどんなネットサービス使ってみたい?

同調査ではさらにもう一歩踏み込み、スマホ・タブレットを利用していない人に「スマホ・タブレットでどのようなネットサービスを利用したいか?」についても聞いている。最多は「利用したいと思わない」で4割。ネットサービスどころか、スマホ・タブレットそのものへの関心の低さが読み取れる結果となった(注:以下については、スマホ・タブレットを利用していない全年代の男女436人の集計結果)

  • 1位:利用したいと思わない(41.5%)
  • 2位:様々な情報を閲覧できる検索サイト(27.1%)
  • 3位:目的地までの公共交通機関や道路ルートの検索(25%)
  • 4位:オンラインによる診療や健康相談(18.3%)
  • 5位:給付金の申請や税の確定申告などの行政手続(15.6%)
  • 6位:インターネットショッピング(メルカリなど)(10.1%)
  • 7位:オンライン学習(語学、資格、一般教養など)(4.4%)
  • 8位:SNS(Twitter、LINEなど)(4.1%)
  • 9位:ウェブ会議ツール(Skype、Zoomなど)(1.1%)
  • 10位:インターネットバンキング(0.9%)
  • 11位:無回答(9.2%)
  • 12位:その他(2.3%)

 

高齢女性のデジタルマーケ、どうする?

COVID-19による影響で高齢女性のスマホ・タブレット・ネットユーザーが増えたことが各所の調査で明らかにされていることから、高齢女性向けのデジタルマーケティングの強化を検討する動きが出てきているが、とは言え一定数は未だ未利用である上に、特に70歳以上についてはさほど利用意向は高くはない。昨年〜今年にかけて新たにスマホ・タブレットユーザーになった女性に向けたデジタルマーケティングを強化しつつ、アナログなマーケティングもまだまだ手は抜けない。未利用の女性を取り残すことのないよう、デジタルデバイド問題の対策は忘れずに。

 

 

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