サウジアラビアのヘルスケア市場概況、目下の課題は女性の高い肥満率
中東協力センターが、サウジアラビアのヘルスケア市場の概況をまとめたニュースレポートを公開した(「サウジアラビアにおけるヘルスケア分野の現状と進む変革」メディヴァ木内大介,2024.4)。原油依存型経済の脱却を目指すサウジアラビア政府は、2030年までのありたい国家像と各数値目標をまとめた「サウジ・ビジョン2030」を2016年に発表しており、重点分野の一つに医療・健康を位置付け変革を進めている。レポートでは、ヘルスケア市場の現況を以下9つのポイントとともに政策面から概説している。
<サウジアラビアのヘルスケア市場>
- 人口はしばらく増加
- 寿命は緩やかに上昇
- 高齢化率はまだ低いが上昇傾向
- 疾病構造は非感染性疾患へ移行中
- 高い生活習慣病リスク
- 高い交通事故死
- 病床数は不足気味で偏在
- 医療人材は不足気味で外国人に依存
- 医薬品や医療機器の国内生産は未発達
経済成長に伴う生活様式の多様化や、女性の社会進出の進展などを背景に同国の疾病構造は変化しており、感染症による死亡から、心疾患や脳血管疾患など生活習慣病を背景にした非感染性疾患による死亡割合が増えているという。女性については肥満が目下の課題で、経産省のレポートによると(医療国際展開カントリーレポート 新興国等のヘルスケア市場環境に関する基本情報 サウジアラビア編,2023)、女性の肥満率は男性の68.0%を上回り71.9%で、G20の中で最も高い(日本の女性の肥満率は19.7%)。高血圧患者の割合も世界的に見て高く、日本の女性の高血圧患者の割合が12.6%であるのに対し、同国の女性は21%。10万人あたりの妊産婦死亡率は日本が5で、同国は12。女性の予防医療の充実化や、医療サービスのアクセス向上が求められている。
サウジアラビアの人口動態、ヘルスケア市場(医療サービス市場、医療機器市場、医薬品市場、介護市場、歯科市場)の市場別規模、健康水準・医療水準を示す主要指標、死因、法制度などについては、前述の経産省レポート内に掲載。
【編集部おすすめ記事】
■200兆円超えの巨大市場、中国の高齢者産業 最新動向
■台湾のヘルスケア市場5.8兆円、プレシジョンヘルスケアに注力
■米、大統領令が「女性の健康調査を強化、2億ドル拠出」
■【レポート】売れるフェムテックの「開発」と「販売戦略」 17の障壁と対策