女性を解放する新概念で共感を呼んだ広告4選
キラリと光るヘルスケア企業の広告事例を全4回の連載でお届けするコーナー。第1回目「体験型で巻き込む、ヘルスケア企業の広告事例」、第2回目「体験型じゃなくてもイケる!共感で引き込む広告」に続き今回は「女性を解放する新概念で、共感を呼ぶ広告」。女性たちの価値観変化を敏感に感じ取り続けなければ、刺さるクリエイティブは作れない。価値観のアップデートをしつつ、最新の事例を見てみよう。
目次
バイアス、バイバイ(アートネイチャー、他)
今年3月8日の国際女性デーの読売新聞に、アートネイチャー、アマゾン、住友電工、伊勢半の連合企業広告が掲載された。国際女性デーが目指す「ジェンダーにおけるバイアスのない世界」を、国際女性デーのテーマカラーであるミモザ色(黄色)とともに、「バイアス、バイバイ」というコピーで表現した。
バイアス、バイバイ。
本日3月8日は #国際女性デー。#読売新聞 朝刊に「#バイアス なき世界」「自分らしさが大切にされる世界」に向けて、#ミモザ 色のメッセージ広告が掲載(一部地域のみ)されています。#バイアスバイバイ @hotmom_2021@KISSME_pr pic.twitter.com/j9p4BZhsuT
— 読売新聞社広告局 (@yomiojo) March 8, 2021
ルッキズム、エイジズム、男女格差ランキング、性別役割分業、女性蔑視発言ー。最近になりこういったジェンダーに関する社会問題が急速に表面化し、その多くが重く・暗く・小難しく取り上げられているが、そんな中こちらのクリエイティブは、テンポ良い語呂合わせとライトな言葉遣いで、目指したい世界をサラリと描写。”ジェンダーのバイアスは徐々に過去のものになっていく。今はちょうどその変革期である”ということをポジティブに捉え、ジェンダー問題を、老若男女問わず受容しやすいレベル感にまで引き下げて簡潔に指摘・表現した絶妙なさじ加減がうまい。
本広告を手がけたクリエイティブディレクターは、制作に込めた思いを次のように述べている。
期せずして、(広告掲載の)直前に政治家の失言が相次いだのですが、日本で女性の権利が話題になる時、ネガティブな文脈であることが大半です。しかし、少しずつではあっても、状況は確実に良くなってきています。1年に1回の女性デーを、女性にも男性にもポジティブな気づきをあたえる日にすることを意図しました(引用:アドタイ)
次のジョブズも次のケネディも次のアインシュタインも、きっと、女。(宝島社)
多くの女性たちの共感を得て賞賛されたのは、2020年1月に日経新聞に掲載された宝島社の企業広告。ビジュアルはフランスの画家ウジェーヌ・ドラクロワの「民衆を導く自由の女神」を、そしてコピーは「次のジョブズも次のケネディも次のアインシュタインも、きっと、女。」を採用した。
この広告が掲載されたのは、新元号になって初のお正月で、かつ「女性活躍推進法」施行から5年が経過したタイミング。「女性が輝く社会は実現されているのか?女性が輝かない社会に未来はあるのか?」と、女性活躍に関する現状を社会へ向け改めて問題提起するとともに、女性こそが希望であることを宣言した。
SNSには「こんな広告打ってくれてありがとう」「グッときた」「かっこいい!」「宝島社、いいな〜」「日本の女性たちも、もっと野心を持っていいと思う」と、女性たちが共感の声を投稿した。
同社は企業として社会に伝えたいメッセージを世の中に発信しようと、1998年から企業広告を開始。これまでに様々な広告賞を受賞し、その広告メッセージは度々話題を集めてきた。
何が幸せかは、私が選ぶ(オージービーフ)
こちらは、朝日新聞社が協賛企業とともに企業広告案を一般の人から募る広告プロジェクト(#広告しようぜ)から生まれた広告(2020年)。協賛企業6社(パーソル,サイバーエージェント,ジンズ,ソーダストリーム,水ing,オージービーフ)それぞれの企業活動に沿ったテーマの広告案を募集し、応募総数5,225案の中から各社が採用を決定。採用された広告案は、朝日新聞に企業広告として掲載された(2020.12.29)。
協賛企業の1社であるオージービーフは「日本の女性が元気になる広告」を募った。そのリクエストに応え採用されたのがこちら。コピーは「何が幸せかは、わたしが選ぶ」。
若く美しくいることや、女性の幸せは結婚・出産であること、従順な妻であることなど、社会がこれまで抑圧的に定義してきた女性としての幸せを追うのではなく、自分自身が幸せだと感じるモノ・コトを追いながら生きていきたい。ステレオタイプに惑わされることなく、自分軸で物事を判断したいー。
そんな現代女性の多様化した幸せのカタチを表現したクリエィティブだ。制作者は「誰もが自由に“幸せ”の選択を楽しめる社会であってほしいという思いを表現してみました」。
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私の血は「青」ではなく「赤」(UN women)
次にご紹介するのは、ツイッターに投稿されたクリエイティブ。企業広告ではないが、現代の新しい価値観を反映したコピーや問題提起の視点が参考になるので、紹介したい。
ジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための国連機関、UN women(Turkey)が、今年の世界月経衛生デー(5月28日)に合わせてツイッターに投稿したクリエイティブで、コピーは「私の血は青ではなく赤」。生理用品の企業広告に使われる液体に“青色”が使われることを疑問視した投稿で、「生理のタブー視やスティグマをなくすために、生理をありのままに表現することが大切だ」というメッセージを込めている。
Why is blue liquid 🔵used in menstrual product advertisements instead of red liquid 🩸? We can normalize menstruation by breaking menstrual taboos.#subjectperiod
Thanks to Hazal Kırıkçı for her support and illustrations.💚 pic.twitter.com/YLVbUop2qV
— UN Women Turkey (@unwomenturkey) May 27, 2021
これは日本も同様で、生理用ナプキンの広告や商品パッケージには、経血のイメージとして青色の液体が使われるのが一般的。驚くべきことに、その影響から「経血は青い」と思い込んでいる男子児童・男性は実際にいる。経血が赤いことを知らずに育つことが、男性ひいては社会の中で「生理は汚い」「生理は汚らわしい」というイメージが刷り込まれたり、女性自身も「生理は隠すべきもの」というネガティブな感情を引き起こす。こういったスティグマの解消を、企業広告のあり方を問うことから図るという視点が新しい。
ちなみに今日本で起きている生理ブームは各国同様で、生理のタブー視やスティグマの解消を目指し、フェムテックベンチャーや女性関連の機関・団体等が、クリエイティブを活用してメッセージを発信し続けている。タブー視がつきまとう領域のクリエティブを制作する際は、ぜひ参考にしてみては?特にUN Womenのツイッターは、女性のエンパワとヘルスケアに関する発信が多く、クリエィティブも端的でわかりやすい。今時の価値観・視点・言葉遣いも学べる。
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