女性の暮らしに浸透する“効率化&最適化”、AI認知は9割超え 実利用は「チャットGPT」が最多
本稿は、女性インサイト総研の株式会社ハー・ストーリィによる連載記事です。女性視点マーケティングで30年以上にわたり企業の商品開発やマーケティングを支援する同社では、女性インサイトを探るため、さまざまな視点から消費行動を分析しています。前回の「コンビニ消費」に続き、今回のテーマは「AI」。クラスターで異なる活用方法を見ていきます。
目次
2025年はデジタル・AIとともに暮らす「AI共生元年」
スマートフォン決済やオンラインサービスが日常に定着し、家電や見守り機器などのIoTも家庭に広がる今、生成AIの登場により、私たちの「商品やサービスの選び方」や「情報との関わり方」にも新たな変化が生まれています。そこで、生活者がどのようにデジタルやAIを使い、どんな場面で取り入れているのかを明らかにするため、購買・決済・情報取得など、生活動線に直結するシーンにおける活用実態やAIの認知状況、AIをきっかけとした商品・サービス利用経験に着目し、デジタルとAIが生活者の選択や行動にどのような影響を及ぼしているのかを探りました(調査概要:15歳以上の男女731人にインターネット調査を2025年9月に実施)。
全体の約8割がQR決済を利用
普段利用するスマホ決済やアプリについての調査では、全体の6割以上が「QRコード決済」と「ショッピングアプリ」を利用しており、これらが生活インフラの一部となっていることがうかがえます。中でも「QRコード決済」の利用率は約8割と高い結果になりました。また、「コミュニケーション・SNSアプリ」も高水準。一方で、「フードデリバリー・宅配アプリ」や「ライフログ・家計簿・健康管理アプリ」の利用は限定的という結果になりました。
IoT導入の中心層は、乳・幼児期ママ層
次に、自宅で利用している主なデジタル機器について聞くと、全体では6割が「特に使用しているものはない」と回答し、家庭内のIoT機器(スマート家電やスピーカーなど)は、まだ一般化の途上にあることが明らかになりました。利用トップ3は「スマート家電(22%)」「スマートスピーカー(12%)」「ウェアラブル端末(11%)」でしたが、どれも1~2割ほどという結果です。一方で、0歳〜未就学児の子どもがいるママ層(以下グラフでは「乳・幼児期ママ」と表記)はデジタル機器の導入が進んでおり、「スマート家電(39%)」「子ども見守り・ベビーモニター(20%)」「スマートスピーカー(18%)」「ウェアラブル端末(16%)」「スマートロック(7%)」などを活用。家事効率化や子ども・家族の安全確認のためにデジタル機器を積極的に取り入れていることが特徴として現れました。
■ママ層のIoT導入例
- ベビーモニター
リビングには見守りカメラを設置し、子どもが習い事などの時間に合わせて動くことができているか確認している(小〜中学生の子どもがいるママ/35~39歳/既婚) - 洗濯機
帰宅したタイミングですぐに干せるように逆算して、外出先からアプリを操作してまわす(小〜中学生の子どもがいるママ/35~39歳/既婚) - スマートスピーカー
家事で手が離せない時にテレビをつけたり、外出先から帰るときにエアコンを起動させる(0歳〜未就学児の子どもがいるママ/35~39歳/既婚)
AI認知は9割以上、最多は「ChatGPT」
生成AIの認知度について聞くと、トップは「ChatGPT」で認知度も87%と、生成AIの代名詞的存在となっていました。次いで「Siri(69%)」「Alexa(53%)」「Google翻訳(52%)」「Google Gemini(52%)」が入り、「知っているものはない」は6.8%にとどまりました。つまり、9割以上の人が何らかのAIサービスを認知していることになります。
利用経験の最多も「ChatGPT」、約5割
実際に利用したことがあるAIサービスでも、全体では「ChatGPT」が最も多く、認知している人(87%)のうち約半数が実際に利用しているという結果になりました。次に「Google翻訳(36%)」「Siri(31%)」「Google Gemini(24%)」と続きます。一方で「利用したものはない」も27%おり、認知はしていても活用には至っていない層も一定数見られます。
全体よりもAIサービスの利用率が高かったのは、次の2つの女性クラスターです。
■25〜39歳の独身女性層
若手シングル層は、「ChatGPT(58%)」「Copilot(61%)」などを高頻度で利用し、仕事や自己効率化の目的が強い傾向です。以下は具体的な声です。
- NISA口座を開設したまま何もしていなかったので、わからない用語を都度解説してもらいながらChatGPTと相談して投資を進めた(独身/30〜34歳)
- 自撮り画像をフィギュア化した(独身/20〜24歳)
■0歳〜未就学児の子どもがいるママ層
0歳〜未就学児の子どもがいるママ層は、「ChatGPT(53%)」「Siri(47%)」「Gemini(29%)」などを利用し、最もAI活用が進んでいる層。育児や家事のサポートとしてAIを取り入れています。
- 子どもの保育園の日記を毎日手書きで書かないといけないので、あったことを音声でバーっと喋ってChatGPTに入力し、文章を整えてもらった(0歳〜未就学児の子どもがいるママ/既婚/35〜36歳)
- 冷蔵庫にある食材から、ダイエット向きのメニューを提案してもらった(小~中学生の子どもがいるママ/既婚/35〜39歳)
- 子どもの年齢に合うおすすめスポットを教えてもらい、子どもとカフェに行った(小~中学生の子どもがいるママ/既婚/35〜39歳)
AIによる購買喚起は若年層と子育て層で先行
AIをきっかけに商品やサービス、イベントを利用した経験について尋ねたところ、全体では「はい、購入したことがある(13.3%)」「検討したが購入に至らなかった(13.7%)」が合わせて約27%となり、3割弱において、AIが購買行動に影響を与えていることが分かりました。一方で「購入経験なし」は7割を超えており、AIが購買を直接動かす段階にはまだ至っていないといえます。なお、「はい、購入したことがある」の男女比は男性18.6%・女性12.5%と、男性の方が行動への転換が早い傾向が見られました。
「はい、購入したことがある」が男性全体よりも高い結果となったのは、0歳〜未就学児の子どもがいるママ層で、19.6%でした。育児関連サービスや商品提案でAIが活用されている可能性が考えられます。
■ママ層の購入例
- Amazonの「あなたへのオススメ」に出てきた子ども向けのマンガ『日本の歴史』シリーズ(小~中学生の子どもがいるママ/35~39歳/既婚)
- 子どもの体調に合わせてリストアップしてくれたサプリ(高校生以上の子どもがいるママ/50~54歳/既婚)
- ベビーカーを比較して、一番自分に合うと言われたもの(0歳〜未就学児の子どもがいるママ/50~54歳/既婚)
AIへの期待が高いのは、家事・健康管理など日常領域
今後さらにAIを利用したい分野は?という質問で最も多い回答は「日常生活(家事・健康管理)」で57.9%でした。次いで「仕事・学業支援(40.5%)」「エンタメ・趣味(34.4%)」が続きます。「特に利用したい分野はない」は2割にとどまり、多くの生活者が“これからの暮らしにAIを取り入れる余地がある”と感じていることがわかりました。
暮らしを支えるAI、広がる“共生”のかたち
暮らしの中で“効率化”と“最適化”を両輪で回し始めている女性生活者にとって、AIやデジタルツールは、より「当たり前の選択肢」から「暮らしを支えるベース」に変化しつつあります。商品開発においては、「ただ機能を搭載する」だけでなく、「何を支え、誰のどんな暮らしを豊かにするか」という視点が、今後ますます重要になっていくでしょう。本調査が示すように、特に乳・幼児期ママ層や若手シングル層では、暮らしの効率化や家事・育児支援の文脈でAI活用が進んでいます。今後はこうした層を“早期導入者”として、横展開・深展開を図る施策が期待されます。
【提供元】 株式会社ハー・ストーリィ
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法人クラブ inher会報誌 HERSTORY REVIEW 2025年11月号アンケート調査資料「AI・デジタル利用に関するアンケート」
女性顧客のインサイトを見える化する日本で唯一の専門コンサルティング会社、女性インサイト総研 株式会社ハー・ストーリィです。1990年の創業以来、女性の消費行動や深層心理を継続的に研究・分析し、 企業のマーケティングや商品開発における課題解決を支援しています。職業や家族構成などの「ライフコース」と、年齢や年代といった「ライフステージ」の2軸で女性を分類し、実態に基づくデータを体系的に分析。得られた知見をもとに、企業の戦略設計や施策の最適化を行っています。
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