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再定義される「エイジングサイン」 中年女性の潜在ニーズから浮かび上がる、人生100年時代の市場機会

本稿は、医療・ヘルスケアに特化した市場調査会社の株式会社インテージヘルスケアによる連載記事です。今回のテーマは「エイジングサインから見る市場機会」。女性のエイジングサインというと美容をイメージしがちですが、人生100年時代においては、捉え方を見直す必要がありそうです。

エイジングケアの関心は「見た目」から「身体機能」へ

「人生100年時代」と言われる現代、多くの女性にとって「エイジングケア」は、単なる美容の枠を超え、いかに健康に自分らしく歳を重ねていくかという「健康寿命」への投資へと関心がシフトしています。特に、これまで高齢者の課題とされてきた「フレイル(虚弱)」への懸念が、より早い年代から静かに、しかし確実に広がり始めていることをご存知でしょうか。今回の記事では、当社インテージヘルスケアの独自調査データに基づき、40代・50代女性が抱える「見た目」以外のエイジング不安、すなわち“フレイルの芽”に焦点を当てます。この「静かなる不安」の中に、ヘルスケア企業が長期的な顧客との関係を築くための、新たな市場機会が眠っています。

 

再定義すべき「エイジングケア」、40代女性が本当に向き合う“衰え”

一般的に「エイジングサイン」と聞くと、シミやしわ、たるみといった外見上の変化を想像しがちです。実際に、40代から70代の女性が最近1年で経験したエイジング関連症状の上位は「しわ・しみ・たるみ」「白髪の増加」です(「女性の健康に関するお悩み実態把握調査」エイジングケア(フレイル) 最近1年間に経験した症状)

しかしデータを深く見ると、それだけではない、より深刻な悩みが浮かび上がってきます。同調査では、40代ですでに「視力の低下(27.9%)」や「老眼(23.6%)」といった身体機能の低下を実感する声が多く挙がっています。さらに注目すべきは、「気分の落ち込み・不安感(27.1%)」「寝れない・不眠(24.6%)」といったメンタル面の不調を、エイジング関連症状として経験している点です。これは、エイジングサインを単なる美容上の問題ではなく、心身の機能全体に関わる包括的な課題として、早い段階から意識していることを示唆しています。

エイジングサイン(フレイル)に関する最近1年間の経験症状 TOP10

 

40〜50代はフレイル予備軍、中年女性が抱える心身の症状

40代を「プレ更年期」、50代を「更年期ピーク」と捉えると、女性の身体には顕著な変化が現れます。当社の調査では、この年代の女性が直面する具体的な課題が明らかになっています。

40代になると、「目の疲れ」や「肩・腰の痛み」に加え、「眠りが浅い・寝つきが悪い」といった睡眠に関する悩みや、PMS(月経前症候群)とは異なる「疲労感」「イライラ」といった更年期の初期症状が出始めます(「女性の健康に関するお悩み実態把握調査」女性のライフステージ年表,20-40代)。そして50代では、これらの症状が本格化すると同時に、「足腰・筋力の衰え」「老眼」「体重増加」といった、より直接的に「フレイル」を想起させる身体機能の低下が急増します(「女性の健康に関するお悩み実態把握調査」女性のライフステージ年表,50-70代)

美容の悩みだけでなく、こうした身体機能やメンタルヘルスの悩みに早期から寄り添うことが、未来の顧客とのエンゲージメントを築く鍵となります。

40代・50代女性のライフステージ別 身体・メンタルの主な悩み

 

中年女性の潜在ニーズから見える、ヘルスケアフーズ市場の勝機

では、こうした「フレイル予防」への潜在ニーズに対し、ヘルスケア市場、特に健康食品・サプリメント市場にはどのようなビジネスチャンスがあるのでしょうか。当社の市場規模推計データでは、この領域に大きな可能性があることを示しています。

「骨・関節の健康」「筋肉強化」「脳機能の改善」といった、フレイルに直結するヘルスベネフィット市場は、すでに確固たる規模を築いています。特に「関節の健康」は662億円、「骨の健康」は368億円、「筋肉強化」は361億円と、それぞれ巨大な市場が形成されています。また、将来の不安に応える「認知症予防」「脳機能の改善」市場もそれぞれ206億円、102億円と、無視できない規模に成長しています(「健食サプリ・ヘルスケアフーズ・セルフへルスケアレポート2024」図Ⅱ-11 ヘルスベネフィット別市場規模および累積構成比)

興味深いのは、こうした骨や関節、脳機能といった領域への関心が60代以降に急激に高まる点です。60代以降の女性が興味を持つヘルスクレームとして「骨の健康維持」「関節の健康維持」は常に上位にランクインしており(「女性の健康に関するお悩み実態把握調査」興味関心/購入したいと思うヘルスクレーム)、悩みが顕在化するタイミングで、具体的なソリューションを求める生活者の姿が浮かび上がります。

フレイル関連ヘルスベネフィット市場規模(2024年度推計)

 

長期的な顧客育成(LTV)を見据えた次なる一手

今回の分析から見えてきたのは、「フレイル予防」がもはや高齢者だけのテーマではないという事実です。40代からの女性が抱える「静かなるエイジング不安」は、身体機能の維持・向上、そして将来の健康への投資という、長期的かつ継続的なセルフケアニーズの表れです。ヘルスケア企業にとって、これは顧客生涯価値(LTV)を高める絶好の機会を意味します。目先の美容悩みだけでなく、骨、関節、筋肉、脳機能といった、より本質的な健康課題に寄り添う製品やサービス、情報を提供すること。それが、40代からの女性と長期的な信頼関係を築き、未来のセルフケア市場をリードするための重要な戦略となるでしょう。

【提供元】 株式会社インテージヘルスケア

40代・50代女性のインサイトを、貴社の次のヒット商品へ!本記事でご紹介したデータは、弊社インテージヘルスケアの自主企画調査「女性の健康に関するお悩み実態把握調査」「健食サプリ・ヘルスケアフーズ・セルフへルスケアレポート2024」からの抜粋です。これらの膨大なデータベースを活用し、特定の悩みを持つ層のデモグラフィック、他の健康課題との関連、購買行動などを詳細に分析することが可能です。製品開発やマーケティング戦略の立案に、ぜひ弊社のリサーチソリューションをご活用ください。

 

 

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