認知症メカニズム解明に期待 脳老化速度を部位毎に解明 名古屋大
脳容積は加齢により一律減少していくのではなく、容積が保たれてる領域もあれば、むしろ増加する領域もあり、脳の領域によって異なるー。名古屋大学の研究チーム(※)は、加齢に伴う脳容積の領域ごとの違いを明らかにすることに成功した。
一般に、加齢とともに脳容積が減少することがこれまでの研究で知られているが、脳の領域毎で脳容積の減少速度に違いがあるのか、それとも一様に減少するのか、また萎縮に伴って脳の有する機能(役割の)分離、効率性・統合性がどうなるかなど、その詳細な様式は不明だった。
研究グループは、健常者 293 例の頭部 MRIデータの解析により、以下を明らかにした。
- 年齢に伴って容積が変化する 192 の部位を発見
- 脳容積は加齢に伴って一様に減少するのではなく、相対的に保たれる領域や、45 歳~50歳頃までは、むしろ増加する領域がある
- 運動機能に関わる領域は加齢とともに大きく減少
- 情動や記憶などに関わる領域は45歳頃まで増加し、その後に減少していく
- 視覚、聴覚、意味の処理などに関わる領域は45歳頃まで減少し、その後は保たれる
- 45~50歳以降は、脳の領域間の情報伝達の効率性・統合性は、むしろ高くなる
健常な脳の老化・萎縮様式を明らかにすることは、年齢を重ねても認知機能がよく保たれるメカニズムや、加齢による認知症・神経変性疾患の病態のメカニズムの解明に大きく寄与することが期待できる。
本研究で明らかにした健常者の一連の脳の老化・萎縮様式は、年齢を重ねても認知機能がよく保たれるメカニズムとして重要である可能性が示された。研究グループは今後、認知症との比較を行いその意義をさらに明らかにしていく予定。⇒【詳細】健常者における脳の老化・萎縮様式を解明!〜健常高齢者は認知機能が保たれている謎に迫る〜(名古屋大学)
(※)名古屋大学大学院医学系研究科 神経変性・認知症制御研究部門の祖父江 元(そぶえ げん)特任教授、量子医学の長縄 慎二 (ながなわ しんじ)教授、脳とこころの研究セ ンターのバガリナオ・エピファニオ特任准教授、渡辺 宏久 (わたなべ ひろひさ)特任教授、 寳珠山 稔(ほうしやま みのる)教授及び礒田 治夫(いそだ はるお)教授、医学系研究科脳神 経外科学の若林 俊彦(わかばやし としひこ)教授、未来社会創造機構の葛谷 雅文(くずや ま さふみ)教授、医学系研究科精神医学の尾崎 紀夫(おざき のりお)教授ら
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