「こども未来戦略方針」決定、少子化対策強化に向けた取り組み要旨
政府は今月13日、「こども未来戦略方針」を閣議決定した。少子化対策を強化するために児童手当の拡充や年収の壁への対応など具体的な政策を盛り込んだもので、今後3年間に取り組む「加速化プラン」として年間3.5兆円を投じる。財源の詳細は年末に示す予定。1949年の出生数は約270 万人で、2022年の出生数は77万747人。ピーク時の3分の1以下にまで減少し、統計を開始した1899年以来最少で、初めて80万人を下回った。また、2022 年の合計特殊出生率は1.26 と、過去最低を記録。政府は「急速な少子化に歯止めをかけなければ経済・社会システムの維持は難しい」「若年人口が急減する2030年までが状況を反転させることができるかどうかのラストチャンス」と強い危機感を持つ。方針の基本理念に掲げるのは以下の3つ。
- 若い世代の所得を増やす
- 社会全体の構造や意識を変える
- 全てのこども・子育て世帯をライフステージに応じて切れ目なく支援
今後3年間、「加速化プラン」として取り組む主な政策は以下。
- 子育てに係る経済的支援の強化や若い世代の所得向上に向けた取組
・児童手当は所得制限を撤廃し、支給対象を「中学生まで」から「高校生まで」に拡大。支給額は第1子・2子について、0~3歳未満は月額1.5万円、3歳~高校生までは月額1万円とし、第3子以降は月3万円を給付する。2024 年度中の実施を検討
・「出産・子育て交付金(10万円)」の制度化を検討
・2026年度を目途に、出産費用の保険適用の導入など、出産に関する支援の強化を検討
・貸与型奨学金返済の負担により結婚・出産・子育てをためらわないよう、減額返還制度の利用可能な年収上限を引き上げる
・「年収の壁(106万円の壁・130万円の壁)」を意識せずに働けるよう、「短時間労働者への被用者保険の適用拡大」と「最低賃金の引上げ」に取り組む
・年収の壁を超えても手取り収入が逆転しないよう、労働時間の延長や賃上げに取り組む企業への支援を本年中に決定し、実行、制度の見直しに取り組む
など - 全てのこども・子育て世帯を対象とする支援の拡充
・2022年度から保険適用された不妊治療の推進に向けた課題を整理、検討
・就労要件を問わず時間単位等で利用できる「こども誰でも通園制度(仮称)」を創設
・ヤングケアラーや子育てに困難を抱える世帯等への支援を強化
・妊娠期からの切れ目ない支援と産前・産後ケア拡充のため、「伴走型相談支援」の制度化を検討
・産後ケア事業における、利用者負担の軽減措置を本年度から全ての世帯に対象を拡大して実施
・女性が妊娠から産後まで健康で活躍できるよう、国立成育医療研究センターに、「女性の健康」に関するナショナルセンター機能を持たせ、成育医療等の提供に関する研究や相談支援等を進める
・放課後児童クラブの待機児童の受け皿の拡大を促進
・職員配置基準を改善し保育士等の処遇改善を検討
・ひとり親を雇い入れ、人材育成・賃上げに取り組む企業の支援を強化
など - 共働き・共育ての推進
・男性の育児休業取得率の引き上げ
2025 年 公務員85%(1週間以上の取得率)、民間50%
2030 年 公務員85%(2週間以上の取得率)、民間85%
※現在の民間取得率は13.97%
・両親ともに育児休業取得を促進するため、給付金の割合を現行の手取りで8割相当から10割相当へと引き上げる
・育児休業を支える体制を整備する中小企業への助成措置を大幅に強化
・こどもが2歳未満までの時短勤務による賃金の低下を補う「育児時短就業給付(仮称)」を創設。2025 年度からの実施を目指す
・仕事と育児の両立から心身の健康を守るため、勤務間インターバル制度の導入やストレスチェック制度の活用など、事業主の配慮を促す仕組みを検討。選択的週休3日制度の普及にも取り組む
・雇用保険が未適用な労働者も失業給付や育児休業給付等を受給できるよう、雇用保険の適用拡大を検討
・自営業やフリーランスなどの育児期間中の経済的な支援措置として、国民年金第1号被保険者の育児期間に係る保険料免除措置を創設し、2026 年度までの実施を目指す
など - こども・子育てにやさしい社会づくりのための意識改革
・こどもや子育て世帯を社会全体で支える気運を醸成するため、優先案内や専門レーン設置などの取り組みを国の施設だけでなく他の公共施設や民間施設にも広げる
・鉄道やバスなどにおけるベビーカー使用者のためのフリースペースなどの設置や公共交通機関等において、妊産婦や乳幼児連れの方などに対する利用者の理解・協力を啓発する取組を推進
など
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