2023下半期のトレンドは「無加工主義」「イマーシブ消費」「スパウトパウチ」
化粧品・美容の総合サイト「@コスメ」は今月8日、「ベストコスメアワード2023上半期新作ベストコスメ(※)」を発表した。生活者インサイトや美容トレンドを予測する「下半期トレンド予測」も同時発表し、5項目を上げた。ヘルスケアマーケティングでも参考にしたい注目トレンドは、「無加工主義」「イマーシブ消費」「スパウトパウチ」。※2023上半期の美容トレンド総括はコチラからチェック!
無加工主義
2019年頃から続いてきた「アプリで加工された自分が理想」という女性たちの意識トレンドに、変化の兆しが見えてきた。最近は写真を加工しない“無加工派”が登場。同社は「無加工主義」をトレンドワードに上げ、新たな消費基準につながる可能性を予測している。
SNSの普及に伴い、写真加工アプリで自分を“盛る”という意識・行動が特に若い女性の間で広まったが、最近は、写真や動画が無加工であることを示す「#無加工〇〇」という投稿がSNSで散見されるようになってきた。写真加工アプリ「SNOW」の“ノーフィルター”や、ショートムービーアプリ「TikTok」のエフェクトの“無加工フィルター”など、「無加工風」の写真や動画が撮れる機能も登場している。昨年4月のリリース以降70万人以上が登録しているという、Z世代を中心に人気を集める写真共有アプリの「TapNow」も同様だ。フィルターや写真編集の機能は実装しておらず、加工されていないリアルな写真を送り合う。同様のコンセプトでフランス発のSNSアプリ「BeReal」も、2020年のリリース以降、海外の若い世代を中心に人気を集めている。
@コスメが20〜69歳の女性を対象に実施した調査では、10〜20代の36.8%が「無加工風に見えるフィルターは魅力的だと思う」、25%が「加工アプリではなく、ノーマルカメラで写真を撮ることが増えた」と回答しているというから、無加工を支持する層は少数派ではないようだ。興味深いのは、これまで自撮りや写真の加工機会が多かった若年層ほど無加工を評価している点。10代・20代は年齢的に自分の外見へのこだわりが強いものだが、これはちょっと意外な結果だ。
「無加工主義」が広がっているのは、なぜなのか?同社の分析と合わせて編集部でも追加リサーチをしたところ、どうやら背景にあるのは、「リアルな自分と加工した自分のギャップを埋めたい」「あまりにもリアルからかけ離れていると、実際に人に顔を見せるのが恥ずかしい」「“盛る”から、“ありのまま”や“ナチュラル”思考への移行」「加工した自分や加工した世界観に飽きた」「飾らない自分や日常風景の価値=無加工の価値」などのようだ。「大幅に加工して“盛る”よりも、加工していることがわからない程度に“整える”のが最近の主流。そういう人が周りでも増えている」と言うZ世代の女性もいた。マスク着用が緩和されリアルの自分を見せる機会が増えることで、下半期はこのトレンドが加速しそうだ。
女性たちのこういった意識変化を捉えた同社は、「無加工への意欲が高まれば、今後は『ノーマルカメラでも盛れる』ことが化粧品の評価ポイントの一つになるかもしれない」とコメントしている。化粧品にとどまらず、「ノーマルカメラ=アプリで加工しなくても盛れる」モノ・コト全般が、今後は評価されるようになるかもしれない。
イマーシブ消費
コロナ禍前の日常に戻りつつある今、女性たちのリアル店舗での消費意欲が回復している。@コスメのユーザーアンケートでも、「お店で化粧品を買うのが楽しい」と全体の約5割が回答している。そんななか最近誕生しているのが、コアファン向けにブランドの世界観を最大限に演出するイベントや施設。幅広い消費者が訪れる商業施設や店舗をジャックすることで、コアファンだけではなく新たなファン層を獲得する動きもあるという。
事例の一つが、同社が今年4月に実施したケイト(カネボウ化粧品)とのコラボイベント。ケイトが@コスメのフラッグショップ「@cosme TOKYO(東京・渋谷)」の全館をジャックしたイベント(KATE@TOKYO THE BLOOMING PARTY)で、開催期間中は店舗名を「KATE@TOYKO」とし、店内はケイトのブランドカラーである黒と赤を基調にした内装でデザインした。客はケイトの世界観を全身で感じながら、同月発売の新商品をいち早く体験・購入できる。7日間で延べ1万以上がイベントのリーフレットを手にした他、スタンプラリーイベントには3,000人以上が参加するなど、大好評のうちに終了したとのこと。
こういった店舗を同社は「没入感(イマーシブ)型店舗」と呼び、ブランドに没入できる空間で消費喚起施策に取り組む事例がこれから増えると予測。実店舗での買い物機会が今後さらに加速することで、生活者側にも「行く意味」のある場所で買い物をしたいという意識変化が起きると見ている。
スパウトパウチ
近頃、シャンプーやボディソープのリフィルを詰め替えずに、そのまま使用している人が増えている。それに対応する注ぎ口(ポンプ)や吊り下げ用フックなどのグッズも販売され、SNSやメディアでも、リフィルを本体として使用するアイディアが紹介されている。@コスメのベスコスアワードを受賞した商品やヒット商品など、いくつか事例を見てみよう。
「ワフードメイド 酒粕パック(pdc)」は、昨年上半期に発売され「@cosmeベストコスメアワード2022」の「ベスト洗い流すパック・マスク 第1位」を受賞したフェイスパック。クリーム状の酒粕パックを容器から直接押し出して使用する。
コーセーからも、スパウトパウチの商品が登場。昨年の4月に発売してヒットした、ONE BY KOSÉのパック洗顔「ダブル ブラック ウォッシャー」。
花王からも、スパウトパウチ型商品「キュレル バスタイム モイストバリアクリーム」を昨年10月に発売。湯あがり後の濡れた肌に使う保湿クリームで、吊り下げ型のパック容器を採用している。
スパウトパウチ型の商品がユーザーに評価されているのは、「詰め替えの手間がない」「場所を取らない=スペースパフォーマスが高い」「SDGs」などで、@コスメのユーザーアンケートでも、実用性とSDGsの両立ができている商品に魅力を感じる女性たちの存在を明らかにしている(「『収納しやすさ』『使いやすさ』などの実用性と『環境への配慮』などSDGsが両立する商品に魅力を感じる」と23.3%が回答、「キャップの付いたパウチ型の化粧品・ヘアケア・ボディケアは魅力的だと思う」と22%が回答)。
この傾向は調味料などの食品領域でも見られるようになってきた。商品パッケージのスパウトパウチ化は、新しいトレンドとして成長しそうだ。
他、トレンド2項目
他、同社が予測したトレンドは、「スキンケア欲再燃」と「鼻意識向上」。いずれもマスクを外す機会が増えることで起きるトレンドと見ており、下半期は、コロナ禍で停滞していた美容ニーズや消費意欲、消費行動の変化が加速する気配だ。詳細は同社のプレスリリースに掲載。
女性ヘルスケア領域、2023年のトレンドは?
\ご案内/
2023年度の女性ヘルスケア市場の行方はーー?今年度もウーマンズが市場トレンドを徹底分析し、業界向けのキーワードを選定しました。当レポートをぜひ、各社様の本年度のマーケティング施策にご活用ください!リリースから2カ月ですでに900社様以上にダウンロード頂いています。
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