小売・福祉で働く中高年女性増が背景に、労災事故の死傷者13.2万人で過去最多

厚生労働省は5月、2022年の労働災害の発生状況を公表した。新型コロナへの感染を除いた労災事故による死亡者は774人で過去最少となった一方で、死傷者(労災事故で4日以上休業した死傷者)は132,355人で、過去20年で最多だった。労働者の高齢化で、転倒などの事故が増えていることが背景にある。

死傷者の内訳

死傷者の内訳を見ると、男女計の最多は「転倒」で35,295人。全体の26.7%にあたり、「転倒」が死傷者全体の1/4を超えたのは初めて。

  • 1位:転倒(35,295人)
  • 2位:動作の反動・無理な動作(20,879人)
  • 3位:墜落・転落(20,620人)
  • 4位:はさまれ・巻き込まれ(14,099人)
  • 5位:切れ・こすれ(7,500人)
  • 6位:激突(7,047人)
  • 7位:交通事故(6,773人)

 

働く人の高齢化、中高年の労災事故増

転倒の増加は労働者の高齢化が背景にある。雇用者全体に占める60歳以上の割合は上昇を続けており、2022年は18.4%(以下のグラフ左)。これに伴い、労災事故による死傷者数に占める60歳以上の割合も年々高まっている。2022年は約3割が60歳以上だった(以下のグラフ右)

 

特に中高年女性の労災事故が顕著で、60歳以上の発生率を30代と比べた場合、男性は約2倍に対し、女性は約4倍。女性は加齢により、男性より労災事故のリスクが高まることが指摘されている。以下は年齢別・男女別の労災事故発生率。若年では男性の発生率が高いが、中年になると男女差が小さくなり、65歳になると男女が逆転し女性の発生率が高くなる。

 

 

中高年女性の発生率が高い転倒

中でも中高年女性の発生率が高いのが、転倒。以下表は年齢別・男女別の転倒の発生件数で、女性は45歳以上で増え始め、男性より圧倒的に多い状態が70代まで続く。この状況を厚労省は重要課題に挙げ、2023年度の中心的取り組みとして、中高年女性の転倒対策を講じるとしている。

 

中高年女性の転倒、理由は?

厚労省によると、そもそも女性の転倒が多いのは、転倒リスクが高い社会福祉施設と小売業で働く中高年女性が増えているからだという。以下のグラフが示す通り、福祉と小売は全産業の中でも女性の就業者数が圧倒的に多い。小売と福祉の業界で働く女性の転倒対策は急務。予防対策商品・サービスの充実化が求められる。

【画像】男女別・産業別の就業者数(総務省「労働力調査2023年1月分」)よりウーマンズ作成

 

 

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