女性特有の病気・性・LGBT…不十分な親子間の会話、健康教育したくてもできない理由

フェムテックや性の多様性がオープンに語られるようになったことで、子どものヘルスリテラシーや健康教育のあり方について関心が高まっている。妊娠中絶薬、緊急避妊薬、性暴力、LGBTなど、SRHRにまつわるニュースを見聞きする機会が増えていることも、親が子どもの健康教育を意識するようになった理由だ。だが今の親たちも、SRHR領域の教育は十分に受けておらず、知識は不十分。各民間調査では、大多数の親が健康教育の必要性を感じているものの、自分自身に知識がないことや子どもへの教え方がわからないことがネックとなり、十分に教育や話ができていないことが明らかに。話ができているとしても、話せる内容に偏りがある様子も見えてきた。親自身が正しい健康知識を習得したり、親子間で正しいコミュニケーションができるツールや機会など、家庭内での健康教育をサポートする製品・サービスの需要が伸びそうだ。

生理・妊娠・更年期・女性の病気:話したことない、2〜6割

生理をはじめとした女性の健康情報サービスを提供するルナルナが、「女性の健康に関する母娘のコミュニケーション」について実態を調査(対象:10〜50代以上の女性2,367名,2023年2月)。娘がいる母親に、「生理」「妊娠・出産」「女性特有の病気」「更年期」の4項目についてそれぞれ話したことがあるか聞いたところ、母娘間で最も会話がされていたのは「生理」で61%。反対に、最も会話がされていないのは「更年期」だった。以下は、「話したことがある」と回答した母親の項目別の割合。

  • 生理…61.0%
  • 妊娠・出産…46.6%
  • 女性特有の病気…28.7%
  • 更年期…25.5%

各項目において、娘に話そうと思った理由についても聞いている。「自身の妊娠・出産の経験が役に立つと思った」「自身が女性特有の病気に罹患した」「自身が更年期または閉経を迎えた」と、母親自身の経験が話すきっかけになっていることがわかった。自分自身が経験しているため、症状や対策など具体的な話をしやすいのだろう。ただし裏を返せば、自身で経験していない病気については話ができない可能性が。特に女性特有の病気となると多岐にわたる上に経験者は限られるため、多様な健康リスクを娘に幅広く伝えられない母親が圧倒的に多いだろう。理想は、母親自身の経験の有無に関係なく、包括的に女性特有の病気やそのリスクについて伝えらえることだ。

【出典】ルナルナ

 

性教育:必要性を感じるができていない、7割

eラーニング事業のイー・ラーニング研究所(大阪・吹田)は、子どもがいる親を対象に性教育に関する意識調査を実施(対象:子どもを持つ親430人,2023年3月)。「子どもに、家庭で性教育の取り組みを行うべきだと思うか?」と聞いたところ、最多は「そう思うが、実施できていない」で7割に上った。

【出典】イー・ラーニング研究所

 

必要性を感じていても実施できていないのはなぜなのか?理由を尋ねたところ、「何をすべきか分からないから」「教える方法が分からないから」が上位に。教え方に迷う親の存在が浮かび上がった。

【出典】イー・ラーニング研究所

 

ちなみに、性教育を行うのはいつが適切だと考えているのか?大多数が「小学校以前」「小学校低学年・高学年」と回答。中学生になる前が適切であると考えている親が多い。幼児期から小学生までの娘・息子がいる親の性教育ニーズが、特に強そうだ。

【出典】イー・ラーニング研究所

 

 

性の多様性教育:9割が必要性を感じるも6割が話したことない

最後は、性の多様性について。サイバーエージェントの子会社でライフスタイルメディア事業のCyberOwl(東京・渋谷)は、小学生の保護者500人に「LGBT・性の多様性教育」について聞いた。「LGBT・性の多様性について小学生の子どもから質問をされたことがあるか?」聞いたところ、25.8%が「ある」と回答。ある小学1年生の保護者は、「男の子同士、女の子同士で結婚できないよね?」と質問されたという。小学5年生の保護者は、「LGBTのニュースを見ているときに、なぜこんなに大きく取り上げられているのか質問された」とのこと。LGBTや性の多様性に関心を向ける小学生は、一定数いるようだ。一方で、保護者の方から子どもに話したことがある人はどれくらいいるのか。「子どもにLGBT・性の多様性について話をしたことはあるか」という質問に、64%が「ない」と回答した。

【出典】CyberOwl

 

話したことがない理由で圧倒的に多かったのは、「年齢的に理解できないと思ったから」と「どのように説明すればいいかわからないから」で、それぞれ約4割に上った。

【出典】CyberOwl

 

小学生では年齢的に理解ができないから話はしない、とは考えつつも、教育の必要性を感じる保護者は多いようだ。「子どもにも性の多様性教育は必要だと思うか?」と尋ねたところ、「とてもそう思う」「そう思う」を合わせて、88.4%が必要性を感じていることがわかった。

【出典】CyberOwl

 

なぜ必要性を感じるのか?フリー回答では、子どもがスマホから間違った情報を得ることを懸念していたり、子どものうちに多様性を理解してほしいから、といった意見が寄せられた。

 

  • 「年齢が低いうちに学んだ方が、偏見などが無く素直に理解しそうだから。また、LGBTの子どもにとっても、早いうちから知っていれば、違和感や苦しみや悩みを軽減できそうだから」(小学5年生の保護者)
  • 「最近の子どもたちはスマホなどで、知らない間にいろいろなことを学んでくる。そこで知った情報は間違っていることもあるので、正確な情報を教えてあげるためにもしっかり学んだ方がいいと思う」(小学6年生の保護者)
  • 「自分たちが子どものころは、性教育も性自認や同性同士の交際なども、偏見や恥ずかしいものとしての印象が強く、肝心なところは教えてもらえなかった。大人に聞いても誤魔化されるか話を流され、怒られるなどといった対応。真摯に向き合ってほしかったと感じたし、知らないまま大人になることの不安も少なからずあったため」(小学5年生の保護者)
  • 「よくテレビのドキュメントで、『小さなころは誰にも言えず苦しんだ』と言っている方が多いので、小さいうちから受け入れられる社会になればいいと思います」(小学4年生の保護者)

 

では、保護者たちはどんな教育方法が良いと思うのか?最多は「学校の『性の多様性』を充実させる』」。学校での教育を求める親が多い結果に。次いで「自分自身が知識を深めて子どもに教える」。子どもに教える前にまずは自分自身が正しい知識を得たい、と考えているようだ。

【出典】CyberOwl

 

 

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