広島県の女性の健康寿命、なぜ全国下位?県が他県との比較調査で原因を明らかに
広島県は先月、県内の女性の「健康寿命」が全国下位となっている原因を探った調査の結果を公表した。2019年のデータでは、広島県の男性の健康寿命は72.71歳で全国19位と全国平均を上回っているのに対し、女性は74.59歳で全国43位と極めて低い。その原因を突き止めようと昨年、「女性の健康課題に関する健康意識調査」を実施。健康寿命の上位にいる他県と比較した調査結果からは、県内女性に特徴的に見られた健康課題が明らかとなった。
調査は昨年9月に、健康寿命が上位の2県と広島県の20〜59歳の女性10,424人を対象に実施(A県3,591人,B県3,202人,広島県3,631人)。アンケート調査と合わせ、一部の女性には個別インタビューも行った。アンケートで調査したのは、女性の健康度に特に影響を与えていると県が仮説を立てた以下5つの分野で、健康指標や、健康に対する知識・意識・行動を聞いた。
- 骨折の予防
- 休養とメンタルヘルス
- 適正体重の維持(やせ・肥満の予防)
- 運動習慣の定着
- 健診・検診の実施
インタビューでは、平日・休日の過ごし方や食事の写真などを事前に提出してもらい、その内容とアンケート回答をもとに以下について聴取した。
- 食事
- 家事・育児の両立、家事・育児サポート
- 悩み事とその解決方法
- 女性特有の体調不良と職場の理解
- 仕事
- 人間関係
- 今の健康状態に対する対処
- 心身の悩みへの望ましい対応方法
主な調査結果は次の通り。他県との比較により、広島県女性の特徴が明らかになった。
- 「健康上の問題で日常生活に影響あり(=不健康)」と回答した女性は、広島県が最も多く22.9%(A県は22.7%、B県は22.3%)
- 広島県の中では、「健康上の問題で日常生活に影響がある(=不健康)」と回答した女性は、50代が最も多く26.0%(40代は25.1%,30代は19.4%,20代は21.7%)
- 広島県は「1日8時間以上座って過ごす女性」が他県よりも有意に多く19.8%(A県は18.7%,B県は16.1%)
- 広島県は他県に比べて、育児・介護のために睡眠時間を確保できない人が多い。インタビューでは、自分が専業主婦や時短勤務の場合、夫と平等に分担することに負い目を感じて自分が背負い込む傾向が見受けられた
- 広島県は他県に比べて、体型維持のために重視していることで「見た目が細いこと」と回答する割合が高い
- 広島県は他県に比べて、生活習慣病のリスクを高める量を飲酒する女性の割合が高い。インタビューで話を聞いたところ、習慣的に飲酒をする女性は自身の親も飲酒の習慣があるようだった
- 女性特有の健康課題についての職場での理解について、症状がある女性のうち4割以上が協力や理解を得られていないと回答しており、他県に比べて高い
- 広島県は他県に比べて、健康上の問題で日常生活に影響が出ていても医療機関の受診をしない女性の割合が高い
以上のファインディングスから広島県は、広島県女性の健康寿命を伸ばすキーワードとして、休養、メンタルヘルス、運動習慣の定着などを挙げ、女性特有の課題についてはリテラシーの不足と周囲の理解不足を指摘した。現状は問題はないが生活習慣に課題のある不健康予備軍(若年女性や、同居家族がおらず制約のない一人暮らしをしていて、健康を差し迫った課題と捉えずに他のことを優先している女性)については、どのようにアプローチをして生活習慣を改善してもらうかが、今後の施策を講ずる上での課題になるとした。また調査では、所得が少ない層は多い層に比べて不健康の割合が高かったり、自由に使える時間が減るほど精神的な健康状態が悪化する傾向が見られたことから、経済的・時間的・社会的なリソースの不足がもたらす健康格差の解消に向けた優先的な支援の必要性についても言及した。
調査を通じ広島県は、「分析結果に基づき、広島県の健康寿命の延伸に繋がる取組を行っていく」としている。
女性ヘルスケア市場の最新動向2024年度版
ヘルスケア領域の女性トレンドと業界トレンドを、今年度も徹底分析!最新動向を全103ページのレポート「女性ヘルスケア白書 市場動向予測2024年度版 〜健康トレンド・業界動向・女性ニーズ〜」にまとめています。前年度は2,300社にご利用いただいた、毎年人気のアニュアルレポート。ぜひご活用ください!
【編集部おすすめ記事】
■女性の健康寿命は75.45歳へ延伸、日常生活に制限がある期間は11.63年へ短縮
■2025年消費者トレンドは「健康寿命へのこだわり」受身型から予防・専門的へ
■抗老化市場は6兆円へ、健康寿命延伸の研究最前線
■高齢化率ランキング、都道府県別
■人気ヘルスケア商品分析で明らかに「女性の健康消費を促すマーケティング」