メンタルヘルス領域のデジタルヘルス、ガイドライン公開 AMED
AMEDは先月、「デジタルメンタルヘルスを用いた予防介入指針」を公開した。デジタルヘルステクノロジー(DHT)を用いたメンタルヘルス対策の有用性や、今後の普及に向けた課題をまとめたガイドラインで、DHTの導入を検討している企業や健保組合、DHTを開発するサービス事業者、ユーザーとなる労働者などに向けて作成した。
メンタルヘルス対策にDHTを用いる有用性
ガイドラインの前半では、メンタルヘルス対策にDHTを用いる有用性について、システマティックレビューを実施してエビデンスを整理。DHTの導入を検討している企業やサービス開発事業者などが抱える疑問をヘルスケアクエスチョンとして設定し、それに対する回答を示す形式で、併せてDHTの利用を推奨できるレベルを示している。
例えば、「一般労働者のメンタルヘルス疾患の予防に、マインドフルネスのデジタルヘルスアプリのアプローチは有用か?」というヘルスケアクエスチョンについては、システマティックレビューを実施したところ、DHTを用いたマインドフルネスが、労働者の抑うつ・不安・主観的ストレスを有意に改善し、ウェルビーイングを向上させることが認められたことから、「メンタルヘルス不調の一次予防対策として、一般労働者に対してDHTを用いたマインドフルネスによる介入を行うことを推奨する」としている。他、以下のヘルスケアクエスチョンに対して評価をまとめている。
- 一般労働者のメンタルヘルス疾患の予防に、認知行動療法のデジタルヘルスアプリによるアプローチは有用か?
- 一般労働者のメンタルヘルス疾患の予防に、ストレスマネジメントのデジタルヘルスアプリによるアプローチは有用か?
- 歩行パラメーター等を利用した運動介入は、一般労働者のメンタルヘルス疾患の発症予防に有用か?
- 心拍などのバイオ・フィードバックを利用した DHT 介入は、労働者のメンタルヘルス疾患の発症予防に有用か?
デジタルヘルステクノロジーの普及に向けた課題
ガイドライン後半では、メンタルヘルス領域におけるDHTの開発・提供に向けて今後の深堀りが必要とされる以下14の課題を掲載。信頼性の高いメンタルヘルス領域のDHT普及に向け、今後、各事業者や関連団体が認識・実行すべき方向性がわかる。
- DHTアドヒアランス調査の必要性
- 技術革新に対応するためのバックキャスティング型思考による調査研究デザイン・対策立案の必要性
- BtoBtoCスタイルに応じたサービス・製品開発の必要性
- メンタルヘルス領域におけるDHT技術分類・技術動向、メンタルヘルス介入技法の定期的な調査の必要性
- メンタルヘルス領域におけるDHTを用いたさらなる研究の必要性
- 組織介入型デジタルメンタルヘルスプログラム開発の必要性
- デジタルメンタルヘルスサービス開発に際し、AI 運用ガイドラインの整備とエビデンス蓄積の必要性
- 現状の産業保健制度の中にデジタルメンタルヘルスをどのように普及実装させていくのか、パートナーシップ連携による基盤整備の必要性
- 実際に国内で用いられているDHTの仕様調査などの必要性
- 長期的な予防効果に関する検証の必要性
- DHTを導入することによる経済的な効果(費用対投資効果)検証の必要性
- 提供された DHT 介入の結果、どのようにユーザーが知覚・受容し、実行しているか(例えば、不安な気持ちを助長していないか、など)を検証できる仕組みの必要性
- 生理計測の限界および信頼性・妥当性情報の担保方法の検証
- デジタルヘルステクノロジーの個人情報に関する適切な取り扱いに関する学会方針の整備
ガイドライン作成の背景
同ガイドラインは、エビデンスに基づいたヘルスケアサービスの社会実装促進に向け、AMEDが令和4年から始めている「予防・健康づくりの社会実装に向けた研究開発基盤整備事業」によるもので、日本産業衛生学会を中心に、臨床医学、社会医学、工学系の関連8学会が連携してまとめた。
世界の約3億人にうつ症状があると言われる中、スマホアプリやデジタルヘルステクノロジーを使って、予防・維持向上を目指す取り組みが広がっているものの、これらを活用する際に参考になるエビデンスを整理した指針が未整備だったことから、作成に至った。
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