周産期の母親のストレスが、子どものADHD発症に関与 国立精神・神経医療研究センター
国立精神・神経医療研究センターと浜松医科大学の研究グループは、周産期の母親の心理的ストレスが、胎児の血中亜鉛レベルの低下を引き起こし、その結果として炎症性サイトカインであるIL-6が上昇し、小児期のADHD(注意欠如・多動症)症状の発現に関与している可能性を明らかにした。成果は今年8月に、国際学術誌「npj Mental Health Research」に掲載された。
ADHDは、約5%の子どもに見られる神経発達症で、注意力の持続、多動や衝動のコントロールが難しいといった特徴がある。遺伝的要因が大きい一方で、出生前後の環境も関与することが知られている。これまで、未治療のADHD児の血液中では、炎症性サイトカインであるIL-6の上昇が報告され、また、免疫調整や脳機能の発達に関与する亜鉛の欠乏がIL-6の発現を促進すること、また、周産期の母親のうつ状態が、胎児への栄養供給(特に亜鉛)に影響する可能性が指摘されていた。だが、これらの観察研究の多くは因果関係を示すものではなかった。
そこで研究グループは、出生コホートによる長期的な追跡データ解析、血液マーカーの解析、国際共同データを用いたゲノム解析を統合して検討を行った。その結果、周産期の母親の心理的ストレスが高いと、出生時の亜鉛が低下しIL-6が上昇することを示唆するデータが得られた。また、出生時のIL-6濃度は8〜9歳時点でのADHD症状の強さと関連していることも明らかになった。
成果を踏まえ研究グループは、従来、個別に扱われがちだった「周産期メンタルヘルス」と「子どもの神経発達症の発症リスク」を、栄養・炎症・遺伝という統合的な観点で結びつけた初の大規模研究だとして、「母子の健康を守る包括的な支援体制の構築へと繋がることを期待したい」とコメントしている。
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