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女性ヘルスケア市場2025、総決算!今年1年の注目ニュースを振り返り

女性ヘルスケア市場を動かした2025年の主要ニュースを、総ざらい。今年1月から12月まで、月別に一挙振り返り!

2025年1月

1月の注目ニュースは、2025年度に始まる新たな保育政策。少子化や待機児童の大幅な減少を踏まえ、これまでの待機児童対策を中心とした保育の「量」拡大から、「質」の確保・充実へと、保育政策の軸が大きく転換されました。それに伴い保育所におけるインクルージョン推進も掲げられ、障害児・医療的ケア児の受け入れ体制の強化や、病児保育の充実が盛り込まれました。これまでにも医療的ケア児や病児保育の支援は官民で進められてきましたが、保育の”質”を重視する政策への転換を機に、社会課題としての認識が広まり、乳幼児の健康サポート需要にも拡大が見られそうです。ベビーテックの普及や保育DXの進展にも要注目。

最も読まれたのは、フェムテック・フェムケア市場の今後のポテンシャルを予測した記事。医療・ヘルスケアに特化した市場調査会社インテージヘルスケアによる分析で、予測は25年間にわたる女性生活者調査がもとになっています。幻滅期に入ったフェム市場で今後求められるのは、”話題性”よりも”実用性”。それを前提に、どんな視点で商機を見つければ良いのか?そのヒントを掴める内容です。

 

2025年2月

2月に最も読まれたのは、仕事と介護の両立支援に関する概要をまとめた記事。4月から全事業者に両立支援の整備が義務付けられることから、社内での取り組みはもちろん、ビジネスケアラーを支援するソリューション開発の視点からも、各社で関心が高まっているようです。

2月の注目キーワードは、オープンイノベーション(OI)。今月は、女性ヘルスケア業界のOIに関するニュースが相次ぎました。昨年10月に開所した女性の健康総合センターは、センター内に設置したオープンイノベーションセンターの取組みを紹介するシンポジウムを開催。26日には、女性の健康総合センターと当メディア運営のウーマンズが合同で、女性ヘルスケア業界におけるOI推進のコツや最新動向について講演しました。内閣府主催の「日本オープンイノベーション大賞」では、国立循環器病研究センターとカナデビア(旧・日立造船)の協働により開発を実現した、胎児不整脈に焦点を当てた世界初の診断支援システムが受賞を果たしました。

OIはこれまで一部の企業に限られていましたが、イノベーション創出の競争激化や市場のコモディティ化、専門技術の多様化や深化を背景に、業種問わず多くの企業の間で関心が急速に高まっています。実際に、前述した講演では「早速OIに取り組んでみたい」「最近、自社だけでは頭打ちを感じている。打開策になると思った」といった感想・意見が聴講者から聞かれました。健康・美容業界でのOIの事例増は、日々のリサーチや取材を通じて編集部も実感しています。各社の取り組み事例は、引き続きキャッチアップして記事で紹介していきます。

 

2025年3月

3月に最も読まれた記事は、パナソニックのフェムテック事業参入。同社は、衣服内温度の計測により月経周期を把握できるウェアラブルデバイスの開発を進めており、実用化は2025年中を目指しているとのこと。大手によるフェムテック分野への参入は後発となる中、業界内でのインパクトは大。ウーマンズラボ読者からは、「パナソニックはすでに参入していると思った」「美容家電に強い企業だから、女性のニーズに応える力やマーケティングも上手いのだろう」といった驚きや期待の声と共に、「他社のフェムテックと同じ課題にぶつるかるのでは?」「妊活?生理?市場でどのポジションを狙うのか?」「勝ち筋は?」といった、同社の戦略に関心を寄せる声も編集部に多数寄せられました。女性特有の健康課題に対する生活者のアクションが依然として限定的である中、後発だからこそ見えている市場の課題に、同社がどう向き合い、どんな戦略で販促を展開するのか、今後の動向に注目が集まります。

3月の注目ニュースは、AMEDが公開した「働く女性の健康指針」。職場の女性の健康づくりが各社で活発化しているものの、「女性従業員の健康のための取り組みとは、具体的に何を指すのか」といった明確な共通指針がなく、また、デジタルデバイスを活用した取り組みが各職場で広がる一方で有効性や信頼性が不明なものも多いことから、作成に至ったものです。女性従業員がいる事業主や、デジタルヘルスサービスを開発する事業者などの閲覧を想定しており、今後、業界のスタンダードとして広がりを見せそうです。

 

2025年4月

4月の注目ニュースは、13日に開幕した大阪・関西万博。ウーマンズラボでは、万博の目玉の一つ「大阪ヘルスケアパビリオン」にフォーカス。未来の健康・医療を体験できるパビリオンで、中でも注目技術を展示する企業を取り上げました。未来は、まさしく”ドラえもん”の世界です。

最も読まれたのは、異業種による化粧品事業への参入動向と成功事例を紹介した、OEM企業ホシケミカルズによる寄稿記事。ここ5年ほどで顕著に活発化しているという、異業種による化粧品開発。同社が保有する顧客データを分析したところ、異業種の内訳トップに並んだ一つはマーケティング支援会社というから驚きです。どんな異業種企業が何を強みに、どんな戦略で参入し成功しているのか?新規事業立ち上げ時の考え方、という視点でも参考になります。

 

2025年5月

5月の注目ニュースは、国が初めてまとめた、プレコンセプションケアの普及に向けた5ヵ年計画。プレコン普及に向けた啓発を行う人材として、5万人の「プレコンサポーター」を養成するなどして、若い世代のプレコンケアの認知度を現状の10%以下から5年後に80%へ、プレコンの相談窓口の認知度については、100%を目指しています。

フェムテック・フェムケアの認知度や女性の健康課題に関する知識普及が、この5年ほどで限定的だった事を踏まえると、現状の10%以下からわずか5年でどこまで伸ばせるのかは未知数ですが、プレコンサポーターは企業・自治体・教育機関が一斉に担うことから、ようやく、プレコンの広がりが加速するかもしれません。加えて、プレコンケアの関連製品・サービスの活況にも期待が寄せられます。

最も読まれたのは、富士製薬工業が取り組む「フィメイル・セントリシティ(女性患者中心)」を紹介した記事。都内で開催された製薬業界向けのカンファレンス「Ubie Pharma Summit 2025」では、製薬業界が目指す「ペイシェント・セントリシティ」をテーマに議論が展開され、その中で同社の森田社長は、「“ペイシェント・セントリシティ(患者中心)”というより、“フィメイル・セントリシティ(女性患者中心)”。女性のアンメットニーズを捉えていきたい」と、とても興味深い表現を用いました。本メディアの記者がその意味や具体的な取り組みを尋ねたところ、女性患者中心を実現するための重要な”大前提”を指摘しました。業界問わず、参考になる視点です。

 

2025年6月

6月の注目ニュースは、4日に成立した「改正女性活躍推進法」。女性活躍推進法は、10年間の時限立法で’26年3月末が期限となっていましたが、成果が十分ではないことから、さらに10年の期間が設けられました。注目ポイントは「女性特有の健康課題への配慮」が新たに盛り込まれたこと。心身の健康状況は女性の働きやすさや仕事のパフォーマンスを大きく左右することから、改正にあたっては、「女性活躍」と「女性特有の健康課題」の関連を含めた議論が行われてきました。企業に課せられる具体的な行動計画は今後策定される予定ですが、女性の「健康」と「活躍」を一体で捉えた本気の両輪支援は、いよいよ待ったなしの状況に。女性従業員の健康支援が、各社で急加速しそうです。

最も読まれたのは、パナソニック初のフェムテック「RizMo(リズモ)」のマーケティング戦略を紹介した記事「パナソニックが『フェムテック』の表現を避けた狙いは? 生理系デバイスを美容事業に位置付け本格展開」。同社がフェムテック市場への新規参入を発表した際も、記事は月間トップのアクセスとなりましたが、それを上回る反響でした。フェムテックを美容事業に位置づけた上で、”インナーケア製品”として上市した戦略は、市場の課題を捉えている後発参入者ならでは。読者からも「そう来たか!」と、膝を打つ声が多く寄せられました。実際にどこまでユーザーを伸ばせるか?今後の行方に注目が集まります。

 

2025年7月

7月は、ヘルスケア市場の構造変化を改めて突きつけられるニュースが相次ぎました。人口減少社会に歯止めはかからず、昨年の出生数は初の70万人割れで過去最少の68万人に。一方で、65歳以上が総人口に占める割合は29.3%に達し、高齢化率は過去最多を更新。高齢女性に焦点を当てると、高齢女性の単独世帯は過去最多を更新し、577万に達しました(全国の世帯総数は5482.5万)。1986年は100万世帯ほどだったので、わずか40年で5倍以上に増えたことになります。子育て世帯で「仕事あり」の母親が初めて8割を越えたというニュースも、話題になりました。

「子どもの減少」「働く母親の増加」「高齢女性の増加」といった、近年顕著化する人口構造の変化を受け、ヘルスケア事業者の関心も”中高年層や働き世代の健康課題”に強く向いています。ある企業の社長は、「人口減少に抗うことをやめ、人口構造の変化に適応するビジネスにうまくスライドさせていくことに決めた」と語っていました。

最も読まれたのは、ヘルスケアに特化した業界人の勉強会「ウーマンズ・ミートアップ」をお知らせした記事でした。「レッドオーシャン化が進む女性ヘルスケア市場で生まれる新たな勝ちパターン」をテーマに、今月29日に開催。市場のコモディティ化に加え異業種参入組との競争も年々激化する中で、「マーケティングの転換が急務である」との課題意識から、当日ウーマンズからは、昨今の業界トレンドを踏まえた新たな勝ちパターンを示しました。ヘルスケア事業者がマーケティングの転換の必要性を喫緊の課題と捉える動きは特にここ1〜2年で顕著化している印象で、実際に読者からもそう言った声が頻繁に聞かれるようになりました。なお、今回の開催の中では触れませんでしたが、「オンライン上のマーケティングにおいて、AIに選ばれる設計ができているか否か?」も、今後の新たな勝ちパターンとなることは、ここで補記しておきます。ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

 

2025年8月

8月の注目ニュースは、研究や工学分野における性差考慮の実態を明らかにした、AMEDによる調査報告書。性差考慮が世界的に推奨される中、世界の主要ジャーナルや研究助成機関、研究者を対象に調査したもので、性差考慮の必要性を理解している研究者は、海外91%に対し日本は77%。研究計画の策定から論文の執筆・投稿まで、実際に性差を考慮している研究者の割合も日本の方が低く、海外80%に対し国内は54%でした。臨床・非臨床などの研究区分や、医薬品・医療機器など研究開発分野によって理解度や状況にばらつきが見られたのも、日本において顕著でした。研究助成機関や主要ジャーナルが性差考慮を審査基準に設けるといった動きからも、性差に基づいた研究や製品・サービス開発が世界標準となる未来を想像できますが、現状のままでは日本が世界的な潮流から後れを取る可能性があり、ヘルスケア領域におけるグローバル市場でのプレゼンス低下を招きかねません。研究者や研究部署だけでなく、開発や販促部署など、あらゆる部署の人に一読をおすすめしたい報告書です。

もう一つ注目したいのは、子どものヘルスケア市場のポテンシャルを感じさせる3つの調査結果を紹介した記事。少子高齢化に伴う消費人口減少への対応や、将来の消費者層としてブランド接点を築く狙いから、各業界がα世代に注目していますが、健康・美容業界も然り。親世代に定着している健康志向も相まって、「子の健康づくり」の需要が高まっています。

最も読まれた記事は、「フェムケアゾーンの注目商品3選、10万人が来場したドラッグストアショー」。商品の”新規性”ではなく、女性のヘルスケアを実直に推進する工夫が見られた3社のブースを取材しました。

 

2025年9月

9月の注目ニュースかつ最も読まれたのは、経済産業省の’26年度予算の概算要求。5年間に渡り経産省が実施してきたフェムテック実証事業が要求に盛り込まれなかったことは、フェムテックのトレンドが次のフェーズに移行したことを示す、象徴的なニュースと言えます。経産省への取材で担当者は、フェムテックの認知向上や効果検証において「一定の成果が得られたため、事業を終了した」と話しています。一方で、ヘルスケア業界全体で取り組みが強化されているエビデンスの構築や整備は、フェムテックにおいても同様に課題が残されていると指摘。今後は、実証事業の成果を横展開しながら、異なる形で市場の活性化を図るとしています。

フェムテックの市場が形成された2020年代前半は、市場への啓発、資金調達、公的支援事業への採択、各所で開催されるイベントへの出展・登壇などを起点にしたプロモーションが、自社をアピールする王道の有効策となっていましたが、ここ最近の「フェムテック」の吸引力低下に加え、旗艦的存在とも言える経産省の実証事業が終了することで、フェムテック分野のプロダクトは今後、その本質がより強く問われることになりそうです。市場のニーズを的確に捉えた価値の提供、営業力・販売力、エビデンスの提示、強いビジネスモデルなど、プロダクト本体の強さやマーケティング力を備えた企業が、2020年代後半に伸長すると予測されます。

フェムテック実証事業は終了しますが、女性の健康に取り組む事業主の支援や、自治体・医療機関・薬局・企業など官民による女性の健康支援の体制構築、周産期医療体制の確保、性差に基づく病態の解明に向けた研究、卵子凍結モデル事業、プレコンセプションケアの普及推進など、女性の健康に焦点を当てた項目は、こども家庭庁と厚労省の概算要求に多数盛り込まれました。2026年度も引き続き、女性の健康を支援する動きが産官学で拡大する見込みです。

 

2025年10月

10月は、女性のSRHRが大きく前進したニュースが相次ぎました。緊急避妊薬の市販化が初めて認められ、今後は、望まない妊娠を防ぎたい女性が、医師の診断や処方箋なく購入できるようになります。これに伴いウエルシア薬局では、販売体制の整備を開始。発売日はまだ未定ですが、全国の薬剤師約7,200人が年内に指定研修を受講すると発表しました。東京都が新たに開始したのは、無痛分娩の助成。無痛分娩を希望する女性は多いものの、その多くが諦めている実態を受け実施するもので、出産方法の選択肢を広げることで少子化対策につなげたい狙いがあります。都道府県で初めての取り組みとして話題となりました。いずれの動きも、女性の健康をめぐる社会的関心の高まりが大きく後押しした、象徴的な成果と言えます。

最も読まれた記事は、線香メーカーのちょっと意外な開発ストーリー。新しい瞑想の形「瞑想香浴」をコンセプトにした入浴剤を発売したと知り、編集部が取材を申し込んだところ、「実はフェムテック商材を開発するつもりだったんです」。フェムテック商材の予定が、なぜ、入浴剤の開発に?その裏話をまとめたもので、読者の反響が大きい記事でした。

 

2025年11月

11月に公開した記事を一挙振り返り。今月の注目ニュースは、政府が21日に閣議決定した総合経済対策。強い経済の実現に向けた21兆円規模の対策で、ヘルスケア分野についても多数の施策が明記されました。注目は「攻めの予防医療」。健康寿命の延伸のみならず、誰もが元気に活躍できる社会の実現に向け掲げられたもので、その中で「性差由来の健康課題への対応の普及」も明記されました。性差由来の健康課題は高市首相が所信表明でも触れており、「対応を加速する」としています。女性特有・男性特有それぞれの健康課題の社会的認知が着実に進展する中、単なる“課題への対応”から、“社会に定着させるための継続的な取り組み”へと軸足が移りました。記事では、経済対策のうちヘルスケア分野の方針・施策の要点をまとめています。

今月最も読まれたのは、アインHD、日本調剤、クオールHDなど、保険薬局チェーン上位10社の事業実績と取り組みをまとめた記事。保険薬局業界は構造的に利益を出しづらい一方で、リテール事業やPB商品開発、薬局業務のDX推などで、新たな成長源を確保する動きが活発化しています。

 

2025年12月

12月は、2025年のトレンド総括や2026年のトレンド予測発表が、各所から相次ぎました。昨年に続き今年も、目立ったキーワードは「四季の二季化」「夏の長期化」や「物価高」。一方で、厳しい環境下でも快適に心地良く過ごそうと、自分の心身をいたわる「ご自愛」や「ウェルビーイング」の精神を反映した消費意識や行動も、2025年の女性市場を象徴する動きでした。「AI」も各所の頻出ワード。職域や家庭内で急速に広がるAIの活用が、人々の暮らしや健康行動、そして消費行動に変化をもたらすと各社が予測しています。

誰にとってもAIが身近な存在となることで、ヘルスケアビジネスにおいても、これまでの理論や知見が通用しなくなる可能性があります。気候変動による環境変化やAIなどの技術革新により、女性市場ではどのようなヘルスケアソリューションが求められ、どのようにマーケティングの最適化が図られるのか。2026年も引き続きウーマンズラボが業界をウォッチして、皆様のビジネスに役立つ情報をお届けしていきます。

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