国内と世界で異なる、美容医療ニーズ

世界中で流行している美容医療。日本国内における美容医療の市場規模も年々増加しており、この10年で1,000億円近く増加して3,200〜3,700億円超と言われている。日本国内における市場拡大の理由には、従来の外科手術の他に、手術を行わない注射や照射マシンの普及によるユーザー数の増加が大きい。

今年の2月に、日本美容外科学会(JSAPS)は、日本美容外科学会(JSAS)および日本美容皮膚科学会(JSAD)の協力のもと、2017年の1月1日から12月31日までに行われた日本国内3,656院で行われた美容医療の施術数を発表した。

発表によれば、調査によって確認された全美容施術の総数は1,603,318件であり、そのうち外科的な手術を伴う施術が278,507件で、一方で手術を伴わない施術は1,324,811件に達した。後者はこの10年で大きく拡大した比較的ライトなユーザー層であり、顔への注射、レーザー、光治療、医療脱毛などがメインになっている。

利用数ベスト3位までは以下の通り。

  • 美容外科手術
    1位:重瞼術
    2位:スレッドリフト
    3位:隆鼻術以外の鼻形成
  • 手術以外の美容医療
    1位:脱毛
    2位:ボトックス
    3位:ヒアルロン酸

美容外科手術の1位「重瞼術」は全体の4割以上を占めるいわゆる二重まぶたを形成する治療だ。美容医療を受けたい人が一番はじめに考える代表的な治療のひとつで、利用者数の拡大を受けて正比例的に総数も増えている。2位のスレッドリフトは、昔から行われていた切開を伴うフェイスリフト手術に代わり、近年台頭してきた糸の挿入によって顔の肌を内側から引き上げる治療法で、今や国内でフェイスリフトを受けたい人の90%以上がこちらを選択するという。3位は本格的に鼻を形成する隆鼻術ではない、あぐら鼻、だんご鼻、鼻の穴の形などを修正する手術だ。以上のように、手術であっても比較的ライトな方法を選択するユーザー層の増加が目立つ。

一方、手術を伴わない施術の1位は、定番の美容医療脱毛である。美容クリニック同士はもとより他業種との市場競争もあり、ここ十年で価格がかなり下がったことも、ユーザー数の増加を手伝うことになっている。2位のボトックス、3位のヒアルロン酸は、顔に注射を打って、ちょっとしたシワを目立たなくし、ちょっとだけ気に入らない部分をお直しするなど、いわゆる「プチ整形」といわれる施術だ。どちらも時間の経過と共にもとに戻るため、やはり比較的気軽に受けられる美容医療ともいえるだろう。また、ベスト3には入らなかったがレーザーや光の照射でシミやイボを治療するマシン系の治療もヒアルロン酸と近い水準で利用者が増大していた。

ライトユーザー層の急速な拡大によって、日本国内における美容医療ユーザーの内訳は、世界的にみて少し風変わりなものになっているようだ。

世界的には 美容医療全体における非手術施術の割合は全体の約6割となっているが、日本国内ではなんと9割近くの利用者が、手術なしの美容医療を受けている。数字にすると世界統計で非手術施術の約10%を日本人が占めているということになるらしい(外科手術の世界統計での内訳はわずか2.3%)。

また、日本人の大きな特徴として顔の施術を特に好む、ということがあげられている。世界全体の治療のうち、顔の美容に関する施術は4割に過ぎないが、日本国内ではなんと9割以上が顔の治療なのだという。

特に顔にコンプレックスを持っているが、治療はできるだけライトな治療で。日本国内の美容医療ユーザーのメインの姿が明らかになってきた。

さらにライトユーザーが増えていくのか、あるいは増えたユーザー層がコアなユーザーへと変わっていくのか、今後のユーザー総数の変化や内訳の推移にも注目していきたい。

【執筆】株式会社alluxe

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