健康維持に必要な運動量は? ”運動不足”は死亡リスク(2/3)

健康維持に運動が欠かせない理由は、死亡リスク

運動不足は健康を害するだけでなく、死亡リスクを高める可能性もある。運動不足の危険性は世界中で指摘されており、WHOは「健康のための身体活動に関する国際勧告」を発表した。しかし国内における改善はまだ見込まれず、特に若い世代や女性の運動不足が問題視されている。

身体活動不足は“死亡の危険因子”

身体活動とは“生活活動+運動”のこと。生活活動は日常生活における労働や家事、通勤・通学などの身体活動を意味しており、日常的に起こる身体の動きを指している。それに対して運動は、スポーツなど体力の維持・向上を目的として計画的・意図的に実施される継続性のある身体活動のこと。

WHOの発表によると、“身体活動”の不足は死亡の危険因子の第4位に位置付けられている。これは世界的な問題となっており、国内外で身体活動不足を克服するための取り組みが行われている。

●死亡に繋がる危険因子

1位:高血圧(13%)
2位:喫煙(9%)
3位:高血糖(6%)
4位:身体活動不足(6%)

WHOは2010年に「健康のための身体活動に関する国際勧告」を発表。5~17歳・18~64歳・65歳以上に分けた各年齢群に対し、身体活動の基準を示している。これを受けて国内でも2013年に厚生労働省が「健康づくりのための身体活動基準」を発表。WHOの基準を元に18歳未満・18歳~65歳・65歳以上に分けて、身体活動と運動それぞれの目安を設けている。

運動不足は若い世代・女性で顕著、年代別の”運動をしない理由”とは?

厚生労働省が調査した「平成30年 国民健康・栄養調査」の結果によると、日本における運動習慣のある者(※)の割合は、男性が31.8%、女性が25.5%。男性よりも女性の割合が低く、特に若い世代での運動不足が顕著に見られた。(※)「運動習慣のある者」とは、1回 30 分以上の運動を週2回以上実施し、1年以上継続している者のこと

この理由としては、男女で異なる運動・スポーツへの意識差や、女性の方が仕事・家事・育児に時間を追われ時間にゆとりがないことが挙げられる。スポーツ庁による「スポーツの実施状況等に関する世論調査」の結果を見ると、運動・スポーツをしない理由に、男女別・年代別に特徴があることがわかる。若い世代や女性は“運動をしたくてもできない状況”にあることも運動習慣を身に付けられない一因となっている。各年代別の特徴は以下。

<全年代>

全年代で、男性よりも女性の方が「運動・スポーツが嫌いだから」と回答する人が多い。

<18歳・19歳>

「運動・スポーツ以上に大切なことがあるから(20.5%)」「場所や施設がないから(27.3%)」「お金に余裕がないから(17.1%)」「仲間がいないから(20.0%)」と回答する女性が多く、これらはいずれも「運動・スポーツが嫌いだから(16.6%)」以上に多い結果となった。必ずしも運動嫌いだけが運動不足に繋がっている訳ではないことがわかる。

<20代〜30代>

「仕事や家事が忙しいから(20代:64.4%,30代:64.5%)」「子どもに手がかかるから(20代:25.8%,30代:44.4%)」が、他年代の女性と比べて圧倒的に多い。育児に最も時間を取られる年代であることが背景にあるが、一方で同じ年代の男性を見てみると、「子どもに手がかかるから(20代:11.7%,30代:28.0%)」を理由に挙げている人は女性ほど多くはない。一般的に育児は女性側の負担が大きく、それが反映された結果と言える。

<40代>

「お金に余裕がないから(24.2%)」が全年代の女性の中で最も多く、男性にも同じ特徴が見られる。40代は、教育費・住宅ローン・自動車ローンと、大きな出費がかさむ時期にあたることが背景にあると言える。なお、「仕事・家事が忙しいから」「面倒くさいから」を理由に運動をしない人は、40代以降で徐々に減っていく。

<50代>

「仕事・家事が忙しいから」「面倒くさいから」を理由に挙げる人は、若い世代と比べて少ない。一方で、50代以降から「年をとったから」を理由にする人が多くなる。

<60代・70代>

「仕事・家事が忙しいから」「面倒くさいから」を理由に挙げる人は、50代よりもさらに少なくなる。子どもが独立し、さらに退職や働き方が変わることで時間にゆとりができること、また、年齢とともに健康意識が高まることが理由として挙げられるだろう。

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