カラーセラピーとは?色の効果とマーケティングへの活用法

人は身近なところで無意識のうちに色の持つイメージから影響を受けているもの。そんな色の効果を使って心身を癒す「カラーセラピー」をマーケティングに応用する「カラーマーケティング」は、理論よりも感情で行動を決定しやすい女性客へのアプローチに役立つ。

カラーセラピーの基礎知識

カラーセラピーの意味

カラーセラピーとは、色の効力によって心身を癒すことをいい、色彩療法とも呼ばれる。カウンセリングで活用されており、たとえば心理的なストレスを抱えている人にストレス軽減につながるカラーのアドバイスを行ったり、直感的に好きな色を選んでもらうことでその人のおよその性格を診断したり、潜在意識を発見することができる。

近年では特に、心の治療、問題の解決が注目され、カウンセリングも病気に携わる分野と、病気以外の問題解決に携わる分野がある。臨床心理学は、精神医学と重複して病的な状態を扱う心理学とされてきたが、昨今は病気か病気ではないかの判断がますます難しくなっているのも事実だ。これらの領域で色彩は、治療や援助に必要な情報収集のツールとして、また治療そのものの技術、さらに心の健康を維持するための方法として、役立っている。(引用:「色彩心理のすべてがわかる本(著:心理カウンセラー山脇恵子)」p.34

 

インドの伝承医学であるアーユルヴェーダにも、カラーセラピーの考え方がある。

アーユルヴェーダでは、色彩には私たちの健康を増進する力があると認められています。色彩は、心理的な作用だけでなく、内臓などのさまざまな身体組織への影響力を持つといわれ、その結果として、表情の豊かさや美肌、血行・消化・精力の促進、疲労回復、心のバランスを整えるなどの効果が期待できるといわれているのです。アーユルヴェーダにおけるカラーセラピーの特徴として、「ドーシャ」という3つの体質のタイプ(ヴァータ、ピッタ、カパ)のバランスを整える効果があることが挙げられます。(中略)自分のドーシャに合った色を活用することで、乱れがちなドーシャの性質を良きバランスへと鎮静させたり、促進させることができるといわれているのです。(引用:「色で心身のバランスを整えるアーユルヴェーダ式カラーセラピー」Rhythm(運営:オムロンヘルスケア)

 

なお、カラーセラピーを行う人をカラーセラピストと言い、色を通じて相談者の心身のバランスを整える。カラーセラピストには民間資格があり、たとえば、通信教育のユーキャンは2018年8月に「カラーセラピスト講座」を新規開講しており、およそ4ヵ月で資格を取得できる。ユーキャンのようなテキスト中心の通信教育の他、スクールに通って受講する方法もある。人間の心理を深く理解しなければならないため、経験が求められる仕事でもある。

 

カラーセラピーに期待される効果

日常生活の中で意識的に色を取り入れることで、簡単にカラーセラピーの効果を得られる。以下は一例。

  • 落ち込んでいるときや疲れているときは意識的に明るい色を視界に入れるようにし、気分を高めたり癒したりする
    (例)ネイルを赤やオレンジなど女子力があがるカラーにする
    (例)スマホの待ち受け画面を、真っ青な南国の海の写真にする
  • 演出したいイメージの色をファッションに取り入れることで、人に与える印象を操作する
    (例)外交的に強く人と接したいとき:赤
    (例)かわいらしくて優しい雰囲気を出したいとき:ピンク
    (例)強くて知的でカッコいい印象にしたいとき:黒
    (例)爽やかで落ち着いた雰囲気を醸し出したいとき:青
  • 室内にリラックス効果のある色を取り入れて、気分を落ち着かせる
    (例)リビング:人工的な色やビビット系の色を避け、明るくナチュラルな色をそろえる
    (例)寝室:鎮静効果があることで知られている青を、枕やアイマスクなど寝室の一部に取り入れる

 

色が持つイメージともたらす効果

色に対するイメージの作られ方

色に対するイメージは、以下3つにより形成される。

  • 人類共通のイメージ
  • 各個人の体験からの連想
  • 国、地域、文化、宗教、時代背景

色のイメージを形成する要因は一つではないため、必ずしも「一般的な色のイメージ」が「全員に共通するイメージ」になるわけではない。

カラーセラピー「色に対するイメージの作られ方」

【画像】「色彩心理のすべてがわかる本(p.135)」をもとにウーマンズラボ作成

色彩心理の例(色の意味と効果)

  • 【レッド】
    情熱や生命などをイメージさせるエネルギッシュな色で、生命力(食欲や性欲)を高める色。温かみを感じさせるため、交感神経を刺激するとされている
  • 【オレンジ】
    陽気さ、親しみやすさ、快活さをイメージさせる色。新陳代謝を促し、食欲を増進させ、自律神経の働きを活性化させるといわれている
  • 【イエロー】
    明るさ、希望、快活さ、好奇心などをイメージさせる色。脳を活性化させたり集中力をアップさせる効果が期待できる
  • 【グリーン】
    安心感や情緒の安定などをイメージさせる色。癒しや緊張の緩和、リラックスや血圧を下げる働きがあるといわれている
  • 【ブルー】
    理性、冷静さ、信頼を象徴する色で、鎮静作用があるとされている
  • 【ロイヤルブルー】
    聡明、厳格、権威、孤独をイメージさせる色で、鎮静作用があるとされている
  • 【バイオレット】
    高貴さや品格、神秘性、不安、憂鬱をイメージさせる色。集中力を上げ、インスピレーション(ひらめき、直感)が得やすくなるといわれている
  • 【ピンク】
    優しさ、母性、女性性、無条件の愛、親切、愛されたいを象徴する色で、優しく柔らかい印象を与えたいときに使われる
  • 【ホワイト】
    純潔、純粋、無邪気、潔白、清潔、潔癖、繊細をイメージさせる色。白を着用することで、ニュートラルな気持ちなれる効果を期待できる。多用しすぎると、冷たさ、硬さが出てしまう
  • 【ブラック】
    高級、重厚感、厳粛、圧迫感、強さ、死、絶望、恐怖を象徴する色。高級感、威厳を醸し出したいときに効果的。良くも悪くも絶対的な力の象徴で、強いイメージを与える

 

色が持つ効果を応用するカラーマーケティング

以上で見てきたように、色には心理面・身体面に多様な効果を与える力がある。色が及ぼす力をビジネスの現場で応用する「カラーマーケティング」には売上アップの可能性を期待できるため、商品デザインや店舗デザイン、webデザイン、チラシデザインに積極的に取り入れたい。

カラーマーケティングとは

カラーマーケティングとは、色彩心理学を活用したマーケティング手法のことで、色彩心理学を商品や販促物、Webサイトに応用する。

たとえば、購買意欲をアップさせる効果があるといわれる購買色の赤を取り入れて売り上げ促進を狙うのが分かりやすい事例だ。信頼や冷静のイメージを持つ青であれば、企業ロゴに青を使用することで、企業に対する信頼感を向上させる効果を狙える。企業のWebサイトのCTACall To Action=行動喚起)のボタンをオレンジや黄色にすれば、そこにボタンがあることの注意喚起ができるのでユーザーが注文や問い合わせしやすくなる。コンバージョンアップに効果的だ。

カラーマーケティングのポイントと事例

ポイント

実際に色の効果を活用した事例を見てみよう。まず、カラーマーケティングのポイントとして東京カラーズ株式会社代表取締役の桜井輝子さんは以下3つを挙げている。

売れる色には一定のルールと法則があります。そのルールを極めて大きく3つに分けるならば、①安心感を与える色  ➁心地よさを感じさせる色 ③目新しさとインパクトを与える色、となります。店頭に並んでいる多くの類似商品のなかから、なぜ「その商品」が選ばれるのか。この答えは、色やデザインにあるといっても過言ではありません。なぜならば、私たちが日常生活で得るさまざまな情報は、その約8割が視覚を通して入ってくるものだからです。(引用:「日本の色 売れる色には法則があった!(著:東京カラーズ株式会社 代表取締役 桜井輝子)p.2」)

事例

  • 【赤】
    (例)セールの広告。興奮を呼び起こす色のため「買わなきゃ!」の気持ちを引き出す
  • 【黄色、黄色×黒】
    (例)幼稚園児の帽子やかばん。目立つ黄色を使うことでいち早く、子供の存在を周囲に知らせる
    (例)踏切や「カロリーメイト」。黄色×黒は最強に目立つ組み合わせ
  • 【ゴールド】
    (例)「一度は食べていただきたいおいしいサラミ」。プレミアム感を演出するゴールドをベースにし、食欲を引き出す赤を差し色に
  • 【紺】
    (例)「バファリン」。鎮静作用があるとされる紺色(ロイヤルブルー)は、バファリンの効果をそのまま表現
  • 【ピンクパープル】
    (例)「Ban 汗ブロックロールオン」。センシティブでデリケートな商品のため、ちょっと恥ずかしい気持ちにさせる従来の制汗剤のイメージを「上品でエレガントな女性を想起させる」イメージに刷新
    【参考文献】日本の色 売れる色には法則があった!(著:東京カラーズ株式会社 代表取締役 桜井輝子)

カラーマーケティングは“身近なところから意識”する

カラーマーケティングを実際にビジネスの現場に活かすには、「色の組み合わせ」「色が及ぼす効果」など色を多面的に理解する必要があるため容易ではないが、まずは以下のような身近なところから取り組み始めてみると良いという。

「商品の色の並べ方を、少し変えてみたら、お客様が手にとって見てくれるようになった」
「ディスプレイの色を、毎回工夫したら、お客様が立ち止まって見てくれるようになった」
「セールストークの中に色のこを取り入れたら、お客様との会話が思いのほかはずんだ」
「お店の中の色を変えたら、明るく入りやすくなった」
「看板の色を塗り替えたら、よく目立つようになった」
(引用:「お客様の心をグッとつかむ『色』の法則(著:カラーアナリスト 山本真弓,田中ひろみ)」p.168)

 

 

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