ダイエットアプリ5選|人気アプリの特徴と市場動向
若い女性を中心にユーザーを獲得している人気アプリの代表が、ダイエットアプリ。これまでにさまざまなダイエット法が登場しては消えていったが、近年はダイエットアプリが新たなダイエット法として定着してきている。ダイエットアプリが次々に登場する中、特に高い評価が集まるダイエットアプリにはどのような特徴があるのか?共通しているのは「ダイエット効果を実感できる」ことは当然ながら、女性のニーズやトレンドをコンテンツに反映していること。ダイエットアプリの動向を分析しながら今後の市場動向について予測する。
目次
ダイエットアプリの基礎知識
ダイエットアプリとは
ダイエットアプリはスマホなどでダイエットをサポートするアプリで、ダイエットをなかなか習慣付けられない人向けに提供されているものが多い。体重・運動・食事などの記録機能がメインだが、アプリ市場が過熱する中、最近は体調管理、睡眠管理、ストレスやメンタル管理などユーザーの生活全体を包括的にサポートするアプリ、自分の目標に適合したダイエットコラムを読めるアプリ、SNS機能のあるアプリ、”継続率・成功率”に着目したモチベーション維持のための機能を持つアプリ、悩みに合わせた食事レシピや本格的なエクササイズをレクチャーするアプリ、キャラクターがダイエットを応援するアプリ、AIがアドバイスをするアプリなど機能性の高いアプリが登場している。女性向けに特化したものだと、月経日・排卵日を連動して記録できるようになっており、月経サイクルによる体重・体調の変化やモチベーションの変化も把握できる。
ダイエットアプリの主な種類
1.体重管理・記録型アプリ
ダイエットアプリの中で特に多いのは、目標体重と毎日の体重を記録・管理するタイプのもので、入力すると自動でグラフ化されるものが主流。体重の推移を視覚的に俯瞰できるので、体重が増減するタイミングや法則性を見極められるようになる。基本機能としてあらゆるダイエットアプリに盛り込まれているが、記録のみに特化しているアプリもある。
機能が少ないのでアプリでエクササイズレッスンやアドバイスを受けて本格的に取り組みたい人には向いていないが、ダイエットを習慣化しづらい初心者やアプリの難しい操作が苦手な女性には簡単で人気。反対にアプリに頼ることなく自分でしっかり食生活管理も運動管理もできる上級者が体重記録ツールとして継続利用している場合もある。
2.運動サポート型アプリ(ワークアウト型アプリ)
毎日の運動量の記録やワークアウトメニューの提供など、運動関連の機能が充実しているのが運動サポート型アプリ。歩数を記録する機能、GPSを利用して歩いた距離を算出する機能、走ったコースを地図上で記録する機能、運動の種類別に消費カロリーを計算する機能、トレーナーやキャラクターによるエクササイズのレクチャー動画など、アクティブなダイエッター向けにコンテンツが構成されている。モチベーション維持・向上のために、おすすめのウォーキングコースやランニングコースを表示したり、友だちと運動量を競い合ったりコミュニケーションができるグループ機能もあり、運動以外のファン要素を取り入れている。目標体重・体型などレベルに合わせてワークアウトメニューをカスタマイズできるものが増えている。
無料で使えるものがほとんどだが有料版にグレードアップすると、カスタマイズできるワークアウトメニューの種類が増えたり、期間を設定して長期的なワークアウトをプランニングしたり、ジョギングコースの高低差を確認できたり、トレーナーによる音声ガイドを聞けるなど機能が充実する。
3.食事記録型アプリ
1日の食事内容の記録、カロリー計算、栄養バランスなど、食事でダイエットをサポートするのが食事記録型アプリ。身長・体重・体脂肪率・生活活動強度・年齢などの情報を入力すると適切な摂取カロリーや栄養バランスが提示されるので、記録を続けることで食事や間食の適正量がわかるようになり、カロリーコントロールが簡単にできるようになる。
ダイエット成功にはもちろん本人のモチベーションが最も大事だが、レコーディングダイエットで成功体験がある女性は継続しやすい。食べた食材を入力すると自動でカロリーが算出されるアプリは以前よりあったが、最近は食事の写真を撮るだけでAIが自動で食事内容を判別・解析する高機能アプリや、食品の商品名を入力すると自動でカロリー計算されるアプリが登場し、利便性は急速に高まっている。
無料で使える範囲で十分に食事管理ができるが、有料版では個別に食の専門家からアドバイスを受けたり相談ができる。各アプリによって有料コンテンツはまちまち。
4.総合記録型のアプリ
総合記録型は、体重・運動・食事・睡眠・月経など生活全般の記録を一つのアプリ内ですべて行えるタイプのもの。機能が多く便利だが入力の手間がかかるため、ダイエット初心者は、ダイエット継続の前に記録継続で挫折しやすい。総合記録型はヘルスケア意識が高い上級者や、健康的なダイエット法を求めるヘルスリテラシーが高いユーザーとの相性が良い。
ダイエットアプリの動向
女性に人気のダイエットアプリの動向を把握する前に、健康関連サービスの市場規模や消費者行動の調査から、ダイエットアプリに求められる機能や消費行動について理解しておこう。
健康関連サービスの市場規模
三菱UFJリサーチ&コンサルティングによると、国内の健康関連サービス(※)の市場規模は約80億円(健康関連サービスの動向整理,2017.9.27)。9割は「月額利用料・会費」が占め、残りの1割は「購入(初期費用)」と算出している。ダイエットアプリのみの市場規模は示されていないが、サブスクリプション型が主流のダイエットアプリは「月額利用料・会費」に分類されるので有望市場と言えるだろう。
サブスクリプションは今や世界的潮流となっており、アプリ課金は新たな消費行動として若い世代を中心に浸透してきている。生活者のヘルスリテラシーの高まりも後押しとなり、個々のユーザーニーズに、より合致したダイエットアプリが登場すれば今後のさらなる需要拡大が期待される。
(※)健康管理/食事管理/ダイエット/睡眠管理・睡眠の質向上/体調管理/ストレス管理・メンタル管理/運動管理・スポーツ指導/健康相談・遠隔医療
ダイエットアプリに必要とされる機能
そもそもダイエットアプリにはどのような機能が求められるのか?それには消費者の健康行動を理解する必要がある。参考になるのは「情報機器で記録したことがある健康データ(三菱UFJリサーチ&コンサルティング, 健康関連サービスの動向整理,2017.9.27)」の調査結果。それによると情報機器で記録したことがあるのは、降順に次の項目。以下は20代〜60歳以上の全体の調査結果。
- 体重(75.0%)
- 歩数(68.4%)
- 体脂肪率(42.8%)
- 運動に関わるデータ(35.4%)
- 血圧(31.6%)
- 食事内容(28.0%)
- 睡眠時間、眠の質など睡眠状態(27.8%)
- 心拍数(24.6%)
- 生理記録(23.0%)
- 摂取カロリー(22.2%)
- 体温(17.4%)
- 便通(13.4%)
- 胴囲(11.6%)
- 飲酒量(6.8%)
- 喫煙量(4.4%)
- 記録したことがない(3.4%)
- その他(0.6%)
次に「情報機器で今後記録したい健康データ」について聞くと、次のような結果となった。「記録したことがあるデータ」とほぼ変わらない順番だが「記録したことがあるデータ」より多かったのは「摂取カロリー」「飲酒量」などだった。なお、20〜60歳代以上の各年代の調査結果は資料(pp.21-22)から閲覧できる。年齢によって結果が異なるので、ターゲットのニーズやアプリに搭載する機能を考えるのに参考になる。
- 体重(64.6%)
- 歩数(51.2%)
- 体脂肪率(45.4%)
- 血圧(35.4%)
- 運動に関わるデータ(33.8%)
- 睡眠時間、睡眠の質など睡眠状態(32.2%)
- 摂取カロリー(30.6%)
- 食事内容(26.0%)
- 心拍数(24.2%)
- 体温(20.6%)
- 生理記録(17.6%)
- 便通(16.8%)
- 胴囲(14.4%)
- 飲酒量(12.6%)
- 喫煙量(8.2%)
- 記録したことがない/記録したいと思わない(6.6%)
- その他(1.2%)
他、資料にはアプリの月額利用で支出している金額(p.29)、アプリなど健康関連サービスの選定時に重視した事項(p.31)、健康関連サービスで最も利用している計測機器(p.27)、利用頻度(p.28)などを掲載。参考資料としておすすめ。
参考資料
- ■健康関連サービスの動向整理(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)
女性に人気のダイエットアプリの特徴
女性に人気のダイエットアプリの最近の傾向は、「パーソナライズ」「ゆるく実践」「記録が簡単・管理が楽々」「部位別トレーニング」。年齢に関係なく女性は男性よりも一般的にヘルスケア意識が高いのでダイエット人口は多いが、ダイエット決断後に本格的な運動や食事制限に取り掛かるのは男性の方が得意。自分に負荷をかけすぎるのが苦手な女性は、厳しい食事管理や本格的な筋トレアプリよりも「シンプルな機能・簡単な操作で、自分の性格や目標に合ったプログラムでゆるく続けられるダイエットアプリ」を好む。また、多くのダイエッターの課題である「継続」に着目し、ユーザーをアプリ内で音声やテキストで応援したり褒めるアプリは「頑張って続けられる」とのレビューが集まり人気。
ダイエットアプリの市場動向予測
カロリー計算やカスタマイズプログラムを提供する機能は今や基本機能になりつつあり「あって当たり前」、アプリの利用に慣れているユーザーなら目新しさは感じなくなっている。また、AIを活用したより性能の高い解析・アドバイスを提供するアプリは今後さらに増えていくのも必至。では、今後はどのようなダイエットアプリが女性市場で注目を集めるのか?ダイエットアプリ機能の「コンセプト」をレベルアップさせる必要がある。コンセプトキーワードは「エンターテイメント」「体のトータルサポート」「メディカル」「中高年層向け」。
【キーワード1】高いエンターテイメント性
ダイエット効果以上に、モチベーション維持が最重要視されるダイエット。ユーザーのダイエットの継続率を上げるために、アニメーションの活用やオリジナルスタンプの提供、運動量に合わせてアプリ内で旅行ができるなどゲーミフィケーションを取り入れたアプリがすでに数多く出ているが、高いエンターテイメント性を追求したアプリはまだまだ開拓の余地がある。特にダイエットの継続が苦手な女性たちからの支持を得るはず。
AR、VR、MRなどの先進的技術を活用したアプリや、ダイエットアプリに活躍の場を広げるYou TuberやV Tuberの登場が相次ぐだろう。バーチャル恋愛の人気の高まりで、特にバーチャル彼氏によるダイエットサポートは女性の心をつかみそう。
【キーワード2】体重も体型も不調もトータルサポート
ダイエットアプリといえば、減量や体型改善をゴールにしているものが主流だが、今の女性たちが必要としているのは、もっと包括的かつ健康的に自分の体をサポートしてくれる頼れるアプリ。
月経サイクルやストレスで心身がダメージを受けやすい女性の体は、年中デリケート。日々管理・ケアしたいのは体重だけではない。肩こり、腰痛、PMS、便秘、むくみ、慢性疲労、頭痛、ストレス、メンタルなど多岐にわたる。また昨今の健康ブームに加え2017年にセルフメディケーション税制が始まったことで、「自分自身でヘルスケアに取り組む」意識は高まっている。
一つのアプリで自分の不調を総合的にケアできれば、利便性の高さが評価され、長期的にアプリを利用する女性ユーザーが増えるだろう。ただし、年代やライフステージによって女性が抱える不調の傾向は異なるので、ターゲットをしっかり設定した上でコンテンツの詳細を構成したい。
合わせて読みたい記事
【キーワード3】メディカル起点
持病を持つ人の中には、塩分制限・糖質制限・たんぱく質制限・カリウム制限など細かい食事制限を守りながらダイエットに取り組まなければならない人がいる。特定の運動に取り組まなければならない人もいれば、過度な運動量を制限されている人もいる。そのような人たちにとって食事・運動管理を始めとした体の管理は、専門知識を必要とするため “時間も労力も奪うストレスタスク” になりがち。医療機関や食の専門家と連携し、持病に合わせたカスタマイズプログラムが提供されるなら、罹患者に有益なダイエットアプリとなるはずだ。
【キーワード4】中高年層向け
アプリユーザーは一般的にデジタルネイティヴ世代に多く、中高年層においてはスマホを持っていてもアプリを利用していない女性は多い。だが、加齢や更年期症状で体重増加や不調が出やすい中高年女性こそヘルスケアニーズが高く、健康行動者率は高い。
第2次ベビーブーマーにあたる団塊ジュニア世代は今の40代で、ちょうど更年期症状に悩まされる時期。デジタルネイティヴ世代より少し上の世代になるがスマホ所有率は高いので、更年期症状のケアも同時にできるダイエットアプリは重宝されるだろう。ただしデジタルを使いこなすモチベーションはデジタルネイティブ世代ほど高くはないので、操作性を頓挫にしないことと、利用率・継続率向上のための仕掛けは必須。
60代以上の女性はさらに健康意識が高まり時間的余裕もあるため、食生活を気遣う人は多く、さらにスポーツの行動者率も高い。この年代のスマホ所有率も徐々に上がっているので、60代の包括的なヘルスケアニーズに適した機能があればユーザーはこれから増えていくはず。ただしデジタルの利用に対する心理的ハードルが高いので、操作性や機能は徹底的にシンプルを心がけるのがマスト。
合わせて読みたい記事
人気のダイエットアプリ
女性の人気を集めているダイエットアプリの事例を、機能の特徴別に見てみよう。
【特徴1】パーソナライズ
先進性とパーソナライズ性で人気を集めているのは、グーグルプレイが発表するベストアプリ2018の「自己改善部門」で大賞に選ばれた「Finc〜AIとダイエット あなた専属トレーナー〜」。体重・歩数・睡眠・生理を記録管理しながらAIトレーナーが個々の状態や目的に合わせてダイエットをサポートする。自分に合ったダイエットプログラムや情報が届けられるので実用的。
FiNCの月間アクティブユーザー(MAU)は2018年の1年間で4倍以上増加した。1年前は20代女性がメインユーザーだったが、現在は20代から50代まで幅広い層が使い、男性の利用も20~30代を中心に少しずつ増えている。(引用:日経MJ 2019年2月20日)
AIトレーナーがチャット形式で使い方を説明するので、アプリ初心者のユーザーが利用開始の時点でつまずくことがない。
人気のダイエットアプリ(1)
【特徴2】ゆるく実践
メリハリボディーがトレンドの今、女性の間に筋トレブームが到来しているが、ガッツリ長時間のエクササイズアプリは敬遠されがち。支持されるのは「ゆるく短時間」で体を改善できるアプリ。その代表が「3分フィットネス-簡単エクササイズ-」。
鍛えたい部位を選択すると、アニメーションと音声で体の動かし方が解説され3分間のエクササイズが始まる。実際に「簡単で続く」「簡単なメニューが多いので嬉しい」「ちょっとした時間で続けられる」「1セットが短いので初心者でも無理なく続けられる」と、簡単・短時間という点に評価が集まっている。他、体に大きな負担がかからずゆるく実践できるヨガのアプリも女性が取り組みやすく人気。
人気のダイエットアプリ(2)
- ■3分フィットネス【無料でエクササイズ】
【特徴3】記録が簡単・管理が楽々
記録方法が複雑だと、食事改善や運動の習慣化の前に、日々の記録で挫折しがち。記録方法が簡単で楽に自己管理できるアプリは人気になりやすい。その一つが、食事の写真を撮るだけでメニューを自動判別し食事内容やカロリーを簡単に記録できる「あすけんダイエット 体重記録とカロリー管理アプリ」。特にダイエッターが気にするカロリーや糖質量だけではなく、塩分、ビタミン類、食物繊維などの摂取量もグラフで表示されるので、一目で各栄養素の過不足をチェックできる。
人気のダイエットアプリ(3)
【特徴4】部位別トレーニング
筋トレブームの今、特に女性たちが鍛えたい部位がヒップ、お腹、脚。このニーズを受け、部位に特化したアプリが登場している。訴求部位が特化している分、コンテンツの専門性が高く、ユーザーを獲得しやすい。
人気のダイエットアプリ(4)~(5)
女性のニーズと健康の理解が必要
最近のダイエットアプリの特徴的な動向は先進性やパーソナライズだが、ここを強化するダイエットアプリはこれから競争が激化すると考えられる。これからは、いかに女性ユーザー個々の包括的なヘルスケアニーズや好み、利便性のポイントを捉えてターゲティングをするか? が差別化のポイントとなっていくだろう。ダイエットアプリはパーソナライズ機能が充実してきてはいるものの、女性ニーズや女性の健康に関する理解が進んでおらず、個々の心身の状態を踏まえたone to oneマーケティングが達成できていない市場だ。
【編集部おすすめ記事】
■ヘルスケア女性マーケティング関連の2018年アワード、2019年トレンド予測まとめ
■2019年トレンド予測発表、美容・メイク・ダイエットなど モデルプレス
■読者1,000名による「ダイエット&ヘルス大賞2018発表!」ヘルスケア女性誌FYTTE
■【保存版】ヘルスケア女性マーケティングに役立つ!政府公表の資料・データまとめ