ムーンショット目標の「“超早期”に疾患を予測・予防する社会」って何? アニメで理解する2050年

政府が進める大規模な研究開発プロジェクト「ムーンショット型研究開発事業」。困難だが実現すれば大きなインパクトが期待される社会課題の解決に向け、野心的な目標=ムーンショット目標(※)を策定し、国内外トップの研究者をプロジェクトマネージャーに据え研究を推進している。医療・介護・健康分野でも壮大な目標を掲げる。見据えるのは、25年後の社会実装だ。

10のムーンショット目標

ムーンショット型研究開発事業では、10の目標を掲げている。下記図が概要。

ムーンショット、10の目標

ムーンショット、10の目標

【内閣府】ムーンショット目標

 

桁違いの投資規模で破壊的イノベーションを

同事業推進の背景にあるのは、少子高齢化の進展や介護問題、大規模自然災害、地球温暖化など、待ったなしの状況にある多くの困難な課題。欧米や中国では、破壊的イノベーションの創出を目指し、これまでの延長では想像もつかない野心的な構想のもと、困難な社会課題の解決を掲げ、日本とは桁違いの投資規模でハイリスク・ハイインパクトな挑戦的研究開発を強力に押し進めている。

そうした中、日本においても破壊的イノベーションの創出が求められており、従来技術の延長には無い、より大胆な発想に基づく挑戦的な研究開発が必要とされている。そこで政府が策定したのが、10のムーンショット目標(※)。各目標下において、国内外トップの研究者がプロジェクトを推進しており、医療・介護・健康分野と特に関係が深い目標は、次の3つ。

  • 目標2
    2050年までに、超早期に疾患の予測・予防をすることができる社会を実現
  • 目標7
    2040年までに、主要な疾患を予防・克服し100歳まで健康不安なく人生を楽しむためのサステイナブルな医療・介護システムを実現
  • 目標9
    2050年までに、こころの安らぎや活力を増大することで、精神的に豊かで躍動的な社会を実現

※ムーンショットとは?
1961年、米ジョン・F・ケネディ大統領が、「1960年代が終わる前に月面に人類を着陸させ、無事に地球に帰還させる」という実現困難なアポロ計画を発表し、1969年に実現した。これに倣い、実現困難だが実現すれば大きなインパクトが期待される社会課題を対象にした野心的な目標を掲げた研究開発として、同事業に「ムーンショット型」という言葉が用いられている。

 

医療・介護・健康分野のムーンショット目標

医療・介護・健康分野で目指されている2050年のヘルスケア社会とは、”超早期”の疾患予測・予防で未病の状態から健康な状態に引き戻すこと、若年層と高齢層の健康力の格差をなくし人生100年を最後まで健康な状態で生きること、ウェルビーイングを叶える技術で心豊かな人生を送ること。ムーンショット目標2・3・9、それぞれの具体的な目標を知ると、日本がこれからどんなヘルスケア社会に向かっていくのか、その方向性がもう少し具体的に見えてくる。各プロジェクトの紹介動画も交えながら、理解を深めていこう(アニメーションによる解説では、未来のヘルスケア社会をイメージできる。続く動画では、各プロジェクトディレクターが具体的な研究内容を紹介)

【目標2】2050年までに、超早期に疾患の予測・予防をすることができる社会を実現

  • 2050年まで
    臓器間の包括的ネットワークの統合的解析を通じて疾患予測・未病評価システムを確立し、疾患の発症自体の抑制・予防を目指す
  • 2050年まで
    人の生涯にわたる個体機能の変化を臓器間の包括的ネットワークという観点で捉え、疾患として発症する前の「まだ後戻りできる状態=未病の状態」から健康な状態に引き戻すための方法を確立
  • 2050年まで
    疾患を引き起こすネットワーク構造を同定し、新たな予測・予防等の方法を確立
  • 2030年まで
    人の臓器間ネットワークを包括的に解明

 

【目標7】2040年までに、主要な疾患を予防・克服し100歳まで健康不安なく人生を楽しむためのサステイナブルな医療・介護システムを実現

■日常生活の中で自然と予防ができる社会の実現

  • 2040年まで
    免疫システムや睡眠の制御等により健康を維持し疾患の発症・重症化を予防するための技術や、日常生活の場面で個人の心身の状態を可視化・予測し、各人に最適な健康維持の行動を自発的に促す技術を開発することで、心身共に健康を維持できる社会基盤を構築
  • 2030年まで
    全ての生体トレンドを低負荷で把握・管理できる技術を開発

■世界中のどこにいても必要な医療にアクセスできるメディカルネットワークの実現

  • 2040年まで
    簡便な検査や治療を家庭等で行うための診断・治療機器や、一部の慢性疾患の診断・治療フリー技術等を開発することで、地域に関わらず、また災害時や緊急時でも平時と同等の医療が提供されるメディカルネットワークを構築。また、データサイエンスや評価系の構築等により医薬品・医療機器等の開発期間を大幅に短縮し、がんや認知症といった疾患の抜本的な治療法や早期介入手法を開発
  • 2030年まで
    小型・迅速・高感度な診断・治療機器や、医師の医学的所見・診断能力をさらに引き上げる技術等を開発し、個人の状況にあった質の高い医療・介護を少ない担い手でも適切に提供できる技術基盤を構築

■負荷を感じずにQoLの劇的な改善を実現(健康格差をなくすインクルージョン社会の実現)

  • 2040年まで
    負荷を感じないリハビリ等で身体機能を回復させる技術、不調となった生体制御システムを正常化する技術、機能が衰えた臓器を再生・代替する技術等を開発することで、介護に依存せず在宅で自立的な生活を可能とする社会基盤を構築
  • 2030年まで
    負荷を低減したリハビリ等で身体機能の改善や在宅での自立的生活をサポートする技術、不調となった生体制御システムを改善する技術を開発

 

【目標9】2050年までに、こころの安らぎや活力を増大することで、精神的に豊かで躍動的な社会を実現

  • 2050年まで
    こころ豊かな状態を叶える技術を確立
  • 2030年まで
    こころと深く結びつく要素(文化・伝統・芸術等を含む)の抽出や測定、こころの変化の機序解明等を通して、こころの安らぎや活力を増大する要素技術を創出。加えて、それらの技術の社会実装への問題点を検討し、社会に広く受容される解決策の方向性を明らかにする
  • 2050年まで
    多様性を重視しつつ、共感性・創造性を格段に高める技術を創出し、これに基づいたこころのサポートサービスを世界に広く普及させる
  • 2030年まで
    人文社会科学と技術の連携等により、コミュニケーションにおいて多様性の受容や感動・感情の共有を可能にする要素技術を社会との対話を広く行いながら創出

 

 

 

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