何歳まで生きると想定して消費してる? 60・70代女性の生活設計・消費・不安ゴト
日本の平均寿命は年々伸び、女性87.32歳、男性81.25歳(2018年)。さらに100歳以上の人口も増え続け、国内の100歳以上は1963年の153人から、2020年には80,450人へ(うち88%は女性)。平均寿命は今後も伸び続けると予測され、今や誰もが長生きできる時代だ。
だが一方で長生きはリスク。長生き不安を抱える中で高齢期を迎えた現60・70代の人々は、どのような生活設計をし消費しているのか?
これについて三菱UFJリサーチ&コンサルティングが興味深い視点で調査を実施し、3種のレポートを公開した(2021,5,21)。その中から、特にマーケターが知っておきたい最新のデータを編集部がピックアップ。人生100年時代のシニアマーケティングのヒントに。
何歳まで生きると想定した生活設計?
男女ともに平均寿命が伸びる中、人々は自分が何才まで生きると想定して生活設計をしているのだろうか?
高齢期の生活設計に関する研究の中で、同社は興味深い調査を実施した。60・70代の男女を対象に「何歳までの生活設計を想定しているか?」と聞いたところ、想定している寿命は、性・年齢階級・就業状況に関わらず、実際の平均寿命より短いことがわかった。女性については平均寿命より6〜7年ほど短い想定寿命を回答する人が多く、この乖離は男性より女性の方が顕著だった(レポート図表1〜3)。
この調査結果を掲載している以下レポートには、「生活設計上の想定寿命(性・年齢階級別・就業状況別)」の他、「将来の生計の見通し」「長寿化による支出の増加に対する備え」「医療保険・介護保険の加入状況」などに関する調査結果も掲載。
毎月の消費額
公的年金の給付水準低下、2 ,000万円問題、長寿化などで、高齢期の適切な消費の維持や、そのための収入源確保は近年の重要な課題として指摘されている。その真っ直中にいる60・70代は、貯蓄と消費額をどのようにバランシングしているのか?
60・70代の男女を対象に月間消費額の方針について聞いたところ、月間収入の多少によって顕著な違いが見られた。月間収入が少ない人ほど収入額に合わせた消費をせず、貯蓄を取り崩している人の割合が高い傾向が明らかに(=貯蓄額は減る一方)。収入が「10万円未満」については、そもそも月間消費額について決めていない人が半数近くにも上る。反対に月間収入が多い人ほど収入額に合わせた消費をし、貯蓄額を維持・増やす人の割合は高い。
なお、「月間の収入額や貯蓄額と自分の想定寿命(今後消費が必要な期間)から毎月の消費額を概算している」人の割合は、月間収入額による差は見られず2〜4%ほど。「自分は何歳まで生きるのか?」を意識して消費している人はほとんどいないようだ。
この調査結果を掲載している以下レポートには、「月間消費額の方針(収入別・今後の生計見通し別・お金に関する知識量別)」の他、「家計収支の状況」「赤字世帯の貯蓄維持期間」の調査結果も掲載。
健康状況で異なる将来の不安ゴト
人生100年時代の到来で長生きはリスクと言われるようになったが、人々にリスクと思わせる不安要素は健康状態によって異なるようだ。
60・70代の男女を対象に健康状況別に今後の支出の不安要素を聞いたところ、健康状況が良くない人ほど「自分や配偶者の介護費」を心配し、反対に健康状況が良い人ほど「自分や配偶者が 長生きすることによる生活費」を心配する人が多いことがわかった 。現時点で健康であってもそうでなくても、長生きにより発生するコストはやはり心配の種だ。
この調査結果を掲載している以下レポートには、この他、「長生きによる支出(生活費)の増加に対する取組内容」「民間の医療保険・介護保険の加入状況」「未加入者の民間の医療保険・介護保険への加入意向」などの調査結果も掲載。
人生100年時代のシニアマーケティング
三菱UFJリサーチ&コンサルティングが公開したレポートの中で特に注目したいのが、「想定寿命」。介護不安や備え意識から、近年は「健康寿命」が注目されすっかり浸透したが、経済的視点で老後に備えるなら、本来は想定寿命についても合わせて考えておく必要がある。
想定寿命に関する調査は同社以外も実施しているが、そちらも同様の結果が見られ、やはり実際の平均寿命より短い寿命を回答する人が多いことがわかった(ダイヤ財団)。長生きの可能性を漠然と覚悟はしつつも自分の想定寿命が平均寿命より短いとなると、高齢期の適切な消費を維持できなくなる可能性は高くなり危険だ。
生活者が適切な想定寿命を見据えた生活設計ができるよう、また適切な消費を維持できるよう、生活者も企業サイドも、寿命には3つの概念(想定寿命・健康寿命・平均寿命)があることを覚えておきたい。
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