高齢女性が生きがいを感じるのはどんな時? 〜性別・年代別・国別〜
一般的に高齢期の人々の生きがいや幸せは「子・孫・友人との交流」「趣味」「旅行」などが言われているが、それはちょっと早計。高齢者といっても、性別・年代・国によって生きがいになっていることや程度はまちまち。それを確認できる調査結果が今年、内閣府より公表された。「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査(令和2年度)」を読み解くと、高齢女性がどんなことに関心があり、どんなことに幸せを感じ、どんな価値観を持っているのかがわかる。高齢女性マーケティングの参考に。
※本稿は、今月27日(火)に当社ウーマンズが開催するイベント「ウーマンズ・ミートアップ! 60~100歳の高齢女性マーケティング 」にお申込みくださった化粧品・健食メーカーの方よりお寄せいただいたご意見を参考に企画いたしました。ありがとうございました。
目次
生きがいを感じている?
生きがいを感じることの有無(男女別)
60歳以上の男女に「生きがいを感じることの有無」を聞いたところ、「大変感じている」「多少感じている」と回答した日本人は女性69%、男性65.6%で、大差ではないが女性の方が多いことがわかった。
アメリカ、スウェーデン、ドイツ、日本の4カ国間の国際比較においては、日本は男女ともに3位。アメリカは生きがいを感じている人の割合が高く、「生きがいを大変感じている」と回答した人は、なんと男女ともに50%超え。日本と随分の差だ。
生きがいを感じることの有無(年代別)
次に、日本の60代前半〜80歳以上までの年代別の結果をランキングで見てみよう(男女計)。「生きがいを大変感じている」「多少感じている」と回答した人の割合が最も高いのは、70代後半。
- 1位:75〜79歳(72.7%)
- 2位:70〜74歳(69.4%)
- 3位:65〜69歳(68.6%)
- 4位:60〜64歳(63.6%)
- 5位:80歳以上(61.4%)
注目したいのは60代・70代。70代の方が生きがいを感じている人の割合が高いのは、ちょっと意外に感じるかもしれない。理由までは調査されていないが、これは恐らく、現役を引退したばかり(あるいは60歳を機に働き方を変えたばかり)の60代前半は、生活の変化をなかなか受容できなかったり、これから先の生き方を模索しているからかもしれない。
実際に中高年の男女にインタビューを実施したりコミュニティサイトを覗くと、老後の生き方に悩むのは60歳前後である場合が多い。中には現役を引退したことで自己肯定感が低下する人の姿も見られる。一方で70代は(アクティブシニアの場合に限られるが)、生き方の模索云々よりは、今この瞬間の人生を謳歌しているといった印象だ。良い意味でいろんなことが吹っ切れるのが、70代なのかもしれない。
以下は、他国を含めた年代別の調査結果。
生きがいを感じるのはどんな時?
生きがいを感じる時(男女別)
高齢者の生きがいについて、具体的な内容を見てみよう。同調査では以下16項目において、生きがいを感じるかどうかを聞いている。
- 仕事に打ち込んでいる時
- 勉強や教養などに身を入れている時
- 趣味に熱中している時
- スポーツに熱中している時
- 夫婦団らんの時
- 子供や孫など家族との団らんの時
- 友人や知人と食事、雑談している時
- テレビを見たり、ラジオを聞いている時
- 社会奉仕や地域活動をしている時
- 旅行に行っている時
- 他人から感謝された時
- 収入があった時
- おいしい物を食べている時
- 若い世代と交流している時
- おしゃれをする時
- 犬や猫などのペットと過ごす時
- その他
- わからない
上記項目の中で当てはまるものについて男女別に聞いたところ、次の結果となった。表が示す通り日本は総じて、生きがいを感じる人の割合が他国と比べて低い。
ウーマンズラボ編集部が特に気になったおもしろいファインディングスは、人間関係に関する生きがいの感じ方。4カ国全てにおいて「夫婦団らんの時に生きがいを感じる」と回答したのは女性よりも男性に多く、反対に、「子供・孫・友人・知人との交流に生きがいを感じる」と回答した人は、4カ国全てで女性に多い。どうやら女性は夫以外の人間関係に生きがいを感じる傾向が強く、一方で男性は外部の人間より妻との人間関係の方に生きがいを感じる傾向があるようだ。これが4カ国共通で見られたのはおもしろい。
さて、日本人のみの調査結果に注目してみよう。以下に、女性の方が男性よりも生きがいを感じている割合が高い項目と、男性の方が女性よりも生きがいを感じている割合が高い項目を分類してまとめた。女性は人間関係・食べ物・テレビ・旅行など、余暇活動系のことに生きがいを感じる傾向があるのに対し、男性は仕事・収入・勉強など、現役世代にエネルギーを注いできたことと同様のものに生きがいを感じるようだ。
<女性の方が生きがいを感じている項目>
- 子供や孫など家族との団らんの時(女58.5%,男51.8%)
- おいしい物を食べている時(女57.8%,男49.5%)
- 友人や知人と食事・雑談している時(女54.7%,男35.3%)
- テレビを見たり、ラジオを聞いている時(女51.4%,男45.3%)
- 旅行に行っている時(女36.3%,男33.0%)
- 他人から感謝された時(女32.7%,男23.2%)
- おしゃれをする時(女26.8%,男5.4%)
- 犬や猫などのペットと過ごす時(女15.4%,男14.3%)
- 若い世代と交流している時(女10.8%,男7.2%)
<男性の方が生きがいを感じている項目>
- 趣味に熱中している時(男48.2%,女42.6%)
- 夫婦団らんの時(男40.7%,女24.2%)
- 仕事に打ち込んでいる時(男26.9%,女17.6%)
- 収入があった時(男24.9%,女20.9%)
- 勉強や教養などに身を入れている時(男12.0%,女10.6%)
- 社会奉仕や地域活動をしている時(男8.9%,女7.8%)
生きがいを感じる時(年代別)
続いて年代別の「生きがいを感じる時」を見てみよう(男女計)。生きがいを感じる割合は全体的に加齢とともに低下傾向にあるが、つぶさに見ると、「加齢とともに生きがいが低下傾向にある項目」「増加する項目」「加齢との相関性が見られない項目が」あることがわかる。
<加齢とともに低下傾向にある項目>
- 仕事に打ち込んでいる時
- 旅行に行っている時
- 他人から感謝された時
- 収入があった時
- おいしい物を食べている時
- 犬や猫などのペットと過ごす時
<加齢とともに増加傾向にある項目>
- テレビを見たり、ラジオを聞いている時
<年齢との相関性が見られない項目>
- 勉強や教養などに身を入れている時
- 趣味に熱中している時
- スポーツに熱中している時
- 社会奉仕や地域活動をしている時
- 若い世代と交流している時
- おしゃれをする時
全項目の国別・年代別の結果は以下に掲載。
高齢者が生きがいを感じるための最大条件
最後に、高齢者が生きがいを感じるために最も必要な条件について考えてみよう。本稿で見てきたのは、生きがいの有無や生きがいを感じる時(年代別・性別・国別・項目別)だったが、これとは違う視点で生きがいについて調査したものがあるのでご紹介したい。
高齢社会白書(令和2年版,内閣府)では、60歳以上の男女に、未既婚別・就業状況別・健康状態別に生きがいの程度を聞いており、それによると「配偶者がいる人」「収入のある仕事をしている人」は、生きがいを感じている人の割合が高い。以下の( )内の数字は、「生きがいを十分感じている」と回答した人の割合。
<未既婚別>
- 現在、配偶者がいる(38.6%)
- 配偶者と離別(33.3%)
- 配偶者と死別(33.0%)
- 結婚したことがない(32.3%)
<就業状況別>
- 収入のある仕事をしている(43.1%)
- 収入のある仕事はしていない(33.6%)
上記2つも十分に興味深いファインディングスであるが、これ以上に生きがいに影響を及ぼしているのは健康状態であることが調査で明らかに。健康状態が良い人ほど「生きがいを十分感じている」と回答した人の割合は高く、健康状態が良くない人と35.9ポイントもの開きがある。以下の( )内の数字は、「生きがいを十分感じている」と回答した人の割合。
<健康状態別>
- 健康状態が良い(92.3%)
- 健康状態がまあ良い(89.2%)
- 健康状態が普通(73.5%)
- 健康状態が良くない(56.4%)
上記の数字を見ると、健康状態の良し悪しがいかに生きがいの感じ方に影響しているのかがわかる。高齢になると病気などで体を自由に動かせなくなる人が増えてくるため、現役世代の若い人たちよりも、より健康状態と生きがいの感じ方が連動するのだろう。高齢者が生きがいを感じる人生を送るためにもっとも必要な条件は「健康であること」と言える。
性別・年代別・国別・項目別など、様々な視点から高齢者の生きがいについて見てきたが、これらのデータをそのままマーケティングに活かすのではなく、ターゲット女性の健康状態を想定した上で(あるいは健康状態でクラスターを切った上で)、生きがいを活用したマーケティングを考える方がより現実的かもしれない。
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