広がる卵子凍結、日本産科婦人科学会がメリット・デメリットを公開
日本産科婦人科学会は5月末、卵子凍結に関する正しい情報を伝えるため、一般向けに動画を公開した。抗がん剤治療や生殖器のがんなどによる卵巣機能低下の前に行う卵子凍結は以前から行われてきたが、晩婚化・晩産化により、健康な女性が将来の妊娠に備えて行うケースが増えていることが背景にある。サービス利用にあたっての注意喚起やヘルスリテラシー向上の意味合いが強く、メリットとデメリットなどをまとめている(動画の概要は以下)。
- 卵子凍結のメリット
・卵子の質と量を一時的に止めることができる
・不妊の原因となる病気にかかる前に将来の妊娠に備えられる - 卵子凍結のデメリット
・将来の妊娠や出産を約束するものではない
・卵子凍結が妊娠成立までたどり着く可能性は不確実
・どれくらいの数の卵子を凍結すると出産できるのかは不確実
・年齢を重ねてからの妊娠、出産は母体や赤ちゃんにとって様々なリスクが高まる - 海外の状況
・卵子凍結を行う女性の80%以上が35歳以上。平均年齢は36~38歳
・凍結した卵子の使用率は5.2~7%で、9割以上が使われていない
日本受精着床学会が都内の29の診療施設を対象に行った卵子凍結の実施状況調査(2021年)によると、病気を理由にした卵子凍結(医学的適応での卵子凍結)が行われたのは1年間で136件だったのに対し、健康な女性が将来の妊娠に備えた卵子凍結(社会的適応での卵子凍結)は1,135件と約8倍だった。晩婚化・晩産化の進展で、特に仕事をしている女性の選択肢として認知が広がっており、働く女性を対象にした民間調査では約半数が「卵子凍結を考えたことがある」と回答している(詳細「卵子凍結の利用「考えたことがある」5割、その理由と不安なこと」)。フェムテックの報道や、卵子凍結を福利厚生で導入する企業が増えていることなどが影響し、特に昨年から関心が急速に高まっている。
だが一方で、1回の検査・採卵・凍結につき費用は約30万〜50万円。それに加えて保管料金がかかるなど負担が大きいため、実際に利用できるのは経済的に余裕のある女性に限られる。対策として自治体が支援する動きが出ており、東京都では1人あたり30万円程度を助成する方針。2024年度からの本格実施を検討している。
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