在宅ケア拡充で減少も、都市・被災地になお課題
特別養護老人ホーム=特養の待機者が、大きく減少した。在宅サービスの拡充などが奏功した形だが、数字の改善を問題の解消と捉えるのは早計だ。都市部では高額な民間施設が入所を阻む壁となり、地方では災害が生活基盤そのものを脅かす。減少データの裏にある、高齢者ケアの現在地と「終(つい)の棲家(すみか)」を巡る実態を読み解いた。
■「安価な安心」なお狭き門 減少の裏で進む二極化
特養待機者は2022年度の前回調査から約5万人減った。数字の上では改善したように見えるが、現場の実態を解きほぐすと、安易に喜べない厳しい現実が浮かび上がる。
■「要介護3」の壁と家族の限界
待機者が減った要因の一つは、在宅サービスの充実がある。ただ、要介護3以上の待機者約20万6000人のうち、4割超にあたる約8万6000人が自宅で空きを待っている。認知症や重い介護度でありながら、在宅で限界ギリギリまで介護を続けている家族の実態が透けて見える。残りの約12万人も、病院や他の施設にいながら、より費用の安い特養への入所を待っているのが実情。経済的な理由で「特養しか選択肢がない」層は多い。
■「入れない」都市部、「災害」に泣く地方
今回の結果を地図に落とし込むと、二つの課題が見えてくる。一つは都市部の価格障壁。東京都の待機者は1万8776人と全国最多レベルにある。都内の民間有料老人ホームの入居費は中央値で約1000万円、月額費用も約30万円と高額。一般の年金生活者にとって民間施設は高嶺の花であり、特養がセーフティーネットとなっている構造は変わっていない。
もう一つ、今回浮き彫りになったのが災害リスク。待機者割合が上昇した石川県では、能登半島地震で多くの高齢者施設が被災し、広域避難や定員減を余儀なくされたことが数字を押し上げたとみられる。避難先での環境変化が負担となり、命を縮める高齢者も少なくなかった。災害で自宅を失い、地域の施設も機能不全に陥れば、高齢者は行き場を失ってしまう。
待機者数の減少という表層的な数字だけで安心はできない。都市部での安価な住まいの提供と、災害時でも高齢者を守れる強じんな体制づくりが、これからの高齢者ケアに求められている。
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