ヘルシーフードの新潮流 〜2021上半期のトレンドから先読み〜
今年ももう6月。上半期にヒットした商品やトレンドが、各業界から続々と発表される時期になった。健康業界も然り。各社の発表内容や商品事例を参考に上半期を振り返りつつ、ヘルシーフード(※)の新潮流を先読みしていこう。特に注目は「ヘルシーフードの新定義」。
(※)ヘルシーフードの明確な定義はないが、本稿ではトクホや機能性表示食品などの保健機能食品の分類有無問わず、健康要素のある一般食品を扱う。
健康感度高い女性が選ぶ、最新の人気ヘルシーフード
まずは国内の人気商品から見ていこう。女性たちに人気の最新のヘルシーフードをチェックするなら、女性向けのヘルスケアメディア「フィッテ(株式会社ワン・パブリッシング)」が先月発表した「ダイエット&ヘルス大賞ランキング2021」が参考になる。
健康・美容・ダイエットへの関心が高い読者1,000人による投票で、「日頃使っていてよかった商品」と「これから使ってみたい商品」を決定する毎年恒例のアニュアルイベントで、女性たちのヘルスケアをサポートする人気のヘルシーフードが発表される。
今年は計26部門(以下)。COVID-19による家飲み需要や、感染症対策として喉ケアへの意識が高まっていることを背景に、今年は「低糖質・ドリンク(酒類)部門」「のど飴部門」「グルテンフリー部門」を新設。サイトでは部門別に、上位にランクインした商品・商品の特徴・投票に参加した読者のコメントを確認できる。
低糖質系
- 低糖質・主食部門
- 低糖質・おやつ部門
- 低糖質・ドリンク(酒類)部門
たんぱく質系
- たんぱく質がとれる・食品部門
- たんぱく質がとれる・おやつ部門
- たんぱく質がとれる・ドリンク部門
- たんぱく質がとれる・粉末ドリンク部門
- たんぱく質がとれる・ヨーグルト部門
食物繊維系
- 食物繊維を意識した・主食部門
- 食物繊維を意識した・おやつ部門
- 野菜・フルーツドリンク部門
腸活・発酵系
- 腸活・食べるヨーグルト部門
- 腸活・飲むヨーグルト部門
- その他発酵系・乳酸菌入り・ドリンク部門
サプリメント・補助食品・置き換え系
- サプリメント・ダイエットサポート部門
- サプリメント・ボディメイクサポート部門
- サプリメント・補助食品(腸活サプリ・粉末含む)部門
- 置き換えダイエット食品部門
植物系
- 植物系・植物性ミルクドリンク部門
- 植物系・植物性ヨーグルト部門
- 植物系・大豆系肉類部門
- 植物系・調味料部門
調味料・オイルなど
- ヘルシー調味料部門
- のど飴部門
- オイル部門
- グルテンフリー部門
不健康食品、「健康×美味しさ」両立の追求
日経トレンディ(日経BP)が先月発表したトレンド予測からは、ヘルシーフード業界が参考にできるキーワードが登場。下半期にブレイクするキーワードとして「おいしい健康」を挙げ、美味しさはそのままに高たんぱく・低糖質を実現した「カップヌードルPRO 高たんぱく&低糖質(日清食品)」、糖質ゼロと美味しさを両立させた「パーフェクトサントリービール(サントリービール)」、キレートレモンの無糖バージョン「キレートレモン無糖スパークリング(ポッカサッポロフード&ビバレッジ)」を商品事例に、次の見解を示した。
「健康っぽいものはおいしくない」と思われていたビールやカップ麺にも、味に配慮した製品が現れた。共通するのは、高たんぱく、低糖質などの特徴がありながら、味も見劣りしないこと。健康に良いのは当たり前で、おいしさをどう訴えるかがカギになる。(引用:「21年上半期にヒットした商品は?大賞14商品を一挙紹介」,日経Xトレンド)
不健康食品の代表といえば酒類だが、近年は単なるノンアルコールではなく、より健康訴求が強い酒類商品が国内外で人気を集めている。
例えば米国では今、アルコール入りのコンブチャ「ハードコンブチャ」がトレンド。免疫力向上や腸活などの健康効果からコンブチャブームが数年前に起きたが、そこから「健康的なお酒」へと横展開。大人たちの新ドリンクとして人気を集めている。アルコール度数はビールとワインの中間ほどで、製品によるが4.5〜7%が一般的のよう。小麦・大麦を含まないので、セリアック病などでグルテンフリーの飲食が必要な人でも安心して飲めるという。 KYLA HARD KOMBUCHAもその一つで、各メディアに取り上げられているハードコンブチャブランド(米・オレゴン州)。「腸に優しいプロバイオティクス」で訴求し、しそミント、レモン、オレンジなど様々なフレーバーのハードコンブチャを販売している。
ドイツ発のノンアルコールビール「ヴェリタスブロイ」も、機能性を備えた健康ビール。ビタミン、ミネラル、アミノ酸がバランスよく含まれていることが食品分析で証明されており、食品展示会のFOODEX JAPANが毎年開催する「美食女子アワード」では金賞を連続受賞し注目を集めた。購入者レビューには「ノンアルなのに美味しい!」と高評価の声がズラリ。
これまで不健康食品に分類されてきた商品も、これからは健康と十分な美味しさを兼ね備えたクオリティが求められる。特にお菓子・デザート・酒類のカテゴリーで、「健康×美味しさ」の追求が進みそうだ。
ヘルシーフードの新定義、「健康×サステナブル」
女性たちにとってこれまでのヘルシーフードの定義と言えば、主なのは「低カロリー・低糖質・低脂質」「高たんぱく質」「無添加」「優れた栄養バランス・栄養価」「オーガニック」「減塩」「スーパーフード」。だが最近はSDGsの広がりで、ヘルシーフードの定義に新しい項目が追加されつつある。それが「サステナブル」。人によって解釈はそれぞれだが、食業会で言うサステナブルは主に環境配慮、フードロス、フェアトレード。こういった、人や環境への優しさを食品に求める傾向が年々強まっている。単純に健康効果があれば良いわけではなく、サステナブルの要素があればなお良し、ということだ。
実際に米国ではすでに注目トレンドとしてサステナブルな食品がピックアップされており、食料品スーパーマケット大手のWhole Foods Marketが昨年発表した2021年の食品トレンドでは、「アップサイクル食品」「ウェルビーイングな食品」「野菜・フルーツのジャーキー」など「健康×サステナブル」を軸にした食品が盛り込まれた。
2030年まで続く潮流
ヘルシーフードのトレンドの中でも、特に注目は「サステナブル」。「女性の環境配慮(SDGs)意識と消費の関係」の記事でも言及したように、サステナブル・SDGs・環境配慮などの要素は今のところはまだ消費行動にダイレクトに影響はしていないが、2030年のSDGs達成に向け、国内外でサステナブルな食品は急増する見込み。今後注目の新潮流だ。
女性の健康食品の選択基準は?
小林製薬の紅麹サプリを巡る問題で、健康食品への不信感や動揺が消費者の間で広がっています。特に男性よりも健康意識・健康行動者率が高い女性による “健康食品の摂取控え” が懸念されることから、健康食品を普段摂取している20〜70代女性を対象に、健康食品に対するイメージの変化や、今後の摂取意向、今後の健康食品の選択基準を調査しました。女性たちのリアルな声からは、今後の健康食品の開発・販促・コミュニケーション設計のヒントを見つけることができます。詳細は「紅麹サプリ問題で、健康食品の選択基準に変化 女性消費者分析でわかった88キーワード」へ。
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