オーガニック食品はがん予防に有用か

化学肥料や農薬を使用しないオーガニックの果物や野菜は高価だが、それだけの価値があるようだ。ソルボンヌ・パリ・シテ大学(フランス)のJulia Baudry氏らの研究から、オーガニック食品の摂取頻度が高いほどがんに罹患するリスクが低い可能性があることが分かった。詳細は「JAMA Internal Medicine」10月22日オンライン版に掲載された。

これまでの研究で、オーガニック食品を摂取する人は尿中の残留農薬の数値が低いことや、農薬に曝露するほどがんの罹患リスクが上昇することが報告されている。ある英国の研究では、今回の研究と同様に、オーガニック食品を摂取すると非ホジキンリンパ腫の罹患リスクが低減することが示されているという。

今回の研究は、フランスで進行中の栄養と健康に関する研究に参加した成人男女6万8,946人(ベースライン時の平均年齢44.2歳、女性78%)のデータを分析したもの。参加者には質問紙調査を実施し、果物や野菜、乳製品、肉、魚、卵、パンなどのオーガニック食品の摂取状況について尋ねた。

平均4.5年間追跡して解析した結果、がんの家族歴や生活習慣因子などを考慮しても、オーガニック食品を摂取するほど、がんの罹患リスクが低減することが明らかになった。オーガニック食品の遵守度スコアが最高四分位群では、最低四分位群に比べてがんリスクが25%低かった(ハザード比0.75、95%信頼区間0.63~0.88、傾向P値0.001)。オーガニック食品の摂取頻度が高い人では、特に閉経後の乳がんリスクは34%低下し、全てのリンパ腫リスクは76%、非ホジキンリンパ腫リスクは86%それぞれ低下したという。

しかし、Baudry氏をはじめとする専門家らは、オーガニックか否かにかかわらず、果物や野菜が豊富な食事は慢性疾患やがんのリスクを低減することは明らかであり、「オーガニック製品を買えないからといって果物や野菜の摂取をやめるべきではない」と指摘している。米国がん協会(ACS)のMark Guinter氏は「人種にかかわらず、果物や野菜の摂取ががん予防につながることは明らかだ」と話している。論文の付随論評を執筆した米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院のFrank Hu氏によると、動物実験レベルでは農薬によりDNA損傷が進み、がんリスクが増大する可能性が示されているという。しかし、GuinterとHuの両氏は、がん予防を目的とした食事に関する新たな勧告を出すには、その根拠となるヒトを対象としたエビデンスがまだ不十分だとし、「現時点では食事や運動を通して適正体重を維持することががん予防には重要だ」との見解を述べている。Hu氏は「オーガニック食品かどうかにかかわらず、果物や野菜の摂取量を増やすことは食事の質を改善し、がんを含めた慢性疾患の予防に有用だと考えられる」と付け加えている(HealthDay News 2018年10月22日)Copyright © 2018 HealthDay. All rights reserved.

 

 

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