中食市場規模10兆円突入の背景と、2020中食トレンド予測
2017年に市場規模が10兆円へ到達し、9年連続で中食市場は拡大している。働く女性の増加や高齢化などの社会トレンド変化が食の外部化比率を高めており、それが市場拡大の要因となっている。以前と比較して中食に対してポジティブに捉える人が増えていることもあり、今後も中食市場は成長を続けると考えられる。前半では中食市場規模について、後半では中食業界の動向について解説。
目次
中食の市場規模推移 2019年発表
中食の定義
「中食」はレストランなど外出先で食べる「外食」と家庭内で手作り料理を食べる「内食」の中間で、家庭外で調理・加工された食品などの市販の弁当や惣菜などを家庭・職場・学校・屋外などへ持ち帰り、調理加熱することなく食事として食べられる状態に調理されている、日持ちのしない食品の総称のことを指す(農林水産省より)。中食は3タイプに分類される。
- テイクアウト型
コンビニエンスストア、スーパー、デパ地下などで購入 - デリバリー型
ピザや寿司などの宅配 - ケータリング型
自宅など特定の場所で、シェフや栄養士などに調理してもらう
中食(惣菜カテゴリー)の具体例は以下の通り。
米飯類 | おにぎり、寿司、弁当など |
調理麺 | 調理済み焼きそば、うどん、そば、スパゲティーなど |
調理パン | サンドイッチなど (※常温売場で販売されている菓子パンは含まない) |
一般惣菜 | 和・洋・中華の惣菜、煮物、焼物、炒め物、揚物、蒸し物、和え物、酢の物、サラダなど |
袋物惣菜 | “容器包装後低温殺菌され、冷蔵にて1カ月程度の日持ちする調理済包装食品” ポテトサラダ等のサラダ、肉じゃが、 鯖の味噌煮など |
【画像】日本惣菜協会「2019年版 惣菜白書ダイジェスト版」よりウーマンズラボ作成
中食市場規模
日本惣菜協会が2019年に発表した「惣菜白書2019年版」によると、2018年の中食市場規模は10兆2,518億円に。前年比1,963億円増。10年前は8兆2,516億円で毎年成長を遂げており、好調な推移を見せている。
中食のカテゴリー別構成比
中食の市場規模の内訳を構成比で見ると、大半を占めるのが米飯類と一般惣菜。
- 1位:米飯類(46.4%)
- 2位:一般惣菜(35.7%)
- 3位:袋物惣菜(7.1%)
- 4位:調理麺(5.7%)
- 5位:調理パン(5.1%)
中食の業態別市場規模
中食の業態別市場規模の構成比は、コンビニのシェアが最も高く、専門店、食品スーパーが続く。
- 1位:CVS(32.3%)
- 2位:専門店・他(28.8%)
- 3位:食品スーパー(26.2%)
- 4位:総合スーパー(9.2%)
- 5位:百貨店(3.5%)
中食の年齢別市場規模
性別・年齢別の中食市場は以下の通り(本調査は都市圏に限っているため地方は含んでいない)。
- 3圏域計において、性年代別の中食市場は「男性(40歳代)」が延べ回数シェアで最も高く市場規模シェアも最も高い
- 中食単価が対前年度比で最も伸びた性年代は「男性(20歳代)」で、前年の742円が816円となり、前年度比+10.0%であった
- 延べ中食購入回数が最も伸びた性年代は「男性(50歳代)」(前年度比+8.1%)で、「女性(20歳代)」(同+7.9%)、「男性(60歳代)」(前年度比+7.2%)、「女性(40歳代)」(同+7.0%)でも大きく伸びた。
- 中食市場規模は「女性(20歳代)」「女性(40歳代)」(前年度比+11.0%)でそれぞれ伸び率が高かった
内食・中食・外食の市場規模を比較
内食と外食の定義
- 「内食(ないしょく・うちしょく)」は、家庭内で食材を料理して食べること、またはその食事のこと
- 「外食」は、レストランや食堂などへ出かけて食べること、またはその食事のこと
外食産業との違い
中食と外食は具体的にはどのような違いがあるのか?外食産業の詳細分類と外食産業市場規模推計値は以下のサイトが参考になる。
- 平成30年外食産業市場規模推計(一般社団法人日本フードサービス協会)
内食・中食・外食の市場規模を比較
内食、中食、外食の中で成長が著しいのは中食で、10年前と比較すると122.3%増。次に成長しているのは内食で、外食は横ばい。
中食業界の動向と今後の予測
中食ニーズが拡大している理由
外食産業の市場規模が横這いであるのに対し、堅調な拡大を見せる中食市場。中食ニーズが拡大している理由は以下7つが関係している。
1.女性の社会進出
- 時短需要の高まり(女性は日々のタスクが多いので、家事の負担を軽減したいなど時短需要が高い)
- 忙しい毎日でも、美味しいものを手軽に自宅で食べたいニーズ
2.共働き世帯の増加
- 時短需要(共働き世帯は夫婦ともに時間がない)
3.単身世帯の増加
- 個食ニーズ(一般食材だと、使い切る前に腐らせてしまう)
- ちょこっとずつ、色々なものを食べたいニーズ
4.高齢化
- 個食ニーズ
高齢単身世帯(65歳以上)と高齢一般世帯(世帯主65歳以上)の食品支出構成を比較すると、高齢単身世帯は生鮮品など素材関連への支出が少ない一方、外食や惣菜など調理食品への支出が多い。同じ高齢世帯でも単身と一般世帯で支出内容に違いがみられた。退職後に単身となった男性は、調理習慣がない人も多いとみられ、外食や調理食品への支出が高くなるのは自然である。高齢層の消費には世帯構成の影響を強く受けるなど、一括りに出来ない多様さがあり、顧客セグメントの見直しなどの対応が必要となる。(引用:一般社団法人全国スーパーマーケット協会「社会構造の変化と消費」)
5.家ナカ消費の活発化
- 自宅での時間を豊かにしたいニーズ
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6.中食に対するイメージの変化
- 中食の充実化が進み、消費者の中食に対する考えがポジティブに変化
7.介護世帯の増加
- 時短需要(介護をしながらの食事準備では時短が求められる)
介護世帯と一般高齢世帯(要介護者のいない高齢世帯)で食品支出の内容を比較すると、介護世帯では生鮮品など素材の支出が少ない一方、調理食品や外食の支出が多いという特徴がある。(引用:一般社団法人全国スーパーマーケット協会「社会構造の変化と消費」)
今後の中食市場のトレンド
今後、中食市場はどのように変化していくのか。トレンドキーワードは3つ。
1.テイクアウトの多様化
テイクアウト品の多様化が中食人気をさらに押し上げるだろう。例えば以下は最近注目を集めているテイクアウト。今後はさまざまなタイプの「進化系テイクアウト」が登場しそう。
- 飲食店などの残り物を安く売ってフードロス問題解決にも貢献するマッチングサービス「TABETE」
- キッチンカー。以前よりあったが近年急増し、多種多様な料理が登場。オフィス街での需要も高い(以下図「Googleトレンド:キッチンカー」)
- 人気店による弁当販売
2.デリバリーサービス人気の高まり
デリバリーサービスのポータルサイト「出前館」や、フードデリバリーサービス「ウーバーイーツ」、レストランサービスを丸ごと配達する「マイシェフクイック」、低価格で食べられるお弁当を日替わりで会社に届ける「ショシャクル」など、社会の多様なニーズに応えるために様々なタイプのデリバリーサービスが登場。デリバリーサービスの多様化に伴い、今後さらに需要は伸びそうだ。
3.ヘルシー・安心・安全な中食
食品業界全体では「ヘルシー」が広がっているが、中食市場でいまだ不足しているのが「ヘルシー感」。今のところ中食は「味付けが濃い」「塩分が多い」「揚げ物系が多い」が特徴で、健康意識が高い女性にとっては、日々の食事に中食を取り入れるのは抵抗がある。低カロリー、低GI、無農薬、減塩、低たんぱくなどをテーマにした中食の登場が期待される。
2020年度の女性市場トレンド
中食市場における、女性の心を掴むマーケティング戦略立案では「中食市場トレンド×女性市場トレンド」を組み合わせて考えたい(2020年度の女性市場トレンドについては、当サイトの運営会社「ウーマンズ」が2020年2月の幕張メッセ開催展示会で登壇した講演内容「2020年度の女性市場トレンドと消費傾向」を記事化しているので、そちらもぜひお役立てください)。
「ヘルシー中食」に期待
中食の市場拡大は今後も続く見込みだが、同時にレッドオーシャン化は必至で、中食市場にも差別化戦略が求められるようになるだろう。特にまだ不足しているのは前述のヘルシー要素。ヘルシーな中食が種類豊富になることを期待したい。中食に対する消費者ニーズは以下の記事をチェック。
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