一人暮らし女性の朝ごはん 実態・ニーズ・人気メニュー
結婚しない女性が増え、晩婚化が進む国内で近年注目を集めているのが「女性のおひとり様市場」。2030年には全人口の約半数がシングルになるという予測もあり(野村総合研究所)、日本全体の消費割合のうち「一人暮らし女性(夫と死別したシニア女性含む)」の消費割合は今後さらに拡大する見込みだ。お金の使い方も時間の使い方も買い物の仕方も全てが自由な一人暮らし女性は、朝食に対してどのようなニーズがあるのか。中でも特に現役世代の女性の朝ごはんに着目した。
目次
一人暮らし女性の朝ごはんの実態
年齢別に特徴が見られる朝ごはんの状況
平成29年国民健康栄養調査では、一人暮らし女性の朝食摂取の状況を年齢階級別に調査している。赤い囲み線の数字をチェック。
- <特徴>
・若い人ほど朝食欠食率が高い
・30〜40代の働き世代は他の年代と比べ、時短で便利な調理済み食を活用する人の割合が高い
・年齢の上昇とともに家庭食(自炊食)を食べる人の割合が高くなる
朝ごはんを食べない理由
特に20代に多く見られる朝食の欠食。親元を離れ一人暮らしを始めて生活習慣が乱れることが、一人暮らしの若者の朝ごはん欠食要因と指摘されているが、30代以降でも欠食者は一定数いる。必要と分かっていてもなぜ食べないのか?理由は以下(対象:20〜50代以上の男女182名)。
- 1位:朝食をとるより出かけるまで寝たいから
- 2位:食欲がないから
- 3位:作るのが面倒だから
- 4位:朝食をとる習慣がないから
- 5位:朝食が用意されていないから
- 5位:朝食の時間がもったいないから
- 5位:朝食を食べるのが面倒だから
- 8位:1日に2食で十分健康だから
- 9位:通勤途中で腹痛にならないため
※参考:ファナティック「朝食に関するWEB調査」
朝ごはんが推奨されている理由
朝ごはんを食べない若者が多いが、朝ごはんの摂取有無が体に与える影響は大きい。
- 【朝ごはんの主な役割】
・脳のエネルギー源であるブドウ糖の補給で、脳とからだを元気にし、目覚めさせる
・午前中の活動のエネルギー源になる
・体温を上げて、体が活動できる状態にする
・昼ごはん以降のドカ食いを防ぐ(血糖値の急激な上昇・低下の防止)
急激な血糖値の上昇や低下が眠気や集中力の低下などの原因になると言われています。つまり、朝ごはんを食べないと「朝、ボーっとしていて、昼食後はひどい眠気に襲われがち」になる。これでは仕事や勉強がはかどるはずがありません。文部科学省の「全国学力・学習状況調査」でも、「毎日、朝ごはんを食べる子どもほど学力が高い傾向がある」ことが明らかになっています。さらに、朝食習慣の有無が年収に影響すると指摘する研究者もいます。(引用:朝日新聞DIGITAL「学力も左右する?朝ごはんが大事な理由」)
朝ごはんの外食場所
朝ごはんを自宅外でとる人はどこで食べているのか?(対象:全国の男女1,000名)。「学校・職場」の次に多いのが「カフェ」「ファストフード店」。
調理済み食を購入する場所
一人暮らしの女性は調理済み食をどこで購入するのか?朝食に限定した調査ではないが、調理済み食の購入場所に関する調査結果がある(対象:全国の20~60代の女性515人)。
- 1位:スーパー(75.5%)
- 2位:コンビニ(59.8%)
- 3位:パン屋(18.0%)
- 4位:デパ地下・百貨店(13.6%)
- 5位:お弁当屋(12.8%)
※食の研究会「1人暮らしにおける食生活の意識・実態調査」をもとに編集部で集計
一人暮らしの自炊・外食事情
若い人ほど自炊の頻度が低く、外食の頻度が高い。毎日自炊をしない理由は年齢によって異なる。
- 【女性20代】
1位:作るのが面倒だから(70.8%)
2位:作る時間がないため(51.4%)
3位:食材を無駄にしてしまうから・無駄にしたくないから(36.1%)
4位:献立を考えるのが面倒だから(30.6%)
5位:皿洗い・調理器具の後片付けが面倒だから(27.8%)
6位:食材を買うのが面倒だから(25.0%)
7位:作るより買った方が安いから(22.2%) - 【女性30代】
1位:作るのが面倒だから(69.1%)
2位:作る時間がないため(50.0%)
3位:食材を無駄にしてしまうから・無駄にしたくないから(27.9%)
4位:作るより買った方が安いから(23.5%)
5位:皿洗い・調理器具の後片付けが面倒だから(20.6%)
6位:献立を考えるのが面倒だから(19.1%)
7位:食材を買うのが面倒だから(16.2%) - 【女性40代】
1位:作るのが面倒だから(69.5%)
2位:作る時間がないため(39.0%)
3位:食材を無駄にしてしまうから・無駄にしたくないから(35.6%)
4位:献立を考えるのが面倒だから(25.4%)
5位:作るより買った方が安いから(22.0%)
6位:食材を買うのが面倒だから(18.6%)
7位:皿洗い・調理器具の後片付けが面倒だから(16.9%) - 【女性50代】
1位:作るのが面倒だから(68.8%)
2位:作るより買った方が安いから(37.5%)
3位:食材を無駄にしてしまうから・無駄にしたくないから(31.3%)
4位:作る時間がないため(22.9%)
5位:献立を考えるのが面倒だから(18.8%)
6位:食材を買うのが面倒だから(8.3%)
6位:皿洗い・調理器具の後片付けが面倒だから(8.3%) - 【女性60代】
1位:作るのが面倒だから(64.0%)
2位:食材を無駄にしてしまうから・無駄にしたくないから(52.0%)
3位:作るより買った方が安いから(32.0%)
4位:献立を考えるのが面倒だから(28.0%)
5位:作る時間がないため(8.0%)
5位:皿洗い・調理器具の後片付けが面倒だから(8.0%)
7位:食材を買うのが面倒だから(4.0%)
※食の研究会「1人暮らしにおける食生活の意識・実態調査」をもとに編集部で集計
一人暮らしの朝ごはん4大ニーズ「簡単・節約・栄養・環境」
「一人暮らし 朝ごはん」でネット検索をすると、サジェストキーワードに「簡単」「節約」「栄養」があがる。一人暮らしの朝ごはんニーズをキーワード別に見てみよう。他、一人暮らしの隠れニーズ「環境」についてもチェック。
簡単・楽・時短
- 忙しい朝は朝食の準備の時間を確保するのが難しい
- 社会人になり収入が増えると、安さよりも簡単で時短な朝食のニーズが強くなる
- 実際に一人暮らしの20代前半と後半では、自炊で重視するポイントが異なる。前者は「安さ」、後者は「時短」(象印「ひとり暮らし20代 自炊と調理に関する実態調査」)
節約・安い・コスパ
- 収入が少ない若い人ほど節約志向が強い(象印「ひとり暮らし20代 自炊と調理に関する実態調査」)
栄養
- 食による美容・健康志向の高まりで、乱れがちな朝食の栄養バランスを気にする女性は増えてきている
- 若い人ほど栄養バランスが乱れがち
以下グラフは「1日に2回以上、主食・主菜・副菜を揃えて食べる日が週に何日あるか」に関する回答結果。
環境
一人暮らしの朝食においてどのような環境が求められているのか?がわかる調査結果がある(対象:サービス業および製造業に従事する2社の従業員182人)。一人暮らしの人が主に求めている環境は以下。
- 会社で手軽に食べることができる環境(50人)
- 家族や周りの人が朝食を用意してくれる環境(40人)
- 朝食の経済的な援助(33人)
- 外食やコンビニなどで手軽に朝食が取れる環境(19人)
自分では朝ごはんの用意ができないが、何らかの形で朝ごはんを食べられる環境があれば食べたいというニーズが垣間見える。
一人暮らし女性に人気の朝ごはん例
一人暮らしの女性に最近人気の朝ごはんは具体的にどのようなものなのか?人気の朝ごはん8パターンを以下にピックアップ。
グラノーラ
簡単・時短なのに栄養価あり、の王道の手軽食品。穀物類だけでなくナッツやドライフルーツが入っているのも女性に人気の理由。小腹が空いたときのおやつとしても人気。以下に並ぶ3つ目の商品は「噛み応えやサイズ感に満足」と評価が高い。ただし毎日食べるには、添加物、脂質、糖質を気にする女性も。
パン
太りやすい女性に共通する食生活の一つが、パンの朝ごはん。バター、ジャムと合わせて食べるケースが多く、おかずのバリエーションが乏しくなりがち。パンのおかずとして多いのは、ウィンナー、ハム、卵、チーズ、ヨーグルト。メニューに変化がなく栄養バランスが偏りやすい。高級食パンがここ最近はブームになっているが、腹持ちや健康面を考えるなら、パンよりも米の朝食の方が優秀。腹持ちの悪さは昼食のドカ食いにつながる。
作りおき
休日や前日の夜に作りおきをし、忙しい朝は冷蔵庫・冷凍庫から出すだけの時短朝ごはん。時間も生活行動も自由な一人暮らし女性は、朝ごはんを食べる時間がなくても外で買って食べることができるので、ママほどは作り置きを重視しない。ただし、年齢の上昇とともに健康意識の向上が影響し、作り置きの比重は高まる傾向に。
コンビニ
女性がコンビニで選ぶ朝ごはんは、箸を使わずにすむサンドウィッチ、おにぎり、菓子パン、野菜ジュース、飲料ゼリーなど。とはいえ、もともとヘルスリテラシ―が男性より高い女性たちは、自炊派が主流。
みなさんはどの位の頻度でコンビニエンスストアを利用しているのでしょうか。(略)性別で「週1回以上」という声を見てみると、男性回答では69.6%であったのに対し、女性は68.8%とほぼ変わらず。ところが「週4回以上」(男性=25.4%、女性=16.3%)という声では男性が9.1%も高い25.4%を数え、高い頻度でコンビニを利用する男性の行動が浮き彫りとなりました。(引用:Asahi「第511回 コンビニで何を買う?」)
ホテルの朝食バイキング
日々頑張る自分へのご褒美やリフレッシュとして人気なのが、宿泊しなくても利用できるホテルの朝食バイキング。既婚女性と比べ、自由に使えるお金が多く時間の都合もつきやすいため、ホテルの朝食バイキングは一人暮らし女性に特に人気。
朝カフェ
朝時間を有効活用したいニーズが高まる中、カフェで朝食をゆっくり食べて出社するスタイルが広まっている。「休日寝て過ごすのがもったいない」と、休日だからこそ早起きして朝カフェする女性たちも。
ワンプレート朝ごはん
さまざまな料理を1枚の皿に盛り付ける「ワンプレート朝ごはん」。皿をたくさん使わなくてすむこと、カフェメニュー気分を味わえること、インスタ映えすることから人気の朝食スタイル。ワンプレート朝ごはんの主役は、バタートースト、クロワッサン、クルミパン、コッペパンなど。卵料理は定番のおかず。かわいい盛り付けでインスタ映えするよう、野菜やフルーツが多いのも特徴。
会社で朝ごはん
特に1人暮らし女性に重宝され喜ばれているのが、会社が朝食を提供する朝ごはんスタイル。働き方改革が広まる中、長時間労働是正や朝型勤務推奨のために朝食を無料提供する会社が登場してきている。
朝食に関する情報
クラスターごとに異なる朝ごはんニーズ
「一人暮らし女性」といっても、「就職したばかりでまだ生活も気持ちも安定しない20代前半女性」「仕事に慣れてきて、ある程度の貯蓄もあり、収入も多い30代女性」「非正規雇用の貧困層女性」「夫と死別・離婚をしたシニア女性」などさまざまなクラスターが存在するので、朝ごはんニーズや課題はそれぞれ異なる。
ヘルスリテラシーがもともと高い女性は一般的に、年齢の上昇とともに自身のヘルスケア管理のために食に気を遣う傾向が強くなる。「時短・簡単」を打ち出すなら若い世代の女性を。「手間暇かかって値段も少々高く質も高いが、ヘルシー・安心・安全」を打ち出すなら中高年世代の女性を。このようにターゲット女性ごとにマーケティングは変えるべきだが、全クラスターで共通している唯一のことは、一人暮らし女性は時間もお金も自由に使えること。魅力の伝え方次第では、彼女たちの朝ごはんニーズを即座にキャッチすることは可能だろう。
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