「AIホスピタル」2022年の実現に向け採択された14の研究開発事業(1/4)
未来を担う最先端技術の一つAI(人工知能)。すでに数多くの業種・業態で活用されている。医療分野では、問診票や薬の処方箋、診察での画像データなど様々なデータが蓄積されている。こうしたデータを有効活用するため、AIを用いて医療現場の課題を解決しようとする取り組みが産学官連携で進められている。その一つが、今回紹介する「AIホスピタル」である。
目次
AIホスピタルの基礎知識
AIホスピタルとは?
AIホスピタルとは、AIやIoT(モノのインターネット)、ビッグデータなどの技術を活用した高度診断・治療システムのこと。デジタル化技術を用いて医療現場から収集・統合した膨大なデータをAIで解析し、病気の進行や治療効果の予測、投薬の調整などを支援する。
同じ病気だと診断されても、患者によって疾患背景は異なる。また薬剤に対する反応も様々だ。個々の患者に合った最適な医療の提供には、画像情報や病理診断情報、ウエアラブル装置からの情報、ゲノム(遺伝子)情報を含む診療・投薬情報を効率的に収集することが求められる。
AIホスピタルでは、「ビッグデータベースの構築」「AIによるデータ解析の導入」などによって、医療現場に最適な治療法の選択を提供することを支援する。さらに医療現場における教育やコミュニケーション支援などにも活用でき、超高齢社会における医療現場の様々な問題を解決できるシステムとして期待されている。
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国家プロジェクト「SIP」の一つとして始動(内閣府)
AIホスピタルは、内閣府が主導する「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の一環として2022年までの構築を目指している。SIPとは、科学技術イノベーションを実現するために創設されたプログラム。総合的・基本的な科学技術政策の企画立案と総合調整を行う「総合科学技術・イノベーション会議」が指揮を執り、基礎研究から実用化・事業化までを見据えて一気通貫で研究開発を実施。府省連携による分野横断的なプロジェクトを産学官連携で推進している。
AIホスピタルは、SIPで掲げる第2期(平成29 年度補正予算措置分)プロジェクトのうち、「健康・医療」の分野でプロジェクト化されたもの。AIやIoT、ビッグデータ技術を用いたAIホスピタルシステムを開発・構築することで、高度で先進的な医療サービスの提供と、医師や看護師の抜本的負担軽減など医療機関における効率化を実現し、社会実装することを目指している。
プロジェクト全体を指揮するプログラムディレクター(PD)は、がん研究所がんプレシジョン医療研究センター所長である中村祐輔氏。(オーダーメイド)個別化医療を提唱し、米国シカゴ大学の名誉教授を務めるなど、ゲノム医療の第一人者として知られる。