介護分野におけるICT化の必要性と導入のメリット、活用事例(1/3)

超高齢社会で人手不足が今後さらに顕著になっていく介護業界の対応策として、国は医療・介護業界でのICT活用を積極的に推進。未だに「手作業と紙文化でアナログな業界」というイメージが強い介護業界だが、画期的なICTの導入が増え、3Kのイメージが払拭される未来がようやく見えてきた。介護業界を救う救世主は外国人労働者だけではない。国外の人手に頼る前に、まずは介護業界におけるICTのメリットや事例を参考にICTで解決できる道を模索してみてはどうだろう?ICT導入にあたり課題もあるものの、享受できるメリットは大きい。

介護分野でICT活用が進む背景

介護分野におけるICT活用とは

ICT(Information and Communication Technology/情報通信技術)とは、メールの送受信やSNSでのやり取り、スマートスピーカーといった「人と人」「人とモノ」のコミュニケーションに関わるコンピューターの使い方、情報伝達・共有によるコミュニケーションへの活用法を指し、情報・知識の共有を主な目的としている。

昨今では医療や教育、農業や地方創生といったあらゆる分野でICTの活用が促進されており、その波は介護業界にも。他業界に比べてやや遅れ気味ではあるものの、業務効率化やサービスの質の向上のため介護分野のICT化が推進されている。

例えば「関連情報の記録による見える化」「データの蓄積」「タブレット端末の活用による作業効率化」「見守り機器・介護ロボットの導入」などだ。国・業界レベルで取り組みが始まる介護分野のICT活用と言えば、CHASEが挙げられる。CHASEは科学的介護(科学に裏付けされた介護)の実現に向け政府が2020年度の本格運用を目指しているデータベースのことで、「Care, Health Status & Events」の略。利用者の心身状態や介護サービスの介入状況、起こった変化に関する情報を収集するもので、介護領域におけるサービスの質と効果について科学的裏付けとしてのエビデンス構築を目的としている。

介護分野でICT活用が必要とされる理由

介護分野の課題は、「人材不足」「人口構造の変化」「社会保障費」の3つが挙げられるが、ICTを導入することによって、これらの課題を解決する可能性が期待されている。

理由1:人材不足を解消できる

平均給与が低く依然としてネガティブなイメージが強い介護職は常に人手不足。人材確保のために賃金を上げたくても、介護報酬が抑えられているためそう簡単に賃金を上げることもできないという構造がある。職員の賃金を上げるための制度(厚生労働省「介護職員処遇改善加算」)があるものの、適用となるための要件を満たすにはそれなりのコストがかかるため、利用しない介護事業所も多い。一方でICTを積極的に活用することで生産性を向上できれば、利益が向上し賃金を上げられる可能性を期待できる。

理由2:人口構造の変化への対策

国内の65歳以上の人口は増え続けており、総人口に占める割合は2040年には35.3%と予想されている。反対にこの層を支える側の人口はどんどん減っていくため、介護サービスの需要がこれまで以上に高まるのは必至。その時までにICTによる業務のマニュアル化が十分に進んでいれば、事業者が介護施設を展開するハードルは低くなる。また政府はマルチタスク型の介護職の仕事をICTの活用によって分散化することで、介護業界におけるシニア層の雇用を広げたい狙いもある。人口構造の変化に対応した雇用機会拡大の糸口にできることが期待される。

理由3:社会保障費の増大をカバー

介護業界にICTを導入するにはコストがかかるが、結果的に事業のコスト削減につながるメリットがある。例えば人件費は介護ロボットの活用で改善が可能。また情報の管理や記録を介護ソフトで賄えば、業務時間の削減となり、結果として残業代のコストカットにつながる。超高齢社会である日本では社会保障費が増大しており、その背景には介護を要する人口の大幅な増加が関係している。ICT導入効果としてコスト削減を実現できれば、社会保障費の増加を食い止めるきっかけとなるかもしれない。



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