コロナ後、需要が高まる事業は? 

米国トランプ大統領は「自国ファースト」を掲げ、イギリスはEU離脱。主要先進国の動きは世界に混乱をもたらしながらも、それでも世界はグローバリゼーション一辺倒だった。しかし、新型コロナを機に世界各国・企業がそのリスクの高さを痛感することとなった。新型コロナ終息後、仮に「脱グローバル依存」が急速に進むとしたら、どんな分野が発展するのか?

インフラ関連のテクノロジーが発展

それについて分析しているベンチャーキャピタルのCoral Capital(東京・千代田)CEOのJames Riney氏の見解が興味深いのでご紹介したい。同氏は、「新型コロナウイルス後の世界を予想する(2):コロナウイルスによって世界は閉ざされるか、開かれるか(2020.4.7)」内で、新型コロナ後に大きく発展する可能性のある産業として「国内の製造およびサプライチェーンのインフラに関連するテクノロジー」を挙げている。

問題は、この新型コロナウイルスによって世界が閉鎖的で保護主義的な方向へ進むのか、それとも以前に増してオープンで協力的になるのかということです。

(中略)

現在の危機的状況から回復する段階になったとき、グローバル化に対する人々の見方が変わる可能性があります。企業は、支出が多くなるとしても、より強靭かつ国内のウェイトが大きいサプライチェーンを選ぶようになるかもしれません。もしかしたら政府さえも介入し、重要であると判断した産業に対して国内のバックアップ・プランや備蓄を作るように命令するかもしれません。利益は犠牲になるかもしれませんが、安定感が得られるでしょう。

このようなトレンドによって、国内の製造およびサプライチェーンのインフラに関連するテクノロジーが大きく発展する可能性があります。サプライチェーンを国内へシフトするために企業が奔走し、対費用効果の高い方法を探す中で、ロボット、オートメーション、3Dプリンティングなどが今よりはるかに多くの企業に採用されるようになるかもしれません。これまで変化を拒んできたようなレガシー業界も、デジタル・トランスフォーメーションの波に乗るほかなくなるかもしれません。

ヘルスケア業界でもDX進む

脱グローバル化に向け「国内の製造およびサプライチェーンのインフラに関連するテクノロジーが発展するのでは」とのことだが、この他にも今回の世界的な医療崩壊や医療崩壊リスク、人から人への感染リスクなどから学んだ課題を反省点に、これから様々な分野でDX(デジタルトランスフォーメーション)が進むはずだ。

例えばオンライン診療やロボットを活用した介護などのヘルステック、システムを駆使した無人店舗運営などが大きく成長する可能性が高い。

伊病院、医療ロボットが活躍

実際に新型コロナが深刻なイタリアの病院では、医療ロボットがすでに活躍しているという。重症患者がいる病棟で使用され、ロボットが患者のバイタルを読み取る。医師も看護師も感染リスクを回避できる(以下Twitter動画)。これこそテクノロジーが人々にもたらす大きな貢献だ。

オンライン診療アプリの広がり

オンライン診療アプリも、今回を機に急速に関心が高まっている。オンライン診療アプリは多くの患者を救うツールであるにも関わらず、政府による規制、認知度の低さ、ユーザー側の心理的ハードル(難しそう、手続きが煩雑なのでは?など)、何より導入する医療機関の少なさが影響し、広がりそうでなかなか広まらなかった。しかし新型コロナを機にオンライン診療導入に踏み切る医療機関は増えはじめ、また政府も規制緩和に動いている(初診は対面診療が必須であったが、感染予防の観点から初診からオンライン診療を可とする方針を4月5日に固めた)。

新型コロナ終息後

DXを推進する動きは国内ですでに起きており、デジタルを駆使すれば業務効率がはるかに高まるツールはすでに世の中にあったが、レガシー業界・レガシー企業を中心に、実際はDXはなかなか進まなかったのがこれまでだった。

無人店舗は話題性が高く人手不足に対応できるとしながらも実際は導入コストの高さや、運用の難しさがハードルとなり、中々浸透していない。また無人店舗に切り替えることにより、販売員の雇用をどうするかといった課題もある。しかし、もし現時点で無人店舗が社会に広まっていたら、食品スーパーやドラッグストアなど、営業自粛が難しい業界で仕事をする多くの人たちが、新型コロナを恐れながら出勤・接客する必要はきっとなかっただろう。

もし現時点で医療用ロボットの活躍がすでに標準になっていたとしたら、新型コロナの対応で亡くなってしまった多くの医療関係者たちの尊い命を守ることができただろう。

これまではテック系ベンチャーを中心に、最先端のテクノロジーを駆使した事業展開が行われてきたが、新型コロナ終息後はDXを遠ざけてきた業界・企業の間でも、これまでにないスピードと規模感で最先端のテクノロジー導入が進んでいきそうだ。

 

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