年代特有の行動が判明 「消費に満足した時・不満だった時どんなアクションをとる?」

経産省は今月、「消費者・事業者間の円滑なコミュニケーション等に関する調査報告書」を公表した(調査実施:三菱UFJリサーチ&コンサルティング)。近年変化する消費者と企業のコミュニケーションの実態を把握し、コミュニケーション円滑化を目指すことを目的としたもので、商品・サービスに対する消費者のアクション、電話での問合わせに関する日本人の特徴、企業が活用しているコミュニケーションツール、企業のSNS炎上対策など、マーケティングやカスタマーサポートに役立つ調査結果や企業事例をまとめている。

企業とのトラブル件数、ピークは2004年

レポートによると、業種・業態によって違うものの、近年は全体的に消費者から企業への問合せ・意見は減少傾向にあるという。代わりに増えている消費者の行動は「自力で調べて対応」「(良いことも悪いことも)SNSで意見を発信」。ネットやSNSの普及を背景に、消費者が企業へ直接物申すといった行動は減っているようだ。

それを裏付けるデータがあるので見てみよう。一つ目は、「被害を受けた商品・サービスについて、誰に相談したか?」の調査結果(H26〜R元年)。これについてレポートは次のように考察している。

  • 消費者が製造元・販売店に直接問合せるケースは、直近5年は横ばい傾向
  • 一方で、家族・知人等へ相談する傾向は高まっている
【出典】MUFG

【出典】MUFG

二つ目のデータは、消費者生活センターへの相談件数の推移。グラフの通りトラブル件数のピークは2004年で、以降は横ばい傾向。これについても同様の考察をしており、「企業とのトラブル件数は横ばいであると推定できる」とのこと。

【出典】MUFG

【出典】MUFG

消費に満足・不満だった時、どんな行動をとる?

では最近の消費者は、企業に何か言いたいことがある時、どのような行動をとるのだろうか?「消費に対する満足時・不満時に、どのようなアクションをとっているか?」という質問を年代別に聞いたところ、「満足した時」「不満を感じた時」、いずれも年代特有のアクションが見られた。一言で言うなら、若い人はネット上で意見を発信し、高年齢ほど直接企業に問い合わせをする。具体的には次の違いが見られた。

満足した時のアクション

  • 若年層ほど、商品・サービスの良かった点をSNSで発信する人が多い
  • 企業に問い合わせて商品・サービスの良かった点を直接言う人は、50代・60代に多い
  • 全年代において、商品・サービスの良かった点を友人・家族へ口コミをする人が多い
  • 満足したことで商品・サービスの利用頻度を増やす人は、年代関係なく1割程

不満だった時のアクション

  • 若年層ほど、商品の不満点をSNSで発信する人が多い
  • 企業に問い合わせて商品・サービスの不満を直接言う人は、年代とともに多くなる
  • 全年代において、商品・サービスの悪かった点を友人・家族へ口コミする人は、良かった点を口コミする人より少ない
  • 不満だったことで商品・サービスの利用頻度を減らす人は、年代関係なく2割強いる
【出典】MUFG

【出典】MUFG

ポジティブなことであれネガティブなことであれ、企業に直接問い合わせる割合が中高年で高いのは、(近年は大差はなくなってきたものの)SNS利用率が若年層より低いことと、何か言いたい時は企業に直接問い合わせるという世代特有の文化が残っているからだろう。近年は高年齢層のSNS利用率も年々上がっているので、若者ほどには使いこなせないまでも、簡易的な方法であればSNSやネットで発信する人は今後増えていくと考えられる。

とは言え、好まれるのはデジタルより従来のコミュニケーション

調査結果が示す通り、SNS・ネットの普及を背景に、消費者と企業が直接コミュニケーションをとる機会は減っている。だが一方で、こんなことも調査で明らかになっている。同レポートによると、国内外の8,000人を対象にしたコミュニケーションツールに関する調査では、メール・電話・対面での従来型コミュニケーションは年代を問わず半数以上に好まれていることがわかり、さらには、その割合は、有人オンラインチャットやSNSなどのデジタルコミュニケーションを好む割合より高いことがわかった(調査対象:1965年以前生まれ,1965~1980年生まれ,1981~2000年生まれ)

その理由までは調査されていないが、言えることは、従来型の方法が、決して悪い意味で遠ざけられているわけではないということ。企業にすぐに・確実に問い合わせができることや、デジタルではなくリアルな人と話せることは、やはり消費者にとっては利便性が高く価値があるようだ。DX化が進んでも、ある程度は従来型の方法は残しておく方が良いだろう。ただ業種・業態によって受容性は異なるので、デジタルとアナログのバランスの設定は要検討だ。

 

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