「不調を我慢」は当たり前、10,000人調査でわかった女性特有の不調事情

20代〜50代女性の約8割が、不調があるのに我慢をして仕事・家事をしていることが、ツムラの調査でわかった。生活や健康に支障がない程度の軽い不調なら問題はなくても、我慢を続けたことで6割が体調を悪化させたというから、これは問題だ。なぜ多くの女性が不調を我慢しているのか?(調査:「隠れ我慢に関する実態調査」2021.3)

体調が悪くても我慢して仕事・家事、8割

調査は20〜50代の女性10,000人を対象に実施。「心身の不調を我慢していつも通り家事や仕事をすることがあるか?」と聞いたところ、「我慢している」と回答した女性は79.2%に上った。

【出典】ツムラ

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なお年代別に見ると顕著なのは20代と30代で、“隠れ我慢”は特に若い人に多いことがわかった。これについて心理カウンセラーの下園壮太氏は、次のように分析している。不調を抱える割合は高いも、中高年女性は我慢せずにうまく対処できるようだ。

加齢に伴い調は生じやすくなりますが、対処方法が増え自主裁できる事柄も増え、疲労にもうまく対応できるようになります。一方、いうちは「自分がやらないと!」と頑張り過ぎるため、日常的な調をより感じやすい傾向があるようです

 

隠れ我慢の女性たち、不調の実態

感じている不調(年代別)

次に、隠れ我慢をしている女性のうち1,000人を対象に、年代別に不調の内容を聞いた。全年代で第1位は「疲れ・だるさ」で、これは年齢関係なく最大の不調であることがわかった。一方で年代によって順位が異なるのは「PMS」「生理痛」「更年期障害」。20・30代では、生理痛とPMSが上位に入っているが、40・50代になると、冷え・イライラ・腰痛が上位に。50代では「生理痛」「PMS」はランク外となり、代わって「更年期障害」「冷え」「腰痛」など、更年期障害に関連した不調がランクイン。

【出典】ツムラ

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我慢している不調(年代別)

続いて、「感じている不調のうち我慢しているもの」を聞いた。すると、感じている不調の第1位であった「疲れ・だるさ」が全年代で第1位に。また「不安感」「イライラ感」「言葉にしにくい不調」といった精神的不調が上位に入った。各年代トップ10の並びを見ると、全体的に身体面より精神面の不調を我慢する傾向が見られる。これらの結果から、女性たちが特に我慢するのは疲労感と精神的不調であることがわかる。

【出典】ツムラ

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ちなみに20〜40代女性については、我慢している不調トップ3にPMSがランクイン。一般的にPMSの症状で圧倒的に多いのはイライラなどの精神的症状や眠気・だるさなので、前述の「女性たちが特に我慢する不調は疲労感と精神的不調」という考察にも一致している。「生理痛」よりも「PMS」が上位に入っているのは、それが理由だろう。

不調を我慢する理由

では、なぜ女性たちは不調を我慢するのか?その理由を尋ねたところ、半数近くが回答したのが以下。仕事・家事への影響を懸念しているのが圧倒的に多い理由だが、2位・3位を見ると「我慢するのが当たり前」という意識が根底にあると読み取れる。

  • 1位:休むと仕事・家事などに支障がでるから(50.1%)
  • 2位:我慢できるから(43.8%)
  • 3位:病気ではなく休むほどではないと思っているから(42.2%)
【出典】ツムラ

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我慢し体調が悪化、6割

だが、我慢をしたことで体調が悪化した女性は多いことも明らかに。「不調を我慢して体調を悪化させた経験がある」と回答した女性は6割にも上った。さらに不調を我慢したことで5割の女性が後悔をしている。中には「生理痛だと思い我慢していたら急性胃腸炎だった」「痛みを我慢していたが、限界がきて倒れ救急車で運ばれた」「退職した」など、深刻な事態に陥った女性も。以下は、我慢をしたことで状況が悪化した女性たちの体験談。

・体調が悪かったが、仕事で欠員を出すと迷惑をかけると思い出勤。当日は乗り切れたが翌日に高熱が出て2,3日休み、かえって迷惑をかけることに(40代)

・更年期のイライラや体調不良を我慢してすごくストレスがたまり、常に不機嫌そうな顔をして家族を不快に(50代)

・いつもの生理痛と思い腹痛を我慢した結果、病院を受診したら、急性胃腸炎になっていたことが発覚(30代)

・仕事が辛く我慢していたら、どんどん悪い方向に考えるようになり退職してしまった(30代)

・痛みを我慢していたら、限界がきてしまい倒れて救急車を呼ばれてしまった(40代)

・生理痛がひどくなり悟られないようにしてたら、悪化して動けなくなって早退。フォローしてくれたが迷惑をかけた(50代)

隠れ我慢している不調、誰に相談する?

「我慢している不調を誰かに相談するのか?」と聞くと、「相談する」と回答したのは全年代で半数から半数以下だった。不調を我慢し、かつ誰にも相談しない。これが大多数の女性の意識・行動であることがわかった。なお相談相手は、友人や家族など身近な人が多い。

【出典】ツムラ

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本当は我慢したくない、女性たちが社会・企業・家族に求めること

ここまで見てきた通り「不調を我慢する」ことが常態化していることがわかった。だが女性たちの本心はそうではないようだ。「隠れ我慢をしなくていい社会になってほしいか?」と聞いたところ、9割以上が「そう思う」と回答した。

その実現のために必要なことを聞くと、社会制度の確立、周囲の環境改善、自分自身の(我慢しなくて良いという)意識変化を挙げる女性が多かった。

【出典】ツムラ

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具体的には、実生活の中でどんなことを女性たちは望んでいるのか?声を一つ一つ確認すると、女性たちのニーズ、社内の健康経営施策で必要なこと、夫婦間・職場の男女間に必要なことが見えてくる。

・我慢や忍耐=正義という考えを他人に押し付けない。個人の勝手な解釈で判断しない。人には得意不得意や、体調や考え方に個人差があることを理解し、認めて受け入れること。またそれを明文化した社会や組織のルールが必要(20代)

・男性も女性も自分の仕事だと決めつけずに、お互い思いやりを持って一緒に家事や仕事をする(30代)

・誰でも利用できる家事手伝い、子育ての手伝いのサービスがあれば良い(30代)

・夫婦お互いの気遣い(30代)

・言いやすい職場づくり 休んでも回る職場 休みやすい職場(30代)

・産後ケアをもっと国で考えてほしい。旦那の育休を取得しやすい社会になってほしい(30代)

・人それぞれの性格があり、受け入れてくれること。うつ病とカミングアウトしても今まで通り接してもらえること(30代)

・ささいなことでも言い合える環境づくりが大切、日頃からコミュニケーションを図り話しやすい状況をつくること(40代)

・どうしても辛くなったときに休養できたり、話せる人や一時的に違う場所に行ったりできる環境(40代)

・弱っている人を責めない風潮、弱っている人がちゃんと休める制度(金銭補償含む) (40代)

・お互いが多少の我慢をすることで、うまく回ることもある。話しやすい環境があることは大事だと思います(40代)

・生理痛や片頭痛など見た目では分かり辛い不調や女性特有の不調を偏見なく知ってもらうこと 。生理痛、妊娠など女性や女性特有のことを軽視する風潮が減り、大変さの理解が増えること(40代)

・男性が、ちょっとだけ男と女の違いを理解してくれたら楽になる(40代)

・自身のon-offの切り替え、勤務時間を守ることや有給休暇取得向上など労働環境の整備改善など(50代)

・昔より環境は良くなっていると思えるのに、なんで息苦しさが増しているのか不思議。相談できる場所が明確で、そこで適切な対応をしてもらえる場所をつくってもらえば分かりやすいかも。社会だけのせいでもないと思うけど(50代)

・私は、母親から体調不良を表現するのは、恥ずかしいことだと教えられました。風邪でせきをしても、他人からは気持ちが悪いと思われていると言われて育ちました。大人が、子どもにそんなことを言わない社会になってほしいと思います(50代)

 

女性が我慢をする、3つの心理

体調を悪化させたり後悔する事態にまで陥ることもあるのに、それでも女性が我慢をし続ける理由は何なのか?前出の下園壮太氏は、女性特有・日本人特有の心理として次の3つを挙げている。

  1. 自分の苦しさを上手に説明しにくい
    疲労や女性特有の心身の不調などは、職場などで上手に説明し、きちんと理解してもらうことが難しい。頑張って説明しても分かってもらえず、徒労感や無力感に襲われるぐらいなら我慢した方が良い、となる。
  2. 不調を主張するのはワガママに思えてしまう
    自分の都合を職場などで主張することが、なんとなくわがままなような気がしてしまう。日本人は自分の権利を強く主張するのが苦手な民族なので、気まずい思いをするぐらいなら、何も言わない方がいいと、つい我慢を選択してしまう。
  3. 我慢は美徳
    小さい頃からのしつけで、我慢するべきということを強く学習し過ぎている場合がある。本来なら「できない我慢」でも、自分の心の中で我慢するべき、私が我慢しさえすればうまくいく、と言い聞かせて乗り切る癖がついてしまっている。

 

我慢から解放させるには?企業ができること

女性が不調を我慢することから解放されるようになるには、社会・男性・パートナー・勤め先の理解が進み環境が整備されていくことが大事だが、それはいつになることやら。それはそれで進めていくとして、同時並行で今すぐできることは何かないのか?それについて、同氏は次の2つを提案している。

ひとつは、薬などを使う、適切に体を休めるなどして、疲労系の苦痛や女性特有の苦痛に上手に対処できるようになること。自身で不調をコントロールできるようになれば、我慢する不調が「耐えられない」ほどのひどいものではなくなるため、「周囲の人は分かってくれない」とイライラし、周囲や社会に怒りを感じて生きていくという「隠れ我慢」のスパイラルを避けられるようになるという。もうひとつは隠れ我慢の苦痛を共有する仲間を持つこと。女性は孤立すると不安を強く感じるため、リアルまたはネット上で、本音で話せる環境を持つのが有効とのこと。

前者であれば既存の商品・サービスを通じて今すぐにできそうだ。いわゆるセルフメディケーションの提案。今はコロナ禍でセルフメディケーションのニーズが高まっていることもあり好機だ。

ちなみに、今回見てきた調査で上がった項目以外にも、女性は実に様々な不調を抱えている。統計でもそれは明らかで厚労省「国民生活基礎調査」2019年、全年代において女性の方が男性よりも有訴者率が高い。大なり小なり女性は何かしら不調を抱えており、そして、その多くが我慢をしているのだ。これを前提に、女性たちに共感されるマーケティング戦略を考えてみよう。刺さる“見せ方”ができれば、我慢せずに健康行動が起きるかもしれない。

 

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