プレコンセプションケア、自治体施策は「啓発」から「仕組み化」へ 注目の4事例

プレコンセプションケア(プレコンケア)の推進に取り組む自治体の動きが活発化している。これまで自治体によるプレコンケア施策は、リーフレット配布、ポータルサイト開設、動画による情報発信、学校への出前講座など、知識の普及を目的とした啓発施策が中心だったが、近年は住民が継続的にプレコンケアに取り組むための仕組みづくりへと発展している。こうした自治体によるプレコンケア施策の拡充には、こども家庭庁が2025年に策定した「プレコンセプションケア推進5か年計画」が背景にあり、今後も普及啓発にとどまらない実践的な施策の展開が進むとみられる。

プレコンケア認知度、目標は80%・現実は15%

プレコンセプションケア(プレコンケア)とは、性別を問わず、性や健康に関する正しい知識を身につけ、妊娠・出産を含めたライフデザインや将来の健康を考えながら健康管理を行う取り組みのこと。こども家庭庁は2025年に「プレコンセプションケア推進5か年計画」を策定し、若い世代におけるプレコンケアの認知度80%などを目標に掲げる。だが現状は目標を大きく下回り、今年3月にこども家庭庁が実施した認知度調査では、若い世代の認知度は約15%にとどまった。同庁は今後、SNSや教育機関、企業などを通じた情報発信の強化を進める方針だが、生活者が日常生活の中でプレコンケアに触れ、相談や受診など具体的な行動につなげられる環境づくりも課題となっている。こうした状況を踏まえ、各自治体では健診費用の助成や相談体制の整備、教育プログラムの充実など、地域の実情に応じた施策の展開が求められている。

 

「啓発」から「仕組み化」へ、自治体が取り組むプレコンセプションケア

自治体によって取り組みの内容は異なるが、共通するのは、普及啓発にとどまらず、住民の行動を後押しする施策へと発展させている点だ。

3万円超の「プレコン健診」を自己負担3000円で提供(山梨県)

山梨県が実施するのは、「プレコン健診」。18〜39歳の県内在住・在勤女性を対象とした事業で、2024年に開始した。利用者はプレコンセプションケアに関する研修動画を受講した後、県内の協力医療機関で健診を受けられる。健診では、一般的な健康診断では実施しないAMH(卵巣予備能)や甲状腺機能、風疹抗体、梅毒、糖代謝など、妊娠・出産に向けた健康管理に関わる項目を中心に検査を行う。通常は3万円以上かかる検査を、自己負担3000円で受診できる。職場健診を通じた利用も可能で、今後、提携する医療機関や企業の数を増やし、プレコン健診の普及を目指す。

健康管理アプリ「ルナルナ」を市民へ無償提供(仙台市)

仙台市が今年2月に開始したのは、女性の健康管理アプリ「ルナルナ」のプレミアムコースの無償提供。宮城県とエムティーアイが締結した連携協定に基づく取り組みで、仙台市民は通常有料(月額400円)のプレミアム機能を、性別・年齢問わず誰でも無料で利用できる。アプリでは、生理日や排卵日の予測、基礎体温や体調の記録、妊活や妊娠、更年期などライフステージに応じた健康情報を提供する。市はアプリの提供に加え、プレコンケアのための生活習慣や検査などの情報を発信するほか、ライフデザインセミナーや助産師による思春期健康教育、市政出前講座なども実施。デジタルと対面の両面から、市民がライフステージを通じて健康管理に取り組める環境づくりを進めている。

幼児期から社会人まで切れ目なく支援(京都府)

京都府では、幼児期から社会人まで切れ目なくプレコンケアを学び相談できる環境づくりを、2024年度から進めている。幼児期では保育士・幼稚園教諭を対象とした研修会を実施し、小・中学校では助産師による出前講座を展開。高校向けには教育プログラム「きょうとプレコン高校生教育プログラム」を開発。大学ではセミナーを開催し、社会人向けには企業向け研修プログラムを開発するなど、各ライフステージに応じた取り組みが特徴。昨年7月からは、妊娠・出産、性、子育てに関する悩みなどを相談できる「きょうと妊娠から子育てSNS相談」を運営し、LINEやオンラインによる相談に対応している。予期しない妊娠に関する相談は、昨年7月から今年1月までの7カ月間で317件寄せられたという。府は今後、これまでの取り組みで明らかになった課題を踏まえ、教育プログラムや相談体制の充実を図る方針。27年度からは、国が推進する「プレコンサポーター」による出前講座の実施を目指す。

企業への伴走支援で職場からプレコン推進(愛媛県)

愛媛県では、市民向けの啓発や相談体制の整備に加え、企業を通じたプレコンケアの普及も進める。今年度に開始したのは、県内企業を対象とした、プレコンケア推進の伴奏支援。事業を受託した、不妊治療と仕事の両立支援に取り組むNPO法人フォレシアが、研修や社員意識調査、制度設計などを通じ、企業ごとにオーダーメイド型でプレコンケア推進体制の構築を支援する。また、従業員の仕事と育児の両立に向けた「一般事業主行動計画」の作成や、両立支援に取り組む企業を認定する「くるみん認証」、女性活躍を推進する企業を認定する「えるぼし認証」などの取得も支援する。約3カ月かけて取り組むプログラムで、企業側の費用負担はない。県によると、第1期(今月末締切)の募集では、上限5社を上回る応募があった。年度内は第4期まで募集を行い、計20社への伴走支援を目指す。

 

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