映画館や劇場の利用で高齢者の抑うつリスク減

高齢者は映画館や劇場などに出かける機会が多いほど、抑うつとなるリスクが低い可能性があることが、英ロンドン大学のDaisy Fancourt氏らによる研究で明らかになった。詳細は「British Journal of Psychiatry」12月13日オンライン版に発表された。

この研究は、英国の高齢者を調査したELSA(English Longitudinal Study of Ageing)研究に参加し、研究開始時点で抑うつ症状のない50歳以上の男女2,148人を対象としたもの。参加者を10年にわたり追跡し、演劇や映画、コンサート、美術館、博物館に行く頻度と抑うつとの関連を調べた。

その結果、高齢者は映画館や劇場、美術館などに出かける頻度が高いほど、抑うつを発症するリスクは低いことが分かった。このような場所に出かける頻度が数カ月に1回でも抑うつリスクは低下したが(オッズ比0.68、95%信頼区間0.47~0.99、P=0.046)、頻度が1カ月に1回以上の人ではさらにリスクは低下することも明らかになった(同0.52、0.34~0.80、P=0.003)。

今回の研究では、これらの因果関係は明らかにされていない。しかし、年齢や性、健康状態、所得、教育歴、家族や友人との関係、芸術関連以外のグループへの参加、運動習慣などにかかわらず、文化的な活動の頻度と抑うつリスクとの間には同様の関係が認められた。また、抑うつリスクが高い集団でも結果は変わらなかったという。

Fancourt氏は「外出の機会が増えることで運動不足が解消されたり、用事ができて社会的に孤立する機会が減るといったポジティブな効果が期待できる」と話している。また、同氏は「芸術に触れることで心理的ストレスが軽減され、コルチゾールなどのストレスホルモンが減少し、うつ病に関連する炎症が抑えられるのではないか」と付け加えている。

専門家の一人で米アルツハイマー病協会のKeith Fargo氏もこの意見に同意し、「社会的または文化的な活動により、メンタルヘルスを向上させる条件を満たすことができる」と述べている。同氏によれば、これらの活動は思考回路を刺激し、楽しいという感情が呼び起こされるほか、他人と関わり合う機会が増えることで、これらは全てメンタルヘルスの向上につながるという。

また、Fancourt氏は「映画や音楽、絵画などの芸術に触れることによって、幸せを感じたり意欲が出たりするドーパミンの分泌が促される」と指摘する。その上で、「こうした活動により、抑うつだけでなく、認知症や慢性疼痛、早期死亡のリスクも低減できる可能性が高い」と述べている。そのため、同氏は、高齢者は健康に毎日を過ごすためにも、野菜や果物を食べるのと同じように芸術や文化的な活動に定期的に参加することを勧めている。

研究には関与していない、米ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校のTurhan Canli氏は、この研究結果は「興味深いものだ」とし、「文化的な活動が好きな人には、高齢になってもそうした活動を続けてもらいたいし、また、未経験の人にはぜひ体験してみて欲しい。こうした活動が好きではないという人も、先入観を持たずに一度は試してみる価値はある」と助言している。(HealthDay News 2018年12月26日)Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.

 

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