骨粗鬆症と栄養の関連を新たに追加、5年ぶり改訂の食事摂取基準2025
厚生労働省は先月、「日本人の食事摂取基準(2025年版)」の検討会報告書を公表した。「日本人の食事摂取基準」は国民の健康の維持・増進や生活習慣病の発症予防に向け、食事によるエネルギーや各栄養素の摂取量について、性別・年齢別・ライフステージ別(乳児・小児、妊婦・授乳婦、高齢者)にまとめたもので、5年ごとに改訂を重ねている。2025年版の運用開始は来年4月。
今回の改訂では、今年4月に始動にした「健康日本21(第三次)」の方針である、「生活習慣の改善」「生活習慣病の発症予防・重症化予防」「生活機能の維持・向上」を踏まえ、新たに骨粗鬆症とエネルギー・栄養素との関連が加えられた。ただ、骨粗鬆症予防に向けたエネルギーと栄養素の摂取量の策定はせず、骨粗鬆症の基本的な病態と栄養素との関連についてまとめるにとどめ、治療や診療にあたっては、診療ガイドライン「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン (2015年版)」の参照を促している。
以下は「日本人の食事摂取基準(2025年版)」内の「骨粗鬆症」の項目でまとめられた、関連栄養素に対する現時点での見解や注意点。
・カルシウム
十分なカルシウム摂取量は骨量の維持に必要であり、カルシウム摂取量が少な いことは低骨量のリスク因子になるといえるが、中高年においてカルシウム摂取量を増やしても、骨密度の低下や骨折を予防する効果は小さいと考えられる。また、主にサプリメントを用いた介入研究は多いが、特に1,000 mg/日以上のカルシウムサプリメントを用いた場合に心筋梗塞のリスク上昇が 報告されている。これに否定的な見解 もあるものの、特に 1,000 mg/日以上のカルシウムサプリメントの使用には慎重になるべきであろう。・ビタミンD
ビタミンDの栄養状態として、血中 25-ヒドロキシビタミンD濃度を 20 ng/mL 以上に保 つことは、骨粗鬆症の予防の観点から重要と考えられる。しかしながら、サプリメントによる介入研 究の結果を含めても、ビタミンDの付加による骨粗鬆症リスクの低減効果については、今後の検証が 必要である。体内のビタミンDの維持のため、食事からの摂取を行うとともに、適切な日光曝露を図ることが望ましい。・タンパク質
たんぱく質の摂取量の不足の回避は重要であるが、現時点では骨粗鬆症の予防の観点か ら、たんぱく質摂取量の影響の程度について一定の結論を出すことは難しい。・エネルギー
骨粗鬆症の予防、骨折リスクの低減のために低体重は回避するべきと考えられる。一方で、BMIが25 kg/m2以上における骨折リスクについては、部位や性別によって異なると考えられるものの、おおむね低いと考えられる。しかしながら、高血圧、糖尿病、心筋梗塞、脂質異常症などに関連することから、過体重・肥満は推奨できない。・その他のビタミン
ビタミンK投与の臨床試験においては椎体骨折リスクの低減効果は認められておらず、骨粗鬆症の予防のためにビタミンKの積極的な摂取を勧める根拠はない。(引用:「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書)
骨粗鬆症の発症予防においては、若年者に対しては最大骨量の最大化、閉経期女性に対しては閉経後骨量減少の最小化、 男性に対しては加齢による骨密度低下の最小化が目指されるが、現時点では、 若年者への介入で最大骨量が上昇したとしても、それが高齢期の骨粗鬆症予防につながることを証明できる長期の追跡研究はない。ただ、若年期に高い骨密度を獲得しておくと、後年に骨密度が低下しても骨粗鬆症の発症や骨折閾値への到達を遅らせることができ、骨粗鬆症の発症予防に寄与すると考えられている。
日本人女性における年齢別骨密度に関する調査では、思春期に骨密度が高まり、およそ20歳で最大値に達し、40代前半まで持続した後に、閉経前頃から低下することが示されており、最大骨量を最大化するための最も効果的な介入時期は少なくとも18歳以前にあるとされている。
若年期からの予防対策が重要だが、骨粗鬆症に対する生活者の意識は低く、厚労省の調査によれば、40〜70歳女性の骨粗しょう症検診受診率わずか5.4%にとどまる。国は検診受診率を15%にまで引き上げることを「健康日本21(第三次)」で掲げているが、道のりは険しい。
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